私は過去に複数回転職をしています。
その中には、成功と言える転職もあれば、そうでないものもありました。
何をもって転職を成功とするか失敗とするか、いろいろな物差しや考え方があると思いますが、その一つに挙げられるものとして、「年収」があります。
今回の記事では、転職の際の「年収」についてまとめてみたいと思います。
転職の際の年収…給与賞与だけ見ていませんか?
転職の際に、大きなネックとなるのが「年収」であることは間違いないと思います。
転職をする人は、何らかしら現状に不満があって新天地を求めるわけですが、良く上げられるのが「キャリア(やりたいこと、得たい経験など)」・「人間関係」・「処遇条件(年収)」でしょう。
その中でも、特に家庭を持っている方にとって「処遇条件(年収)」というのは、優先順位が高いと思います。
転職活動の取り敢えずのゴールが、希望する企業からの「オファーレター」の受理です。
オファーレターをもらうということは、内定をもらったことと基本的には同義であり、その中には、従事する業務内容やポジションに関する記載ももありますが、一番注目すべき項目はもちろん「処遇条件(年収)」になります。
オファーレターに記載される「処遇条件(年収)」は、想定月給の12か月分+標準的な評価での想定年間賞与額であることが多いです。
しかし、当たり前のことですが、ここに含まれるのは「月のお給料(額面月給)」と「賞与」しかありません。
でも、処遇条件として、本当にその金額だけ確認すればよいのでしょうか?
ほかに確認すべきことはないのでしょうか?
「実質年収」という考え方を持ちましょう
私がぜひ転職者の方に押さえていただきたいと思っているのが、「実質年収」という考え方です。
もちろん、オファーレターに提示された「処遇条件(年収)」がそのまま受け取れるわけではないことは当たり前ですね。
いわゆる「額面年収」からは、所得税や住民税などの税金、そして、雇用保険料・健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料などの各種社会保険料が控除されて、「手取り年収」が自分が実際に受け取れる金額になります。
しかし、そのような給与明細に記載される「支給項目」や「控除項目」だけではなく、実際に自分の手取り額に影響を与えるものがまだまだあります。
それらを加除したものを、私なりに「実質年収」と呼んでいます。
この考え方は、わかりやすい・広く知られている内容から、「なるほど!そういう考え方もあるのか!」と思ってもらえるような内容もあると思いますので、ぜひご確認いただければと思います。
実質年収を構成する要素の例
健康保険料
協会けんぽ内の差
「あれ?健康保険料の料率って、だれも同じではないの?」と思った方…勉強不足です!
主に中小企業に勤める労働者が加入する「協会けんぽ」は、都道府県単位で料率が異なります。
例えば、令和5年度の各都道府県の料率を確認してみましょう。
最大の保険料率…佐賀県の「10.51%」
最小の保険料率…新潟県の「9.33%」
その差は1%以上です。
労働者負担分(介護保険料なし)で考えると、例えば月給30万円の方の場合は、
最大の佐賀県の場合は「15,765円」
最小の新潟県の場合は「13,995円」
と、月で約1,700円、年間にすれば約2万円の差になります。
これを大きいと考えるか、小さいと考えるかは人によりけりだと思いますが、まずはこのような差がある、ということを知ることが重要です。
もちろん、2万円の差で住む都道府県を決めるのも…というのは誰もが思うことです。
協会けんぽと健康保険組合の差
ここでもう一つの基準を…大企業に勤める労働者が加入する「健康保険組合」となると、協会けんぽに比べて保険料率がグッと低いケースがほとんどです。
例えば、「日本郵船健康保険組合」の労働者負担料率は、なんと「1.5%」!!
