社会保険労務士試験【健康保険法】<令和4年第9問>

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現金給付である保険給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

健康保険法 令和4年第9問 A

被保険者が自殺により死亡した場合は、その者により生計を維持していた者であって、埋葬を行う者がいたとしても、自殺については、健康保険法第116条に規定する故意に給付事由を生じさせたときに該当するため、当該給付事由に係る保険給付は行われず、埋葬料は不支給となる。

解答の根拠

法第六十条の疑義解釈について(昭和26年3月19日保文発721号)

根拠通達を確認します。

被保険者の自殺による死亡は故意に基く事故ではあるが、死亡は絶対的な事故であるとともに、この死亡に対する保険給付としての埋葬料は、被保険者であつた者に生計を依存していた者で埋葬を行う者に対して支給されるという性質のものであるから、法第六十条後段に該当しないものとして取り扱い埋葬料を支給しても差支えない。

法第六十条の疑義解釈について(昭和26年3月19日保文発721号)

本肢は、「埋葬料」に関する問題です。

健康保険の給付をはじめ、社労士試験に出てくる法律に関連する多くの給付が、「自分の責任で生じたケガや病気には給付しない」というのが原則の考え方です。

しかし、本肢にある「自殺者に関する埋葬料」については、根拠通達にあるとおり、本人に対する給付ではなく、残された遺族が埋葬を行うための費用のサポートと考えられますので、給付事由により制限をかけるのは適切ではないと考えます。

本肢は×です。

健康保険法 令和4年第9問 B

被保険者が出産手当金の支給要件に該当すると認められれば、その者が介護休業期間中であっても当該被保険者に出産手当金が支給される。

解答の根拠

介護休業期間中の健康保険、船員保険及び厚生年金保険の被保険者資格等の取扱いについて(平成11年3月31日庁保険発9号保険発46号)

根拠通達を確認します。

第一 介護休業期間中の被保険者の取扱い
4 傷病手当金及び出産手当金
傷病手当金及び出産手当金の支給要件に該当すると認められる者については、その者が介護休業期間中であっても傷病手当金又は出産手当金が支給されるものであること。

介護休業期間中の健康保険、船員保険及び厚生年金保険の被保険者資格等の取扱いについて(平成11年3月31日庁保険発9号保険発46号)

本肢は、「介護休業期間中の出産手当金」に関する問題です。

介護休業中に
・傷病手当金の支給要件に該当する傷病
・出産手当金の支給要件に該当する妊娠・出産
の状態になることは十分考えられます。

そもそも、介護目的で休んでいる方が出産する際に出産手当金を支給しない…とする理由が見当たりません。

本肢は○となり、本問の正解となります。

健康保険法 令和4年第9問 C

共済組合の組合員として6か月間加入していた者が転職し、1日の空白もなく、A健康保険組合の被保険者資格を取得して7か月間加入していた際に、療養のため労務に服することができなくなり傷病手当金の受給を開始した。この被保険者が、傷病手当金の受給を開始して3か月が経過した際に、事業所を退職し、A健康保険組合の任意継続被保険者になった場合でも、被保険者の資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けていることから、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者から傷病手当金の給付を受けることができる。

解答の根拠

健康保険法の一部を改正する法律の施行について(昭和32年5月15日保発42号)

根拠通達を確認します。

第六 その他
1 資格喪失後継続給付を受けるための資格期間の延長
資格喪失後の継続給付を受けるための資格期間が六月から一年に延長された(新法第五五条第二項)が、これと同時に本保険に対しては何ら財政的に拠出していない共済組合の組合員であった期間及び退職から再就職までの期間を保険するための任意継続被保険者であった期間は、この資格喪失後継続給付を受けるための資格期間には算入しないこととする改正が行われていること。

健康保険法の一部を改正する法律の施行について(昭和32年5月15日保発42号)

本肢は、「資格喪失後継続給付」に関する問題です。

問題文の状況を整理すると…
・共済組合の組合員(6か月)
⇒転職
⇒A健康保険組合の被保険者(7か月)
⇒傷病手当金受給(3ヶ月)
⇒退職・任意継続被保険者
というイメージです。

ご存じの通り、被保険者の資格を喪失したあとに継続して給付を受けるためには、
・資格喪失日の前日まで引き続き1年以上被保険者である
・資格喪失時に傷病手当金・出産手当金の支給を受けている
この2つの条件を満たす必要があります。

問題文のケースの場合、A健康保険組合の被保険者期間は7か月+傷病手当金受給期間3ヶ月=10か月ですので1年に足りず、その前の共済組合の組合員期間6か月を加算できるか否かで決まります。

この点、上記根拠通達では、「資格喪失後の継続給付を受けるための資格期間について、共済組合の組合員であった期間は、算入しない」こととされています。

したがって、問題文のケースでは残念ながら継続給付は受けられない、となります。

本肢は×です。

健康保険法 令和4年第9問 D

療養費の支給対象に該当するものとして医師が疾病又は負傷の治療上必要であると認めた治療用装具には、義眼、コルセット、眼鏡、補聴器、胃下垂帯、人工肛門受便器(ペロッテ)等がある。

解答の根拠

義眼と治療材料の支給について(昭和25年2月8日保発9号)

根拠通達を確認します。

標記の件については、昭和二年六月二日付保理第二四六四号により健康保険法第四三条第二号の治療材料の範囲外とし従来その給付は行われていなかったが、眼球摘出後眼窩保護のため装用を必要とする場合は、給付の範囲とすべきものと認められるに至ったので、右通牒を廃止し、爾今治療材料の範囲としコルセットに準じ支給を行うことになったから、その取扱に遺漏のないようせられたい。

義眼と治療材料の支給について(昭和25年2月8日保発9号)

本肢は、「療養費の支給対象」に関する問題です。

なかなかマニアックな問題なので、この肢自体は○・×が判断できなくても仕方がないかな…と思います。

上記根拠通達によると
・支給対象…義眼、コルセット
・支給対象外…上記以外(問題文では、眼鏡、補聴器、胃下垂帯、人工肛門受便器(ペロッテ))

とされています。

本肢は×です。

健康保険法 令和4年第9問 E

移送費の支給が認められる医師、看護師等の付添人による医学的管理等について、患者がその医学的管理等に要する費用を支払った場合にあっては、現に要した費用の額の範囲内で、診療報酬に係る基準を勘案してこれを評価し、現に移送に要した費用とともに移送費として支給を行うことができる。

解答の根拠

健康保険の移送費の支給の取扱いについて(平成6年9月9日庁保険発9号保険発119号)

根拠通達を確認します。

3 付添人の医学的管理等に係る療養費の支給
移送費の支給が認められる医師、看護婦等の付添人による医学的管理等について、患者がその医学的管理等に要する費用を支払った場合にあっては、現に要した費用の額の範囲内で、移送費とは別に、診療報酬に係る基準を勘案してこれを評価し、療養費の支給を行うことができること。

健康保険の移送費の支給の取扱いについて(平成6年9月9日庁保険発9号保険発119号)

本肢は「移送費と療養費の関係」に関する問題です。

移送費の支給対象となる、医師・看護師等の付添人による医学的管理等は、移送費として支給するのか、療養費として支給するのか。

上記根拠通達では、移送に絡むものであったとしても、あくまでも「医学的管理等」そのものについては、「移送費とは別に療養費の支給対象とする」とされています。

本肢は×です。

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