社会保険労務士試験【労働者災害補償保険法/徴収法】<令和3年第3問>

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特別加入に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第3問 A

特別加入者である中小事業主が高齢のため実際には就業せず、専ら同業者の事業主団体の会合等にのみ出席するようになった場合であっても、中小企業の特別加入は事業主自身が加入する前提であることから、事業主と当該事業に従事する他の者を包括して加入しなければならず、就業実態のない事業主として特別加入者としないことは認められない。

解答の根拠

法33条1号 / H15.5.20.基発0520002号

本問全体として「特別加入」に関する問題になります。

けっこう細かいな…と思う論点もありますので、過去問を解くことで知識を押さえておきましょう。

本肢ですが、根拠通達に以下の記載があります。

1 就業実態のない事業主の取扱い

中小事業主等の特別加入においては、事業主が事業主と当該事業に徒事するその他の者を包括して加入申請を行い、政府の承認を受けることにより労災保険が適用されるものであり、事業主自身が加入することが前提となっている。

しかしながら、これらの中小事業主の中には、病気療養中、高齢等の事情により実態として当該事業場において就業していない者(以下「就業実態のない事業主」という。)もいることが指摘されていたところである。このような実態を勘案すると、業務の実情、災害の発生状況等に照らし実質的に労働者に準じて保護するにふさわしい者に対し労災保険の適用を及ぼそうとする特別加入制度の趣旨からして、実態として当該事業場において就業していない者まで包括して加入させることは必ずしも適当でないと考えられる。

このため、今後、就業実態のない事業主が自らを包括加入の対象から除外することを申し出た場合には、当該事業主を特別加入者としないこととする。

H15.5.20.基発0520002号

上記の記載によれば…
・原則は、事業主自身の加入が必須
・ただし、病気や高齢等の理由から、実態として働いていない事業主が存在し、制度趣旨からそのような状態は望ましくない
・したがって、働いていない事業主から加入対象除外の申し出があった場合には、特別加入者としない

となります。

そのため、本肢の文末にある「~認められない」は、「認められる」が正しいです。

本肢は×です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第3問 B

労働者を使用しないで行うことを常態とする特別加入者である個人貨物運送業者については、その住居とその就業の場所との間の往復の実態を明確に区別できることにかんがみ、通勤災害に関する労災保険の適用を行うものとされている。

解答の根拠

法35条1項 / 則46条の22の2 / 則46条の17

本肢は比較的解きやすいと思います。

個人で宅急便配送を仕事にしているドライバーさんを思い浮かべてください。

個人事業主なので、仕事に使うトラックは自身で用意する必要があり、駐車場所は自宅か、自宅の近くの駐車場であると推測できます。

また、個人事業主のため自宅または自宅近くの駐車場からどこかの事業所にいったん立ち寄ることはなく、そのまま配送先へトラックで向かうことでしょう。

と考えると、個人貨物運送業者については、どこまでが「通勤」で、どこからが「業務」か、境目が非常に曖昧です。

そこで、法では以下のように定めています。

第三十三条 次の各号に掲げる者(第二号、第四号及び第五号に掲げる者にあつては、労働者である者を除く。)の業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害に関しては、この章に定めるところによる。
 厚生労働省令で定める種類の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者

第三十五条 第三十三条第三号に掲げる者の団体又は同条第五号に掲げる者の団体が、当該団体の構成員である同条第三号に掲げる者及びその者に係る同条第四号に掲げる者又は当該団体の構成員である同条第五号に掲げる者の業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害(これらの者のうち、住居と就業の場所との間の往復の状況等を考慮して厚生労働省令で定める者にあつては、業務災害及び複数業務要因災害に限る。)に関してこの保険の適用を受けることにつき申請をし、政府の承認があつたときは、第三章第一節から第三節まで(当該厚生労働省令で定める者にあつては、同章第一節から第二節の二まで)、第三章の二及び徴収法第二章から第六章までの規定の適用については、次に定めるところによる。

労働者災害補償保険法

第四十六条の十七 法第三十三条第三号の厚生労働省令で定める種類の事業は、次のとおりとする。
 自動車を使用して行う旅客若しくは貨物の運送の事業又は原動機付自転車若しくは自転車を使用して行う貨物の運送の事業

(一人親方等の特別加入)

第四十六条の二十二の二 法第三十五条第一項の厚生労働省令で定める者は、第四十六条の十七第一号又は第三号に掲げる事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者及びこれらの者が行う事業に従事する者並びに第四十六条の十八第一号又は第三号に掲げる作業に従事する者とする。

労働者災害補償保険法施行規則

条文の構成が複雑ですが、要は「貨物運送事業の特別加入者には、通勤災害は適用しない」と規定されています。

他にも類似のものとして…
・個人タクシー運転手
・自転車配達員
などが挙げられています。

したがって、「通勤災害に関する労災保険の適用を行う」というのは誤りとなります。

本肢は×です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第3問 C

特別加入している中小事業主が行う事業に従事する者(労働者である者を除く。)が業務災害と認定された。その業務災害の原因である事故が事業主の故意又は重大な過失により生じさせたものである場合は、政府は、その業務災害と認定された者に対して保険給付を全額支給し、厚生労働省令で定めるところにより、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を事業主から徴収することができる。

