社会保険労務士試験【労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識】<令和3年第3問>

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労働契約法等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和3年第3問 A

労働契約法第7条は、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」と定めているが、同条は、労働契約の成立場面について適用されるものであり、既に労働者と使用者との間で労働契約が締結されているが就業規則は存在しない事業場において新たに就業規則を制定した場合については適用されない。

解答の根拠

労働契約法7条 / 平成24年8月10日基発810002号

本問は「労働契約法」がテーマとなっております。

実務上では、労基法と同じくらい労働契約法は重要であり、特に非正規労働者(有期契約社員やパートタイム労働者など)を雇用管理されている方にとっては、深い理解が必要です。

では、肢Aについて解説していきます。

労働契約法第7条の内容は、問題文にあるとおりです。

就業規則と個別の労働契約の前後関係がポイントとなります。

7条は、

【前】就業規則 → 【後】個別の労働契約 ➡就業規則記載の労働条件が適用

とされていますが、この前後関係が逆になった場合…つまり、先に個別の労働契約があり、その後にその個別の労働契約とは異なる内容の規定が記載されている就業規則が成立した場合に、その内容に引きずられてしまうのか、ということを問われています。

ここで、解答の根拠となる条文・通達を示します。

第七条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

労働契約法

第3 労働契約の成立及び変更(法第2章関係)
2 労働契約の成立(法第6条・第7条関係)
(2)法第7条
(イ)法第7条本文に「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において」と規定されているとおり、法第7条は労働契約の成立場面について適用されるものであり、既に労働者と使用者との間で労働契約が締結されているが就業規則は存在しない事業場において新たに就業規則を制定した場合については適用されないものであること。

平成24年8月10日基発810002号

したがって、問題文のとおりとなります。

本肢は○です。

労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和3年第3問 B

使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合について定めた労働契約法第10条本文にいう「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情」のうち、「労働組合等」には、労働者の過半数で組織する労働組合その他の多数労働組合や事業場の過半数を代表する労働者だけでなく、少数労働組合が含まれるが、労働者で構成されその意思を代表する親睦団体は含まれない。

解答の根拠

労働契約法10条 / 平成24年8月10日基発0810第2号

本肢は、労働契約法第10条の中にある「労働組合等」の解釈について問われています。

この点について、根拠となる条文・通達を示します。

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

労働契約法

第3 労働契約の成立及び変更(法第2章関係)
4 就業規則の変更による労働契約の内容の変更(法第9条・第10条関係)
(3)法10条の内容
オ 法第10条本文の合理性判断の考慮要素
(エ)法第10条本文の「労働組合等との交渉の状況」は、労働組合等事業場の労働者の意思を代表するものとの交渉の経緯、結果等をいうものであること。「労働組合等」には、労働者の過半数で組織する労働組合その他の多数労働組合や事業場の過半数を代表する労働者のほか、少数労働組合や、労働者で構成されその意思を代表する親睦団体等労働者の意思を代表するものが広く含まれるものであること。

平成24年8月10日基発0810第2号

労働組合という名称でなくても、実質的に労働者の意思を代表する機能があれば、親睦団体のようなものも広く含まれます。

本肢は×となり、本問の正解となります。

労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和3年第3問 C

労働契約法第13条は、就業規則で定める労働条件が法令又は労働協約に反している場合には、その反する部分の労働条件は当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約の内容とはならないことを規定しているが、ここでいう「法令」とは、強行法規としての性質を有する法律、政令及び省令をいい、罰則を伴う法令であるか否かは問わず、労働基準法以外の法令も含まれる。

解答の根拠

労働契約法13条 / 平成24年8月10日基発0810第2号

本肢は、労働契約法第13条の中にある「法令」の解釈について問われています。

この点について、根拠となる条文・通達を示します。

(法令及び労働協約と就業規則との関係)
第十三条 就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第七条、第十条及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。

第3 労働契約の成立及び変更(法第2章関係)
7 法令及び労働協約と就業規則との関係(法第13条関係)
(2)内容
ウ 法第13条の「法令」とは、強行法規としての性質を有する法律、政令及び省令をいうものであること。なお、罰則を伴う法令であるか否かは問わないものであり、労働基準法以外の法令も含むものであること。

平成24年8月10日基発0810第2号

これは「法令」とだけしか書かれていないのであれば、その通りによめば「あらゆる法令」が該当するはずであり、限定的にしたいのであれば、「~関係の法令」など説明があるはずです。

本肢は○です。

労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和3年第3問 D

有期労働契約の更新時に、所定労働日や始業終業時刻等の労働条件の定期的変更が行われていた場合に、労働契約法第18条第1項に基づき有期労働契約が無期労働契約に転換した後も、従前と同様に定期的にこれらの労働条件の変更を行うことができる旨の別段の定めをすることは差し支えないと解される。

解答の根拠

労働契約法18条 / 平成24年8月10日基発0810第2号

本肢は、労働契約法第18条の中にある「労働条件の変更」の解釈について問われています。

この点について、根拠となる条文・通達を示します。

(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
第十八条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。

労働契約法

第5 期間の定めのある労働契約(法第4章関係)
4 有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(法第18条関係)
(2)内容
有期労働契約の更新時に、所定労働日や始業終業時刻等の労働条件の定期的変更が行われていた場合に、無期労働契約への転換後も従前と同様に定期的にこれらの労働条件の変更を行うことができる旨の別段の定めをすることは差し支えないと解されること。

平成24年8月10日基発0810第2号

労働契約が有期から無期に変更となった場合でも、労働条件の各項目の定期的な変更(見直し)については、有期契約のときからそのような対応をしていたのであれば、たとえ無期になったからとして変更をしてはいけないわけではなく、同じように変更(見直し)をして構わない、ということが書かれています。

本肢は○です。

労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和3年第3問 E

有期労働契約の更新等を定めた労働契約法第19条の「更新の申込み」及び「締結の申込み」は、要式行為ではなく、使用者による雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもよい。

解答の根拠

労働契約法19条 / 平成24年8月10日基発0810第2号

本肢は、労働契約法第19条の中にある「更新の申込み」及び「締結の申込み」の解釈について問われています。

この点について、根拠となる条文・通達を示します。

(有期労働契約の更新等)

第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

労働契約法

第5 期間の定めのある労働契約(法第4章関係)
5 有期労働契約の更新等(法第19関係)
(2)内容
エ 法第19条の「更新の申込み」及び「締結の申込み」は、要式行為ではなく、使用者による雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもよいこと。

平成24年8月10日基発0810第2号

本肢は通達の内容そのままですね。

ちなみに「要式行為」とは、「法令に定める一定方式に従って行わなければ不成立又は無効とされる法律行為」のことです。

つまり、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)の更新の申込みと締結の申込みは、例えば契約書等のドキュメントに労使双方がサインして初めて成立する/法律効果が生じる…ということであれば「要式行為」となります。

しかし、本通達では、使用者が当該社員に雇止めの意思表示(例えば、面談等で口頭で、「あなたの労働契約は今期限りとなります」と伝える)に対して、労働者がそれを拒否する場合に、ちゃんと書面を準備して伝える…ということをしなくても、その面談の場で「嫌です!」と口頭で伝え、使用者がそれを聞いていればよい、という意味になります。

あまり例えは良くないですが、使用者の「マイナス」の意思表示に、労働者が「マイナス」の意思表示で応えれば(かけ合わせれば)、「プラス(更新の申込み・締結の申込み)」となる感じでしょうか。

本肢は○です。

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