健康保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
健康保険法 令和4年第7問 A
被保険者は、被保険者又はその被扶養者が65歳に達したことにより、介護保険第2号被保険者(介護保険法第9条第2号に該当する被保険者をいう。)に該当しなくなったときは、遅滞なく、事業所整理記号及び被保険者整理番号等を記載した届書を事業主を経由して厚生労働大臣又は健康保険組合に届け出なければならない。
則第40条第1項
根拠条文を確認します。
(介護保険第二号被保険者に該当しなくなった場合の届出)
健康保険法施行規則
第四十条 被保険者は、被保険者又はその被扶養者が介護保険第二号被保険者(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第九条第二号に該当する被保険者をいう。以下同じ。)に該当しなくなったときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した届書を事業主を経由して厚生労働大臣又は健康保険組合に届け出なければならない。ただし、被保険者又はその被扶養者が六十五歳に達したときは、この限りでない。
一 事業所整理記号及び被保険者整理番号
二 被保険者(被扶養者に係る場合にあっては、被保険者及びその被扶養者)の氏名及び生年月日
三 該当しなくなった年月日及びその理由
本肢は、「介護保険第二号被保険者に該当しなくなった場合の届出」に関する問題です。
上記根拠条文のとおり
・介護保険第2号被保険者に該当しなくなった⇒届出必要
・ただし、65歳達成時には届出不要
とされています。
65歳に達し、第1号に切り替わるのは、行政や健保組合でもデジタルに判断できますので、届出不要とされているわけですね。
本肢は×です。
健康保険法 令和4年第7問 B
健康保険法第3条第5項によると、健康保険法において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。したがって、名称は異なっても同一性質を有すると認められるものが、年間を通じ4回以上支給される場合において、当該報酬の支給が給与規定、賃金協約等によって客観的に定められており、また、当該報酬の支給が1年間以上にわたって行われている場合は、報酬に該当する。
「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」の一部改正について(平成30年7月30日保保発0730第1号)
根拠通達を確認します。
1 報酬の範囲
「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」の一部改正について(平成30年7月30日保保発0730第1号)
(1) 毎年七月一日現在における賃金、給料、俸給、手当又は賞与及びこれに準ずべきもので毎月支給されるもの(以下「通常の報酬」という。)以外のもの(以下「賞与」という。)の支給実態がつぎのいずれかに該当する場合は、当該賞与は報酬に該当すること。
ア 賞与の支給が、給与規定、賃金協約等の諸規定(以下「諸規定」という。)によって年間を通じ四回以上の支給につき客観的に定められているとき。
イ 賞与の支給が七月一日前の一年間を通じ四回以上行われているとき。
本肢は、「報酬の範囲」に関する問題です。
健康保険法における報酬は、
・賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの
・ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない
とされています。
そして、但書に関して、上記通達にて詳細が説明されています。
【賞与とされていても報酬に該当するケース】
1.賞与の支給が、給与規定、賃金協約等の諸規定によって年間を通じ4回以上の支給につき客観的に定められているとき。
2.賞与の支給が7月1日前の1年間を通じ4回以上行われているとき。
したがて、問題文のケースは「報酬」に該当することになります。
本肢は○となり、本問の正解となります。
健康保険法 令和4年第7問 C
被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は、社会保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服がある者は、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる。当該処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する社会保険審査官の決定前でも提起することができる。
法第189条第1項 / 法第192条
根拠条文を確認します。
(審査請求及び再審査請求)
第百八十九条 被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は、社会保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服がある者は、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる。(審査請求と訴訟との関係)
健康保険法
第百九十二条 第百八十九条第一項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する社会保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができない。
本肢は、「審査請求」に関する問題です。
上記根拠条文の通り、「処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する社会保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができない」とされています。
しっかりと段階を踏むことが規定されているわけですね。
本肢は×です。
健康保険法 令和4年第7問 D
自動車通勤者に対してガソリン単価を設定して通勤手当を算定している事業所において、ガソリン単価の見直しが月単位で行われ、その結果、毎月ガソリン単価を変更し通勤手当を支給している場合、固定的賃金の変動には該当せず、標準報酬月額の随時改定の対象とならない。
標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集(令和3年4月1日事務連絡)
根拠通達を確認します。
問 13 自動車通勤者に対してガソリン単価を設定して通勤手当を算定している事業所において、ガソリン単価の見直しが月単位で行われ、その結果、毎月ガソリン単価を変更し通勤手当を支給している場合、固定的賃金の変動に該当するか。
(答) 単価の変動が月ごとに生じる場合でも、固定的賃金の変動として取扱うこととなる。
標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集(令和3年4月1日事務連絡)
本肢は、「通勤手当」に関する問題です。
ガソリン単価に連動して通勤手当を算定しているケースは、昨今のガソリン価格の高騰などの状況から多いかもしれません(実務上はとても大変ですが)
そのような場合は、しっかりと随時改定の要件に該当するかどうか、つまり「固定的賃金の変動」として対応していかなければならない、と上記根拠通達で説明されています。
これは実務担当者は大変ですね…。
本肢は×です。
健康保険法 令和4年第7問 E
被保険者が故意に給付事由を生じさせたときは、当該給付事由についての保険給付は行われないため、自殺未遂による傷病に係る保険給付については、その傷病の発生が精神疾患に起因するものであっても保険給付の対象とならない。
自殺未遂による傷病に係る保険給付等について(平成22年5月21日保保発0521第1号)
根拠条文を確認します。
健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)及び高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)では、故意に給付事由を生じさせた場合は、その給付事由についての保険給付等は行わないことと規定していますが、自殺未遂による傷病について、その傷病の発生が精神疾患等に起因するものと認められる場合は、「故意」に給付事由を生じさせたことに当たらず、保険給付等の対象としております。
自殺未遂による傷病に係る保険給付等について(平成22年5月21日保保発0521第1号)
本肢は「自殺未遂による傷病に係る保険給付等」に関する問題です。
自殺未遂による傷病については、原則的には「本人の責めに帰すべき事由」として、保険給付等の対象外とされています。
しかし、その原因が本人の精神疾患等に起因する、と認められる場合は、その精神疾患等の延長線上に生じた傷病、と考え、保険給付等の対象となる、とされています。
本肢は×です。