厚生年金保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
厚生年金保険法 令和5年第9問 A
今年度65歳に達する被保険者甲と乙について、20歳に達した日の属する月から60歳に達した日の属する月の前月まで厚生年金保険に加入した甲と、20歳に達した日の属する月から65歳に達した日の属する月の前月まで厚生年金保険に加入した乙とでは、老齢厚生年金における経過的加算の額は異なる。
昭60法附則第59条第2項
根拠条文を確認します。
(老齢厚生年金の額の計算の特例)
第五十九条
2 老齢厚生年金(厚生年金保険法附則第八条又は平成六年改正法附則第十五条第一項若しくは第三項の規定により支給する老齢厚生年金を除く。)の額は、当分の間、第一号に掲げる額が第二号に掲げる額を超えるときは、同法第四十三条第一項及び第四十四条第一項の規定にかかわらず、これらの規定に定める額に第一号に掲げる額から第二号に掲げる額を控除して得た額を加算した額とする。
一 千六百二十八円に改定率を乗じて得た額(その額に五十銭未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数が生じたときは、これを一円に切り上げるものとする。)に厚生年金保険の被保険者期間(附則第四十七条第一項の規定又は他の法令の規定により厚生年金保険の被保険者であつた期間とみなされた期間に係るものを含む。以下この項において同じ。)の月数(当該月数が四百八十を超えるときは、四百八十とする。)を乗じて得た額
二 国民年金法第二十七条本文に規定する老齢基礎年金の額にイに掲げる数をロに掲げる数で除して得た数を乗じて得た額
イ 厚生年金保険の被保険者期間のうち昭和三十六年四月一日以後の期間に係るもの(当該被保険者期間の計算について附則第四十七条第二項から第四項まで、平成八年改正法附則第五条第二項若しくは第三項又は平成二十四年一元化法附則第七条第二項若しくは第三項の規定の適用があつた場合にはその適用がないものとして計算した被保険者期間とし、二十歳に達した日の属する月前の期間及び六十歳に達した日の属する月以後の期間に係るものその他政令で定める期間に係るものを除く。)の月数
ロ 附則別表第八の上欄に掲げる区分に応じて同表の下欄に定める月数厚生年金保険法昭60法附則
本肢は、「老齢厚生年金の額の計算の特例」に関する問題です。
経過的加算額の算出は、上記根拠条文のとおりです。
A:1628円×改定率×被保険者月数
B:老齢基礎年金相当額×20歳~60歳の月数
→AーB
したがって、問題文中「65歳に達した日の属する月の前月まで厚生年金保険に加入した乙」であっても、計算されるのは60歳までの期間ですので、結果としては甲と同じになります。
本肢は×です。
厚生年金保険法 令和5年第9問 B
老齢厚生年金の支給繰下げの申出をした者に支給する繰下げ加算額は、老齢厚生年金の受給権を取得した日の属する月までの被保険者期間を基礎として計算した老齢厚生年金の額と在職老齢年金の仕組みによりその支給を停止するものとされた額を勘案して、政令で定める額とする。
法第44条の3第4項
根拠条文を確認します。
(支給の繰下げ)
第四十四条の三
4 第一項の申出をした者に支給する老齢厚生年金の額は、第四十三条第一項及び第四十四条の規定にかかわらず、これらの規定により計算した額に、老齢厚生年金の受給権を取得した日の属する月の前月までの被保険者期間を基礎として第四十三条第一項の規定の例により計算した額及び第四十六条第一項の規定の例により計算したその支給を停止するものとされた額を勘案して政令で定める額を加算した額とする。厚生年金保険法
本肢は、「支給の繰下げ」に関する問題です。
老齢厚生年金の支給繰下げの申出をした者に支給する繰下げ加算額は、
A:老齢厚生年金の受給権を取得した日の属する月の前月までの被保険者期間を基礎として計算した老齢厚生年金の額
B:在職老齢年金の仕組みによりその支給を停止するものとされた額
→A・Bを勘案して政令で定める額とする、とされています。
細かいですが、Aの定義の中の「月まで」について、「前月まで」が正しい内容となります。
本肢は×です。
厚生年金保険法 令和5年第9問 C
65歳到達時に老齢厚生年金の受給権が発生していた者が、72歳のときに老齢厚生年金の裁定請求をし、かつ、請求時に繰下げの申出をしない場合には、72歳から遡って5年分の年金給付が一括支給されることになるが、支給される年金には繰下げ加算額は加算されない。
法第44条の3第5項
根拠条文を確認します。
(支給の繰下げ)
第四十四条の三
5 第一項の規定により老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができる者が、その受給権を取得した日から起算して五年を経過した日後に当該老齢厚生年金を請求し、かつ、当該請求の際に同項の申出をしないときは、当該請求をした日の五年前の日に同項の申出があつたものとみなす。ただし、その者が次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 当該老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して十五年を経過した日以後にあるとき。