解答の根拠

法34条1項4号

法には以下の定めがあります。

第三十四条 前条第一号の事業主が、同号及び同条第二号に掲げる者を包括して当該事業について成立する保険関係に基づきこの保険による業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害に関する保険給付を受けることができる者とすることにつき申請をし、政府の承認があつたときは、第三章第一節から第三節まで及び第三章の二の規定の適用については、次に定めるところによる。
 前条第一号又は第二号に掲げる者の事故が徴収法第十条第二項第二号の第一種特別加入保険料が滞納されている期間中に生じたものであるときは、政府は、当該事故に係る保険給付の全部又は一部を行わないことができる。これらの者の業務災害の原因である事故が前条第一号の事業主の故意又は重大な過失によつて生じたものであるときも、同様とする。

労働者災害補償保険法

本肢にあるいわゆる「費用徴収」は、
・事業主が保険料を滞納しているときに
・労働者に保険給付を行った際に
行うものです。

事業主の保険料滞納の責任を、労働者へ押し付けるわけにはいきませんので、「労働者への保険給付は行うが、その費用は責任者(事業主)からもらいますよ」という趣旨です。

ですが、特別加入者の場合は、「保険料を支払うのも、保険給付を受けるのも、同一人物である事業主」です。

そのため、「一度支払って、その費用を徴収する」なんていう面倒くさいことをするのではなく、「そもそも支払わなわなければよい」わけですね。

本肢は×です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第3問 D

日本国内で行われている有期事業でない事業を行う事業主から、海外(業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害に関する保護制度の状況その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める国の地域を除く。)の現地法人で行われている事業に従事するため派遣された労働者について、急な赴任のため特別加入の手続きがなされていなかった。この場合、海外派遣されてからでも派遣元の事業主(日本国内で実施している事業について労災保険の保険関係が既に成立している事業主)が申請すれば、政府の承認があった場合に特別加入することができる。

解答の根拠

法33条6号7号 / S52.3.30.労徴21号・基発192号

本肢ですが、根拠通達に以下の記載があります。

10(一)ロ(ロ)
海外派遣者として特別加入できるのは、新たに派遣される者に限らない。したがって、既に海外の事業に派遣されている者を特別加入させることも可能である。

S52.3.30.労徴21号・基発192号

仮に、本通達の内容を知らなかったとしても、制度趣旨からして「手続きが漏れてないことを理由に加入させない」のは良くないでしょう…と思ってもらえると、「正しい」と判断できると思います。

本肢は○となり本問の正解となります。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第3問 E

平成29年から介護作業従事者として特別加入している者が、訪問先の家庭で介護者以外の家族の家事支援作業をしているときに火傷し負傷した場合は、業務災害と認められることはない。

解答の根拠

則46条の18第5号 / H30.2.8基発0208第1号

本肢ですが、根拠通達に以下の記載があります。

1 改正の趣旨及び概要
家政婦紹介所の紹介等により個人家庭に使用されるために家事使用人として労働基準法及び労災法が適用されない者のうち、介護サービスを供給する者(以下「介護作業従事者」という。)については、特別加入の制度が設けられている(旧労災則第46条の18第5号)。
一方、同じ家事使用人であっても、家事、育児等の作業に従事する者については、当該制度の対象外となっているが、政府として、仕事と家庭の両立支援、女性の活躍を促進する中で、家事、育児等の支援サービスの需要が増大するものと考えられるため、家事支援従事者の就労条件を整備する必要があること、また、家事使用人は、介護サービスと家事、育児等の作業の双方を同時に実施することも多く、就労形態、災害発生状況及び求め得る災害防止措置等について類似していることからも、介護作業従事者と同様、労働者に準じて労災保険により保護するにふさわしい者であると考えられる。

H30.2.8基発0208第1号

第四十六条の十八 法第三十三条第五号の厚生労働省令で定める種類の作業は、次のとおりとする。
 日常生活を円滑に営むことができるようにするための必要な援助として行われる作業であつて、次のいずれかに該当するもの
 介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成四年法律第六十三号)第二条第一項に規定する介護関係業務に係る作業であつて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練又は看護に係るもの
 炊事、洗濯、掃除、買物、児童の日常生活上の世話及び必要な保護その他家庭において日常生活を営むのに必要な行為

労働者災害補償保険法施行規則

上記を要約すると、
・介護作業従事者も特別加入者できる
・介護作業従事者が、家事支援作業をしているときに負傷した場合は、業務災害と認められることがある
となり、設問のケースが業務災害と認められる可能性はあります。

実際の場面を想像すれば、介護者の支援と、介護者以外の支援の切り分けは極めて困難であることが想像できると思います。

例えば、部屋の掃除をする際に、介護者が独立した部屋に居住していれば区分けは明確ですが、リビングなどに介護ベッド設けていることもあります。

では、リビングの掃除は、介護者だけの支援なのか…というと、介護者以外の支援にもつながっていることでしょう。

本肢は×となります。

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