社会保険労務士試験【労働者災害補償保険法/徴収法】<令和3年第4問>

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 心理的負荷による精神障害の認定基準(令和 2 年 5 月 29 日付け基発 0529第 1 号)の業務による心理的負荷評価表の「平均的な心理的負荷の強度」の「具体的出来事」の 1 つである「上司等から身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」の、「心理的負荷の強度を『弱』『中』『強』と判断する具体例」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第4問 A

人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない精神的攻撃が行われたが、その行為が反復・継続していない場合、他に会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかった等の事情がなければ、心理的負荷の程度は「中」になるとされている。

解答の根拠

R2.5.29.基発0529第1号(心理的負荷による精神障害の認定基準)

本問は、すべて「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づく出題になります。

実務を担当していると、こちらの認定基準は必ず触れる内容です。

私も過去数回、行政や社労士会が開催した研修会に参加して確認しましたが、受験生の中には初めて聞いた…という方もいらっしゃるかもしれません。

本問を解き、5つの肢の内容はしっかり確認するとして、一度認定基準全体に目を通しておくと良いと思います(ウェブ上でPDFが閲覧できます…22ページと若干分量がありますが)

それでは、一つひとつの肢を確認していきましょう。

本肢のテーマは「人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない精神的攻撃」についてです。

認定基準を確認すると「№29」に該当します。

【「強」である例】
・ 上司等から、治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合
・ 上司等から、暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合
・ 上司等による次のような精神的攻撃が執拗に行われた場合
▸ 人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃
▸ 必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃
・ 心理的負荷としては「中」程度の身体的攻撃、精神的攻撃等を受けた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合

心理的負荷による精神障害の認定基準

ということで、「強」と判断される場合には、「執拗に行われた」ことが条件となります。

しかし、設問文ではわざわざ「その行為が反復・継続していない場合」と断ってあります。

また、最後の一文にあるとおり、「会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合」という点にも触れて、それには該当しないとの説明もあるため、今回のケースは強にはならず「中」となります。

本肢は○です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第4問 B

人格や人間性を否定するような、業務の目的を逸脱した精神的攻撃が行われたが、その行為が反復・継続していない場合、他に会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかった等の事情がなければ、心理的負荷の程度は「中」になるとされている。

解答の根拠

R2.5.29.基発0529第1号(心理的負荷による精神障害の認定基準)

こちらの肢Bは、一瞬「肢Aと何が違うの?」と見比べてしまった人もいるかもしれません。

間違い探しのようですが、肢Aとの違いは、「業務上明らかに必要性がない精神的攻撃」か、「業務の目的を逸脱した精神的攻撃」かになります。

先ほど引用した認定基準の中に「人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃」とありますので、考え方は肢Aと同じです。

こちらも肢Aと同じく「中」となります。

本肢は○です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第4問 C

他の労働者の面前における威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃が行われたが、その行為が反復・継続していない場合、他に会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかった等の事情がなければ、心理的負荷の程度は「中」になるとされている。

解答の根拠

R2.5.29.基発0529第1号(心理的負荷による精神障害の認定基準)

こちらの肢Cも、肢A・Bとの違いは「他の労働者の面前における威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃」という精神的攻撃の内容だけであり、先ほど引用した認定基準の中に「必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃」とありますので、考え方は肢Aと同じです。

こちらも肢A・Bと同じく「中」となります。

本肢は○です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第4問 D

治療等を要さない程度の暴行による身体的攻撃が行われた場合、その行為が反復・継続していなくても、また、他に会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかった等の事情がなくても、心理的負荷の程度は「強」になるとされている。

解答の根拠

R2.5.29.基発0529第1号(心理的負荷による精神障害の認定基準)

治療等を要さない程度の暴行」という記載がありますが、肢Aで引用した認定基準では、「強」と認定されるには「治療を要する程度の暴行」となっています。

ということで「強」に該当しません。

本肢は×となり、本問の正解となります。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第4問 E

「上司等」には、同僚又は部下であっても業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、その者の協力が得られなければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な場合、同僚又は部下からの集団による行為でこれに抵抗又は拒絶することが困難である場合も含む。

解答の根拠

R2.5.29.基発0529第1号(心理的負荷による精神障害の認定基準)

最後の肢は、「上司等」の「等」に何が含まれるかについての問題です。

「心理的負荷による精神障害の認定基準」の同じく№29に、以下の記載があります。

(注)「上司等」には、職務上の地位が上位の者のほか、同僚又は部下であっても、業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、その者の協力が得られなければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な場合、同僚又は部下からの集団による行為でこれに抵抗又は拒絶することが困難である場合も含む。

心理的負荷による精神障害の認定基準

本肢は、この記載の通りとなりますので、正しい内容となります。

本肢は○となります。

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