社会保険労務士試験【健康保険法】<令和3年第6問>

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健康保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

健康保険法 令和3年第6問 A

事業主が、正当な理由がなくて被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を保険者等に届出をせず又は虚偽の届出をしたときは、1年以下の懲役又は100万円以下の過料に処せられる。

解答の根拠

法208条1号 / 法48条

根拠条文を確認します。

(届出)
第四十八条 適用事業所の事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を保険者等に届け出なければならない。

第二百八条 事業主が、正当な理由がなくて次の各号のいずれかに該当するときは、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
 第四十八条(第百六十八条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。

健康保険法

資格の得喪・報酬月額や賞与に関する届け出を行わない、または虚偽の届け出をした場合の罰則に関する問題です。

届け出に関する事項は、健康保険法の第48条に規定されていますが、その規定に反して届け出をしない・虚偽の届け出をした場合は、208条により「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」となっていますので、問題文の「1年以下の懲役又は百万円以下の過料」とは異なります。

本肢は×です。

健康保険法 令和3年第6問 B

傷病手当金を受ける権利の消滅時効は、労務不能であった日ごとにその翌日から起算される。

解答の根拠

昭和30年9月7日保険発199-2号

根拠通達を確認します。

傷病手当金の消滅時効は、労務不能であつた日ごとにその翌日から起算されるものである

昭和30年9月7日保険発199-2号(傷病手当金及び出産手当金の請求権消滅時効の起算日について)

イメージとしては、「7/1~7/15までの傷病手当金」という一つのかたまりで考えるのではなく…
・7/1の分の傷病手当金
・7/2の分の傷病手当金


と、1日単位で権利が発生している、と考えます。

そうなると、時効については、1日単位のそれぞれの傷病手当金に、個々に時効期間が発生することとなります。

本肢は○となり、本問の正解となります。

健康保険法 令和3年第6問 C

被保険者又は被保険者であった者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意若しくは重過失により給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は行われない。

解答の根拠

法116条

根拠条文を確認します。

第百十六条 被保険者又は被保険者であった者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は、行わない。

健康保険法

本肢は、給付制限に関する問題です。

細かい部分を変更して誤りの肢にしているので、相当の注意を払っていないと気づかない難しい問題だと思います。

給付制限の事由を比較してみると…

【条文】
・自己の故意の犯罪行為
・故意に給付制限を生じさせた

【問題文】
・自己の故意の犯罪行為
・故意若しくは重過失により給付制限を生じさせた

ということで、問題文には「重過失も含む」とされていますが、条文にあるとおり重過失は含みません。

本肢は×です。

健康保険法 令和3年第6問 D

傷病手当金又は出産手当金の継続給付を受ける者が死亡したとき、当該継続給付を受けていた者がその給付を受けなくなった日後3か月以内に死亡したとき、又はその他の被保険者であった者が資格喪失後3か月以内に死亡したときは、埋葬を行う者は誰でもその被保険者の最後の保険者から埋葬料の支給を受けることができる。

解答の根拠

法105条1項

根拠条文を確認します。

(資格喪失後の死亡に関する給付)
第百五条 前条の規定により保険給付を受ける者が死亡したとき、同条の規定により保険給付を受けていた者がその給付を受けなくなった日後三月以内に死亡したとき、又はその他の被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後三月以内に死亡したときは、被保険者であった者により生計を維持していた者であって、埋葬を行うものは、その被保険者の最後の保険者から埋葬料の支給を受けることができる。

健康保険法

こちらも、肢Cに続き、細かい部分を変更してきているので、注意深く問題を読まないと見落としてしまう可能性がありますね。

問題文には、埋葬料の支給を受ける者として「埋葬を行う者は誰でも」との記載がありますが、根拠条文にあるとおり、正しくは「被保険者であった者により生計を維持していた者であって、埋葬を行う者」とされ、「生計維持要件」が必要であることがわかります。

あとは、テクニック的な感じですが、「誰でも」というような極端な表現が問題文に含まれている場合は、「本当にそうなのかな?」と少し疑ってみることが大事ですね。

本肢は×です。

健康保険法 令和3年第6問 E

被保険者が、健康保険組合である保険者が開設する病院若しくは診療所から食事療養を受けた場合、当該健康保険組合がその被保険者の支払うべき食事療養に要した費用のうち入院時食事療養費として被保険者に支給すべき額に相当する額の支払を免除したときは、入院時食事療養費の支給があったものと推定される。

解答の根拠

法85条7項

根拠条文を確認します。

(入院時食事療養費)
第八十五条 被保険者(特定長期入院被保険者を除く。)が、厚生労働省令で定めるところにより、第六十三条第三項各号に掲げる病院又は診療所のうち自己の選定するものから、電子資格確認等により、被保険者であることの確認を受け、同条第一項第五号に掲げる療養の給付と併せて受けた食事療養に要した費用について、入院時食事療養費を支給する。
 被保険者が第六十三条第三項第三号に掲げる病院又は診療所から食事療養を受けた場合において、保険者がその被保険者の支払うべき食事療養に要した費用のうち入院時食事療養費として被保険者に支給すべき額に相当する額の支払を免除したときは、入院時食事療養費の支給があったものとみなす

健康保険法

本肢も、条文と問題文の微妙な表現の違いに気づくかどうか…が分かれ目の問題になります。

上記のとおり、
【条文】みなす
【問題文】推定される
と異なっています。

この、「みなす」と「推定される」の言い換え問題は、行政書士試験でよく出題されます。

両者の違いは、ネットを検索すると難しい定義も書いてありますが、シンプルに表現するのであれば、
・みなす…事実がどういう状態であっても、「そうする」としてしまう。
・推定される…事実がどういう状態かわからないので、いったん「そうする」とするが、それを変更すべき証拠などが見つかったら変える
という感じです。

就業規則でも使われる表現ですので、今回の問題をきっかけにしっかりとおさえておきましょう!

本肢は×です。

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