先ほどの月給30万円のケースですと、月額保険料は「4,500円」となり、佐賀県の「15,765円」と1.1万円以上、年間で13.5万円もの差になります。
さすがに、月給30万円で月1万円手取りが違うと、大きい差と言わざるを得ません。
業界特有の国民健康保険
また、業界によっては、業界特有の国民健康保険が適用されるケースがあります。
代表的なところですと、建設業界の「全国建設工事業国民健康保険組合」などが挙げられます。
国民健康保険と通常の健康保険の大きな違いは、「被扶養者という概念がない」…つまり、家族が多ければ多いほど、保険料負担が大きくなる、という点です。
これも、手取り額に大きな影響を与える要因の一つです。
あなたが転職をしようとしている企業の健康保険は健康保険組合でしょうか、協会けんぽでしょうか、またはその他の業界特有の国保などでしょうか…。
今は、ホームページなどで簡単に調べられますし、よくわからない場合は、採用面接時などで健康保険の条件についてぜひ確認してみましょう(選考には影響はないはずです)。
人間ドック補助
会社によっては、法定の健康診断に代えて、一定以上の年齢に限っているケースが多いですが、人間ドックの費用補助を福利厚生として設けている場合があります。
やはり、一定以上の年齢になると、より詳しい検査をしてくれる「人間ドック」の方が安心できます。
人間ドックは、健診機関によっても異なりますが、結構な金額であることが一般的です。
その人間ドックにかかる費用を、一部または全額補助してくれる会社・健康保険組合が世の中にはあります。
もしそのような会社に勤めるならば、実質年収はプラス数万円~数十万円となっていることと同じ状態だと言えるでしょう。
退職金(退職一時金・確定拠出年金・確定給付年金)
退職金は、法律で企業に支給が義務付けられているものではありませんので、中小企業は退職金自体がない、または、そんざいしていてもわずか…というケースが多いです。
もしお勤めの企業に、退職一時金や確定拠出年金、確定給付年金の仕組みがあれば、毎月または毎年の積立金額・拠出金額分が、実質年収にプラスされると考えましょう。
例えば、年収600万円で退職金なしのポジションと、年収570万円で退職金の年間積立相当額が50万円のポジションであるならば、後者のポジションの方が実質年収が高いと考えます。
もちろん、退職一時金、確定拠出年金、確定給付年金は、退職時や60歳到達時など支給時期が限定的のため、本来の年収として考慮するのはやりすぎですが、実質的に考えれば大きな違いとなります。
有給休暇や特別休暇
「え?休暇の多い少ないが年収に関係するの?」と思った方も多いでしょう。
もちろん、休暇が多くてもお給料が多くなるわけではありません。
ではなぜ、休暇が多いと実質年収が多くなるのか、2つの視点で考えたいと思います。
まず一つ目は「日給」の視点です。
例えば、月収40万円の人で月の平均営業日数が20日というケースを例にとります。
このケースの「日給」は、40万円÷20日=2万円/日となります。
この方がお勤めの会社の人事制度として、有給休暇とは別に年1回夏休みとして5日間連続休暇(有給)を取得する、というような仕組みがあるとします。
そうすると、その5日間の連続休暇を取得すると、この方は働いていないのにも関わらず、2万円×5日間=10万円を手にしていることと同じになります。
その他、法定の有給休暇とは別に有給の特別休暇を設けている会社も多いですが、それらの休暇が多ければ多いほど、(使いきれれば、という条件はありますが)実質年収が高い、と考えても良いのではないでしょうか。
でも、「ちょっと待って、確かに働いていないけど、プラスでお金をもらえているわけではないから、年収が増えているとするのは強引では?」と思った方もいらっしゃると思います。
そのような方に、2つの目の視点「空いた時間の有効活用」について説明します。
先ほどのケースの方がお勤めの企業が「副業」を認めていたとします。
そうすると、有給休暇や特別休暇が多ければ多いほど、副業に充てることができる時間が増えることにつながります。
副業でいくらか稼げれば、自身の実質年収にプラスになりますね。
以上2つの観点から、「有給休暇や特別休暇が実質年収に影響する」と考えてもよいのではないでしょうか。
ここまで書きましたが、最後に伝えたいこと
以上、「実質年収」という考え方についてまとめてきました。
そのほかにも、まだまだいろいろな視点があると思いますので、ぜひご自身が考える「実質年収」を一度考えてみると良いでしょう。
しかし、当たり前ですが、この実質年収ばかりを気にして、本来の仕事の目的…やりたいこと・成し遂げたいこと・得たい経験の優先順位を下げてはいけません。
健保組合・退職金あり・人間ドック補助あり・休暇もたくさん…でも仕事がつまらない、やりたくない…という状態では本末転倒です。
その点を最後にお伝えして、今回は終わりたいと思います。