社会保険労務士試験【労働基準法】<令和4年第2問>

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労働基準法の労働時間に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

労働基準法 令和4年第2問 A

労働安全衛生法により事業者に義務付けられている健康診断の実施に要する時間は、労働安全衛生規則第44条の定めによる定期健康診断、同規則第45条の定めによる特定業務従事者の健康診断等その種類にかかわらず、すべて労働時間として取り扱うものとされている。

解答の根拠

昭和47年9月18日基発602号

根拠通達を確認します。

13 健康管理
(2) 
ロ 健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いについては、労働者一般に対して行なわれる、いわゆる一般健康診断は、一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行なわれるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可決な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと
特定の有害な業務に従事する労働者について行なわれる健康診断、いわゆる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行なわれるのを原則とすること。また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該健康診断が時間外に行なわれた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること。

労働安全衛生法および同法施行令の施行について(昭和47年9月18日基発602号)

本肢は、「労働時間(健康診断)」に関する問題です。

会社員の方であれば、会社にて年1回定期的な健康診断が実施されると思います。

その健康診断の時間は、労働時間となるのでしょうか。

労働時間とされるのであれば、当然その時間には賃金が支払われなければならないことになります。

この点、上記通達に記載があり、ポイントをまとめると以下のようになります。

●一般健康診断…労働時間とするかどうかは労使協議で定める/賃金は支払うのが望ましい
●特殊健康診断…所定労働時間内に行われるのが原則/労働時間として取り扱う=賃金を支払う/時間外に受診した場合は、割増賃金の対象となる

以上のように、誰もが受診する一般健診と、深夜業従事者などが受診する特殊健康診断とで、取り扱いを分けています。

ということで「その種類にかかわらず、すべて労働時間として取り扱う」というのは誤りになります。

本肢は×です。

労働基準法 令和4年第2問 B

定期路線トラック業者の運転手が、路線運転業務の他、貨物の積込を行うため、小口の貨物が逐次持ち込まれるのを待機する意味でトラック出発時刻の数時間前に出勤を命ぜられている場合、現実に貨物の積込を行う以外の全く労働の提供がない時間は、労働時間と解されていない。

解答の根拠

昭和33年10月11日基収6286号

根拠通達を確認します。

出勤を命じられ一定の場所に拘束されている以上いわゆる手待ち時間も労働時間である

(昭和33年10月11日基収6286号)

本肢は、「労働時間(手待ち時間)」に関する問題です。

「手待ち時間」とは、自身は労働していないものの、業務上の必要があって待機している時間のことを指します。

本肢の場合は、当該運転手の業務は「貨物の積み込み」ですが、もちろん積み込む貨物が届かないことには仕事ができず、また、貨物が持ち込まれるたびに積み込みを行う必要があるので、待っている時間に外出したり休憩もできない状態です。

車でいうと、いわゆる「アイドリング状態」ですね。

さて、この「手待ち時間」は、労働時間に該当するのでしょうか。

上記通達には「手待ち時間も労働時間である」とされています。

自分で自由に休憩したりできないのであれば、労働時間と解するわけですね。

本肢は×です。

労働基準法 令和4年第2問 C

労働安全衛生法第59条等に基づく安全衛生教育については、所定労働時間内に行うことが原則とされているが、使用者が自由意思によって行う教育であって、労働者が使用者の実施する教育に参加することについて就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加とされているものについても、労働者の技術水準向上のための教育の場合は所定労働時間内に行うことが原則であり、当該教育が所定労働時間外に行われるときは、当該時間は時間外労働時間として取り扱うこととされている。

解答の根拠

昭和47年9月18日基発602号

根拠通達を確認します。

12 労働者の就業に当たつての措置
(2) 第五九条および第六〇条の安全衛生教育は、労働者がその業務に従事する場合の労働災害の防止をはかるため、事業者の責任において実施されなければならないものであり、したがつて、安全衛生教育については所定労働時間内に行なうのを原則とすること。また、安全衛生教育の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該教育が法定時間外に行なわれた場合には、当然割増賃金が支払われなければならないものであること。

労働安全衛生法および同法施行令の施行について(昭和47年9月18日基発602号)