二 当該請求をした日の五年前の日以前に他の年金たる給付の受給権者であつたとき。厚生年金保険法
本肢は、「支給の繰下げ」に関する問題です。
上記根拠条文のとおり、老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができる者が、その受給権を取得した日から起算して5年を経過した日後に当該老齢厚生年金を請求し、かつ、当該請求の際に支給の繰下げの申出をしないときは、「当該請求をした日の5年前の日に支給の繰下げの申出があったものとみなす」とされています。
したがって、遡って5年分の一括支給される年金には「繰下げ加算額は加算される」となります。
本肢は×です。
厚生年金保険法 令和5年第9問 D
厚生年金保険法第43条第2項の在職定時改定の規定において、基準日が被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの間に到来し、かつ、当該被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの期間が1か月以内である場合は、基準日の属する月前の被保険者であった期間を老齢厚生年金の額の計算の基礎として、基準日の属する月の翌月から年金の額を改定するものとする。
法第43条第2項
根拠条文を確認します。
(年金額)
第四十三条
2 受給権者が毎年九月一日(以下この項において「基準日」という。)において被保険者である場合(基準日に被保険者の資格を取得した場合を除く。)の老齢厚生年金の額は、基準日の属する月前の被保険者であつた期間をその計算の基礎とするものとし、基準日の属する月の翌月から、年金の額を改定する。ただし、基準日が被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの間に到来し、かつ、当該被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの期間が一月以内である場合は、基準日の属する月前の被保険者であつた期間を老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、基準日の属する月の翌月から、年金の額を改定する。厚生年金保険法
本肢は、「年金額」に関する問題です。
まず原則として、受給権者が毎年9月1日(基準日)において被保険者である場合(基準日に被保険者の資格を取得した場合を除く。)の老齢厚生年金の額は、基準日の属する月前の被保険者であった期間をその計算の基礎とするものとし、基準日の属する月の翌月から、年金の額を改定する、としています(上記根拠条文前半部分)
次に例外として、基準日が被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの間に到来し、かつ、当該被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの期間が1月以内である場合は、基準日の属する月前の被保険者であった期間を老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、基準日の属する月の翌月から、年金の額を改定する、としています(上記根拠条文後半(但し書き))
問題文の内容は、上記根拠条文の但し書きと同じ内容となっています。
本肢は○となり、本問の正解となります。
厚生年金保険法 令和5年第9問 E
被保険者である受給権者がその被保険者の資格を喪失し、かつ、再び被保険者となることなくして被保険者の資格を喪失した日から起算して1か月を経過したときは、その被保険者の資格を喪失した月以前における被保険者であった期間を老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、資格を喪失した日から起算して1か月を経過した日の属する月から、年金の額を改定する。
法第43条第3項
根拠条文を確認します。
(年金額)
第四十三条
3 被保険者である受給権者がその被保険者の資格を喪失し、かつ、被保険者となることなくして被保険者の資格を喪失した日から起算して一月を経過したときは、その被保険者の資格を喪失した月前における被保険者であつた期間を老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、資格を喪失した日(第十四条第二号から第四号までのいずれかに該当するに至つた日にあつては、その日)から起算して一月を経過した日の属する月から、年金の額を改定する。厚生年金保険法
本肢は「年金額」に関する問題です。
単純な相違問題です。
・問題文…被保険者の資格を喪失した月以前
・正しくは…被保険者の資格を喪失した月前
資格喪失月は考慮しない、となります。
本肢は○です。