健康保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
健康保険法 令和3年第2問 A
保険医療機関又は保険薬局は、健康保険法の規定によるほか、船員保険法、国民健康保険法、国家公務員共済組合法(他の法律において準用し、又は例による場合を含む。)又は地方公務員等共済組合法による療養の給付並びに被保険者及び被扶養者の療養並びに高齢者医療確保法による療養の給付、入院時食事療養費に係る療養、入院時生活療養費に係る療養及び保険外併用療養費に係る療養を担当するものとされている。
法70条2項
根拠条文を確認します。
(保険医療機関又は保険薬局の責務)
健康保険法
第七十条 2 保険医療機関又は保険薬局は、前項(略)の規定によるほか、船員保険法、国民健康保険法、国家公務員共済組合法(略)又は地方公務員等共済組合法(略)による療養の給付並びに被保険者及び被扶養者の療養並びに高齢者の医療の確保に関する法律による療養の給付、入院時食事療養費に係る療養、入院時生活療養費に係る療養及び保険外併用療養費に係る療養を担当するものとする。
本肢は条文通り○となります。
健康保険関連の法律ごとに保険医療機関や保険薬局を準備するより、全体として相互利用できる状態にした方が全体として効率が良いですよね、
本肢は○です。
健康保険法 令和3年第2問 B
健康保険組合がその設立事業所を増加させ、又は減少させようとするときは、その増加又は減少に係る適用事業所の事業主の全部及びその適用事業所に使用される被保険者の2分の1以上の同意を得なければならない。
法25条1項
根拠条文を確認します。
(設立事業所の増減)
第二十五条 健康保険組合がその設立事業所を増加させ、又は減少させようとするときは、その増加又は減少に係る適用事業所の事業主の全部及びその適用事業所に使用される被保険者の二分の一以上の同意を得なければならない。
本肢も条文そのままの出題ですね。
設立事務所の増加や減少なんて、健康保険組合が勝手にやればよいのでは?と思ってしまいそうです。
しかし、設立事業所というのは「適用事業所」とは異なる概念であり、そもそもその健康保険組合を作った「主体」なわけですから、そこに新たに主体を加えたり、一緒に設立した主体が「やっぱやめた!」となるためには、やはり健康保険組合全体の問題として考えるべきなんですね。
そのため、被保険者の一定割合の同意を得ることが必要であるとされているわけですね。
本肢は○です。
健康保険法 令和3年第2問 C
全国健康保険協会管掌健康保険の事業の執行に要する費用のうち、出産育児一時金、家族出産育児一時金、埋葬料(埋葬費)及び家族埋葬料の支給に要する費用については、国庫補助は行われない。
法153条
根拠条文を確認します。
(国庫補助)
健康保険法
第百五十三条 国庫は、第百五十一条に規定する費用のほか、協会が管掌する健康保険の事業の執行に要する費用のうち、被保険者に係る療養の給付並びに入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、傷病手当金、出産手当金、家族療養費、家族訪問看護療養費、家族移送費、高額療養費及び高額介護合算療養費の支給に要する費用(略)の額並びに高齢者の医療の確保に関する法律の規定による前期高齢者納付金(略)の納付に要する費用の額に給付費割合(略)を乗じて得た額の合算額(略)に千分の百三十から千分の二百までの範囲内において政令で定める割合を乗じて得た額を補助する。
長い条文なので、問題文に関係する部分だけ黄色マーカーを引いておきました。
お読みいただいてわかるように、問題文にある「出産育児一時金、家族出産育児一時金、埋葬料(埋葬費)及び家族埋葬料」については条文中に記載がありません。
したがって、「国庫補助の対象とはならない」となります。
補助の対象となる給付はたくさんあるので、補助の対象とならない上記の給付を覚えておきましょう。
本肢は○です。
健康保険法 令和3年第2問 D
全国健康保険協会は、(1)国債、地方債、政府保証債その他厚生労働大臣の指定する有価証券の取得(2)銀行その他厚生労働大臣の指定する金融機関への預金、のいずれかの方法により、業務上の余裕金を運用することが認められているが、上記の2つ以外の方法で運用することは認められていない。
令1条の2第3号
根拠条文を確認します。
(資金の運用)
健康保険法施行令
第一条の二 全国健康保険協会(以下「協会」という。)は、次の方法による場合を除くほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債、地方債、政府保証債(略)その他厚生労働大臣の指定する有価証券の取得
二 銀行その他厚生労働大臣の指定する金融機関への預金
三 信託業務を営む金融機関(略)への金銭信託
本肢は、全国健康保険協会の資金運用に関する問題です。
公的な組織なので、資金管理については法律でしっかりと定められています。
資金の運用方法については、上記根拠条文にある方法に限定されています。
問題文と照らし合わせてみると、根拠条文のうちの「三 信託業務を営む金融機関(略)への金銭信託」のみ問題文に記載がありません。
したがって、問題文にある「上記の2つ以外の方法で運用することは認められていない。」という部分が誤りになります。
正直、ここまで学習しておくのはけっこう厳しいかもしれませんが、過去問を通じて確認しておきましょう。
本肢は×となり、本問の正解になります。
健康保険法 令和3年第2問 E
保険者は、社会保険診療報酬支払基金に対して、保険給付のうち、療養費、出産育児一時金、家族出産育児一時金並びに高額療養費及び高額介護合算療養費の支給に関する事務を委託することができる。
法205条の4 / 則159条の7第1号
根拠条文を確認します。
(基金等への事務の委託)
健康保険法
第二百五条の四 保険者は、(もろもろ条文)に規定する事務のほか、次に掲げる事務を基金又は国保連合会に委託することができる。
一 第四章の規定による保険給付及び第五章第三節の規定による日雇特例被保険者に係る保険給付のうち厚生労働省令で定めるものの支給に関する事務(略)
(法第二百五条の四第一項第一号の厚生労働省令で定めるもの)
健康保険法施行規則
第百五十九条の七 法第二百五条の四第一項第一号の厚生労働省令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 法第五十二条第一項に掲げる保険給付のうち、療養費、出産育児一時金、家族出産育児一時金並びに高額療養費及び高額介護合算療養費の支給
本肢は、健康保険法上の保険者(協会けんぽ・健康保険組合)が、基金(社会保険診療報酬支払基金)に委託できる事務に関する問題です。
まず健康保険法で、そもそも保険者が基金や国保連合会(国民健康保険団体連合会)に事務を委託できることを規定し、具体的にどんな事務を委託できるのか、ということについて、健康保険法施行規則に規定しています。
上記の通り、「療養費、出産育児一時金、家族出産育児一時金並びに高額療養費及び高額介護合算療養費の支給」に関する事務を委託できる、とされていますね。
本肢は○です。