本肢は、「労働時間(教育)」に関する問題です。

会社では、様々な「研修」があると思います。

業務上必要なもの、法令上実施しなければいけないもの、業務にあまり関連しない自己啓発的なもの…と、会社によっていろいろな研修が開催されていると思います。

また、研修の実施時間も、所定労働時間内に開催されているものもあれば、終業後の時間に開催されるもの、休日に開催されるものなどもあると思います。

そこで、本肢の論点としては、そのような「研修の時間が労働時間となるのか」となります。

まず、問題文にある「労働安全衛生法第59条等に基づく安全衛生教育」ですが、こちらについては、上記通達の記載にあるとおり、「所定労働時間内に行うのを原則とすること」とされていますので、この記載については「正しい」となります。

安全衛生教育については、法令の求めでもありますので、「業務」として所定労働時間内に行う…という点は、特段違和感はないと思います。

では、後半にある
・使用者が自由意思によって行う教育
・自由参加
・労働者の技術水準向上のため
の教育はどうでしょうか。

「労基法の技術水準向上」と書かれてしまうと「業務に関連するのだから、安全衛生教育と同じように所定労働時間内に行うべきでは…?」と思ってしまうかもしれません。

しかし、あくまでも
・使用者が自由意思によって行う教育
・自由参加
ということなのであれば、所定労働時間内に行う必要もなく、また、時間外に行われたとしても時間外労働とする必要はありません

ということで、後半の記載については「誤り」となります。

本肢は×です。

労働基準法 令和4年第2問 D

事業場に火災が発生した場合、既に帰宅している所属労働者が任意に事業場に出勤し消火作業に従事した場合は、一般に労働時間としないと解されている。

解答の根拠

昭和23年10月23日基収3141号

本肢は、「労働時間(災害等)」に関する問題です。

「自分の会社が火事だ」

「別に指示があるわけじゃないけど、消火作業しにいくぞ!」

このようなシチュエーションが、実際にどのくらいの確率で発生するかはわかりませんが…

本来ならば、根拠通達として上記に挙げた「基収3141号」を引用して説明したいのですが、どうしても本文を見つけることができませんでした(申し訳ございません。)

その通達によれば、本肢のケースの場合は、「任意に、とはあるものの、自己の職場で発生した火災の消火活動であるため、業務に関連する行動・活動として労働時間に該当する」との解釈となります。

「任意に」という言葉に引きずられそうですが、しっかりおさえていきましょう!

本肢は×です。

労働基準法 令和4年第2問 E

警備員が実作業に従事しない仮眠時間について、当該警備員が労働契約に基づき仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに対応することが義務付けられており、そのような対応をすることが皆無に等しいなど実質的に上記義務付けがされていないと認めることができるような事情が存しないなどの事実関係の下においては、実作業に従事していない時間も含め全体として警備員が使用者の指揮命令下に置かれているものであり、労働基準法第32条の労働時間に当たるとするのが、最高裁判所の判例である。

解答の根拠

平14.2.28最判(大星ビル管理事件)

本肢は「労働時間(手待ち時間)」に関する問題です。

論点としては、肢Bと同じ「手待ち時間」となります。

警備員の仕事は、実際に経験がある方は多くないとは思いますが、会社員の方であれば勤め先には必ず警備の方がいらっしゃると思いますので、なんとなくお仕事のイメージはつくと思います。

警備員の方々は、パトロールや点検業務、有事の際の対応や電話対応等になると思いますが、夜間対応の警備員であれば、勤務時間途中に仮眠時間が設けられていることもあるでしょう。

さて、この仮眠時間は労働時間に該当するのでしょうか。

「え!?寝ているんだから、労働時間じゃないでしょう」と思われる方もいらっしゃると思います。

しかし、仮眠時間中に例えば緊急事態が発生したり、警報が鳴って原因を確認しなければならない状態になった際に「私は仮眠中なので対応しません!」…なんてことありませんよね。

とすると、「仮眠中ではあるが、何かあった場合は即時対応しなければならない状態」に置かれていると解釈でき、肢Bと同じように「アイドリング状態」と考えることができます。

したがって、本肢の仮眠時間は「労働時間」とされます。

このテーマは、上記「解答の根拠」として挙げた「大星ビル管理事件」が非常に有名な判例ですので、ぜひ一度参考書等でご確認いただくと良いと思います。

本肢は○となり、本問の正解となります。

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