今回は、社会保険労務士試験のTips集と題して、サプリメント的なアドバイスをご紹介します。
各科目の具体的な解説は、過去問解説ページをご参照ください。
基本的には社会保険労務士試験について書いていますが、考え方はほかの資格試験にも応用できると思っています。
今回は「その2」です。
※その1をまだお読みでない方は、ぜひこちらもご確認ください。
過去問中心の勉強
勉強の順番はテキストの理解が先?過去問はその後?
多くの方が資格試験を勉強するときに、「まずテキストをよく読みこんで知識を覚えて、次は練習問題を解いて、最後に力試しで過去問題を解く」という方が多いと思います。
しかし、資格予備校利用者であればまだしも、独学で初学者の方がテキストをはじめから熟読していくのは非常に大変です。
ボリュームもあり、学習内容も難解なため、何度読んでも全然頭に入らない…という状況に陥る可能性が大きいです。
いきなり過去問を解く!
そこでお勧めするのが、「いきなり過去問から勉強を始める」というものです。
ここで注意していただきたいのは、過去問を解こうと思ってはいけません。
「過去問をテキストに、テキストを参考図書に」というようなイメージです。
具体的な手順としては、
1.過去問題(見開きで、左ページに問題、右ページに解説がある一問一答形式がベター)の問題文と解説文を読む(解かない)。
2.その問題の解答根拠となる部分をテキストで探し、蛍光マーカーでマークして、近くに出題年度と設問番号、そして選択肢番号をメモする(例:令和3年度試験の第5問の1番の選択肢であれば、「R3-5-1」という感じ)
3.一日の勉強の最後に、テキストのマーカーが引いてある部分のみをもう一度読み、復習する。
4.次に同じ問題を解くときには、初回のようにいきなり答えを見るのではなく、実際に問題を解いてみる(○・×をつけてみる)。その際に、なぜ○なのか、なぜ×なのかも浮かぶかどうか確認する。
5.解けなかった問題、また、たまたま解けても答えの根拠が浮かばなかった問題については、再度テキストの該当部分を読み込む。
という感じです。
この作業を終えると、テキストの中でも繰り返し過去問題に出題されている部分・テーマと、重要そうに見えても全く出題されていない部分・テーマがはっきりとわかります。
もちろん、次の試験でも頻出テーマが必ず出題される保証はなく、また、全く出題されていないテーマが絶対に出題されないという保証もないですが、とっかかりとして重要なもの(出題頻度Aランク)から学び、時間があればBランク、Cランクへと手を広げていくのがよいでしょう。
ファイナルペーパー
繰り返し見て覚える項目をまとめる
どんどん勉強を進めていくと、「とにかく覚えるしかない箇所」や、「どうしても覚えられない箇所」、また、「何度解いても間違えてしまう箇所」が出てくると思います。
そのような箇所は、集中して暗記するために、またスキマ時間にいつでも気軽に確認できるように、ノートやルーズリーフにまとめたり、テキストの該当箇所をコピーして貼ったりしましょう。
ポイントは、「自分が覚えられない箇所・よく間違える箇所」に絞り込み、できるだけ分量を少なくすることです。
サブノートは作るべきか
よく、「サブノートは作るべきかどうか」という声を聞きますが、私はテキストを最初から最後まで全部ノートにまとめることは止めたほうがよいと考えます。
予備校のテキストはもちろんのこと、今では市販のテキストでもかなりしっかりとまとめられていますし、中には「ポイント集」などのようなテキストもあり、それとは別に自分自身でまとめるメリットがほとんどありません。
「自分の手で書かないと覚えられないので、サブノートを作ってまとめる必要があります!」と豪語している人がたまにいますが、そういう方たちの大半が、サブノートをきれいに作ることが目的となってしまい、完成した段階で満足し、二度と見ることはない、という笑えない状況になることが多いです。
なぜそう言えるのか…何を隠そう私自身が昔そうだったからです。
カンニングペーパーを作るとしたら…
まとめるのであれば、できるだけ内容量が少なくコンパクトに…、「1科目につきA4で1枚、試験中にカンニングペーパーとして持込が許されていたとしたら、何をまとめるか」という観点でまとめてみてください。
となると、必然的に情報量がしぼられます。自分にとってこのファイナルペーパーに載せるべき情報は何なのか、それを正確に見極めることができるのは、真剣に勉強に取り組んでいる方だけです。
そのような意味でも、日々の勉強をしていくうえで、理解できている部分・できていない部分をしっかり意識する必要があります。
模擬試験は必ず受験する
