社会保険労務士試験【厚生年金保険法】<令和4年第7問>

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厚生年金保険法の適用事業所や被保険者に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
なお、文中のX、Y、Zは、厚生年金保険法第12条第1号から第4号までに規定する適用除外者には該当しないものとする。

厚生年金保険法 令和4年第7問 A

常時40人の従業員を使用する地方公共団体において、1週間の所定労働時間が25時間、月の基本給が15万円で働き、継続して1年以上使用されることが見込まれる短時間労働者で、生徒又は学生ではないX(30歳)は、厚生年金保険の被保険者とはならない。

解答の根拠

「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の更なる適用拡大に係る事務の取扱いについて」の一部改正について(令和4年3月18日保保発0318第1号)

根拠条文を確認します。

第1 健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準等の概要
2 短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準
施行日以後、4分の3基準を満たさない者で、次の(1)から(4)までの4つの要件(以下「4要件」という。)を満たすものは、健康保険・厚生年金保険の被保険者として取り扱うこととする。
(1) 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(2) 報酬(最低賃金法で賃金に算入しないものに相当するものを除く。)の月額が8万8千円以上であること
(3) 学生でないこと
(4) 以下のいずれかの適用事業所に使用されていること
ア 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律(平成24年法律第62号。以下「年金機能強化法」という。)附則第17条第12項及び第46条第12項に規定する特定適用事業所(以下「特定適用事業所」という。)
イ 特定適用事業所以外の適用事業所(国又は地方公共団体の適用事業所を除く。)のうち、労使合意により、事業主が適用拡大を行う旨の申出を行った事業所(以下「任意特定適用事業所」という。)
ウ 国又は地方公共団体の適用事業所

「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の更なる適用拡大に係る事務の取扱いについて」の一部改正について(令和4年3月18日保保発0318第1号)

本肢は、「短時間労働者」に関する問題です。

問題文の状況は、上記根拠条文のとおり、
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・報酬の月額が8万8千円以上
・学生でない
・地方公共団体の適用事業所
という条件をすべて満たしているので、「厚生年金保険の被保険者となる」というのが正しいです。

なお、問題文のなかで「継続して1年以上使用されることが見込まれる短時間労働者で」とありますが、令和5年の法改正でこの要件はなくなっています。

法改正事項としておさえておきましょう。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和4年第7問 B

代表者の他に従業員がいない法人事業所において、当該法人の経営への参画を内容とする経常的な労務を提供し、その対価として、社会通念上労務の内容にふさわしい報酬が経常的に支払われている代表者Y(50歳)は、厚生年金保険の被保険者となる。

解答の根拠

法人の代表者又は業務執行者の被保険者資格について(昭和24年7月28日保発74号)

根拠通達を確認します。

法人の理事、監事、取締役、代表社員及び無限責任社員等法人の代表者又は業務執行者であつて、他面その法人の業務の一部を担任している者は、その限度において使用関係にある者として、健康保険及び厚生年金保険の被保険者として取扱つて来たのであるが、今後これら法人の代表者又は業務執行者であつても法人から、労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者の資格を取得させるよう致されたい。なお、法人に非ざる社団又は組合の総裁、会長及び組合及び組合長等その団体の理事者の地位にある者、又は地方公共団体の業務執行者についても同様な取扱と致されたい。

法人の代表者又は業務執行者の被保険者資格について(昭和24年7月28日保発74号)

本肢は、「法人の代表者の被保険者資格」に関する問題です。

上記根拠通達には、「法人の代表者又は業務執行者であっても、法人から、労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者の資格を取得させる」とされています。

「代表者」と聞いてすぐ「対象外だ!」と判断するのではなく、落ち着いて判断しましょう。

本肢は○となり、本問の正解となります。

厚生年金保険法 令和4年第7問 C

常時90人の従業員を使用する法人事業所において、1週間の所定労働時間が30時間、1か月間の所定労働日数が18日で雇用される学生Z(18歳)は、厚生年金保険の被保険者とならない。なお、Zと同一の事業所に使用される通常の労働者で同様の業務に従事する者の1週間の所定労働時間は40時間、1か月間の所定労働日数は24日である。

解答の根拠

「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の更なる適用拡大に係る事務の取扱いについて」の一部改正について(令和4年3月18日保保発0318第1号)

根拠通達を確認します。

第1 健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準等の概要
1 健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準
(1) 4分の3基準
健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準については、健康保険法(大正11年法律第70号)第3条第1項及び厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第12条の規定により、1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数が、同一の事業所に使用される通常の労働者の1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数の4分の3以上(以下「4分の3基準」という。)である者を、健康保険・厚生年金保険の被保険者として取り扱う。

本肢は、「厚生年金保険の被保険者資格の取得基準」に関する問題です。

上記根拠通達のとおり、「1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数が、同一の事業所に使用される通常の労働者の1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数の4分の3以上(以下「4分の3基準」という。)である者を、健康保険・厚生年金保険の被保険者として取り扱う」とされています。

問題文の学生Zについて、この要件に当てはめてみましょう。

まず所定労働時間について。

1週間の所定労働時間は30時間、一方、同一の事業所に使用される通常の労働者で同様の業務に従事する者の1週間の所定労働時間は40時間とされていますので、ちょうど、4分の3となります。

次に1か月の所定労働日数について。

1か月間の所定労働日数が18日。一方、厚生年金保険の被保険者とならない。なお、Zと同一の事業所に使用される通常の労働者で同様の業務に従事する者の1か月間の所定労働日数は24日とされていますので、こちらもちょうど4分の3となります。

したがって、Zは学生か否かに関わらず被保険者となります。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和4年第7問 D

厚生年金保険の強制適用事業所であった個人事業所において、常時使用する従業員が5人未満となった場合、任意適用の申請をしなければ、適用事業所ではなくなる。

解答の根拠

法7条

根拠条文を確認します。

第七条 前条第一項第一号又は第二号の適用事業所が、それぞれ当該各号に該当しなくなつたときは、その事業所について同条第三項の認可があつたものとみなす

厚生年金保険法

本肢は、「適用事業所」に関する問題です。

厚生年金保険法における適用事業所は「常時5人以上の従業員を使用する事業所」とされています。

では、適用事業所の従業員がだんだん減って、5人を下回った場合にはどうなるのでしょうか。

その場合は、上記根拠条文のとおり、「その事業所について任意適用事業所の認可があったものとみなす」とされています。

つまり、特段の申請がなくとも、任意適用事業所の認可があったものと自動的になるわけですね。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和4年第7問 E

宿泊業を営み、常時10人の従業員を使用する個人事業所は、任意適用の申請をしなくとも、厚生年金保険の適用事業所となる。

解答の根拠

則第13条の3第1項

根拠条文を確認します。

(任意適用の申請)
第十三条の三 法第六条第三項の規定による認可を受けようとする事業主は、厚生年金保険任意適用申請書(様式第五号)を機構に提出しなければならない。この場合において、同時に健康保険法(大正十一年法律第七十号)第三十一条第一項の認可を受けるために、健康保険法施行規則第二十一条第一項の規定によつて申請書を提出するときは、これに併記して行うものとする。

厚生年金保険法 施行規則

本肢は「任意適用の申請」に関する問題です。

まず「宿泊業」は、適用業種に該当しない任意適用業種です。

個人経営で、かつ任意適用業種の場合は、使用する従業員の数にかかわらず強制適用事業所になりません。

そのため、問題文には「任意適用の申請をしなくとも」とありますが、当該事業所を適用事業所とするためには、任意適用の申請をし、厚生労働大臣の認可を受ける必要があります

本肢は×です。

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