資格試験予備校を利用している場合は、模擬試験がカリキュラムに既に組み込まれている場合がほとんどですので、そのカリキュラムどおりに受験すればよいですが、独学の方は、自分で申し込みをしなければ模擬試験を受けるチャンスがありません。
よく、「まだ試験範囲全部の学習が終わっていないのに模擬試験を受ける意味があるのか」などの声を耳にしますが、私は「学習が全部終わってなかろうが、受験するレベルまで練習できていないとか、そんなの関係なく一度でもいいから模擬試験は受験すべき」と考えます。その理由は、4つあります。
模擬試験は本試験ではない=練習の場である
当たり前ですが、模擬試験は本試験ではありません。
つまり、別に良い成績をとる必要はないのです。
先ほどのように「学習が全部終わっていないから模擬試験を受験しない」というのは、この点をそもそも履き違えているからです。
私も当初は「模擬試験はリハーサルみたいなものだから、中途半端な状態で意味がないし、悪い結果が出たらやる気をなくしてしまいそう」なんてことを考えて、模擬試験を避けていました。
もちろん、どれほど勉強しても、本試験直前であっても「100%合格できる完璧な状態」というのは絶対にやってきません。
であれば、はじめから「模擬試験とはあくまでも場慣れ・練習のチャンスであり、何も良い点数を取ることが目的ではない」と考え方を切り替え、積極的に活用するようにしたほうが得策です。
試験時間の感覚をつかみ時間配分の練習をする
ご存知のとおり、社会保険労務士試験の試験時間は、選択試験1時間20分(80分)、択一試験3時間30分(210分)と長丁場です。
しかし、特に択一試験ですが、3時間30分で70問解く必要がありますので、1問あたり3分、1つの選択肢にかけられる時間は1分もありません。
そのような時間間隔を肌をもって感じるのに模擬試験はうってつけです。
また、社会保険労務士の本試験は、選択式試験で8科目、択一式試験で7科目ありますが、それらの科目の解く順番を実際に試してみるのにも絶好の機会です。
当たり前ですが、何も、選択式・択一式ともに1科目目の「労働基準法及び労働安全衛生法」から解き始める必要はありません。
私の場合は、選択式は「労働基準法及び労働安全衛生法」から順番どおりに解いていきましたが、択一式は、苦手科目であった「厚生年金保険法」から解き始め、「国民年金法」→「健康保険法」と社会保険系を終えた後に、「労務管理その他の労働に関する一般常識・社会保険に関する一般常識」→「労働基準法及び労働安全衛生法」→「雇用保険法」→「労働者災害補償保険法」という順番で必ず解いていました。
「苦手科目→得意科目」の順番で解き、頭が比較的疲れていない時に苦手科目を終え、頭が疲れてきた頃に得意科目が来る順番にしていました。
以上は私の場合の話です。得意科目、苦手科目は人ぞれぞれですので、皆さんでもぜひいろいろと解く順番を試してみるとよいかもしれません。
本試験の出題傾向をつかむ
各資格試験予備校の社会保険労務士の講座のパンフレットを見ると、必ず「模擬試験の第○問が本試験で出題された!」「予想的中!」などのフレーズが使われています。
各資格試験予備校はそれでも毎年の出題傾向を入念に分析した結果や、出題可能性が高い法改正部分などから出題予測をします。
そしてどの程度予測を的中させたかが、各資格試験予備校の信頼度向上につながる、と少なくとも予備校側は考えています。
つまり予備校が勢力を総動員し、威信をかけて作成したのが模擬試験なのです。言い変えれば模擬試験は、「時間とお金と手間がかかった最高品質の予想問題」と言っても過言ではありません。
もちろん、それらの模擬試験の問題を入手するには、模擬試験に申し込み、受験する必要があります。
そのような意味でも、やはり模擬試験は受験すべきです。
今の自分の弱点を客観的に知る
自信がないので模擬試験を受けない人が多いようですが、ダメならダメで、どこがダメなのかを直視し何らかの対策を打たなければダメなままです。
そのダメな部分を直視するのに模擬試験の受験は最適の方法です。
模擬試験を実施しているほぼ全ての予備校は、模擬試験の結果分析表のようなものを受験者に交付してくれます。
内容はそれぞれの予備校により違いがありますが、大体は科目ごとの平均点などがわかるようになっています。
中には、一問一問の各選択肢の選択率まで記載してあるすばらしい結果表を交付してくれるところもあります。
つまり、ある設問で選択肢がA~Eまであったら、Aを選んだ人が○%…、という分析結果を示してくれるのですが、これにより「誤りの選択肢を選んだ人が多い=難問である」など、多面的な分析が可能になります。
模擬試験は受けることが大事ではなく、むしろ受けた後の活用方法(しっかりと復習をする、結果表から弱点を把握し重点的に学習をする、など)が大事です。