下記に示す事業者が一の場所において行う建設業の事業に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、この場所では甲社の労働者及び下記乙①社から丙②社までの 4 社の労働者が作業を行っており、作業が同一の場所において行われることによって生じる労働災害を防止する必要がある。
甲社 鉄骨造のビル建設工事の仕事を行う元方事業者
当該場所において作業を行う労働者数 常時 5 人
乙①社 甲社から鉄骨組立工事一式を請け負っている事業者
当該場所において作業を行う労働者数 常時 10 人
乙②社 甲社から壁面工事一式を請け負っている事業者
当該場所において作業を行う労働者数 常時 10 人
丙①社 乙①社から鉄骨組立作業を請け負っている事業者
当該場所において作業を行う労働者数 常時 14 人
丙②社 乙②社から壁材取付作業を請け負っている事業者
当該場所において作業を行う労働者数 常時 14 人
労働安全衛生法 令和4年第8問 A
甲社は、統括安全衛生責任者を選任しなければならない。
法第15条第1項 / 令第7条第2項
根拠条文を確認します。
(統括安全衛生責任者)
労働安全衛生法
第十五条 事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第三十条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない
(統括安全衛生責任者を選任すべき業種等)
労働安全衛生法施行令
第七条 法第十五条第一項の政令で定める業種は、造船業とする。
2 法第十五条第一項ただし書及び第三項の政令で定める労働者の数は、次の各号に掲げる仕事の区分に応じ、当該各号に定める数とする。
一 ずい道等の建設の仕事、橋梁の建設の仕事(作業場所が狭いこと等により安全な作業の遂行が損なわれるおそれのある場所として厚生労働省令で定める場所において行われるものに限る。)又は圧気工法による作業を行う仕事 常時三十人
二 前号に掲げる仕事以外の仕事 常時五十人
本肢は、「総括安全衛生管理者」に関する問題です。
本肢を含め、本問全体がそれぞれの選任要件をおさえていれば確実に正誤判断できる問題なので、このような問題は確実に得点できるようにしましょう!
まず、設問文によれば、甲社は
・事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている→元方事業者
・さらに建設業である→「特定」元方事業者
であることを確認します。
そして、今回の労働者は全社合計で「53人」であり、「常時50人」以上の労働者となる場合の特定元方事業者には「統括安全衛生責任者」の選任義務が生じます。
本肢は○です。
労働安全衛生法 令和4年第8問 B
甲社は、元方安全衛生管理者を選任しなければならない。
法第15条の2
根拠条文を確認します。
(元方安全衛生管理者)
労働安全衛生法
第十五条の二 前条第一項又は第三項の規定により統括安全衛生責任者を選任した事業者で、建設業その他政令で定める業種に属する事業を行うものは、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、元方安全衛生管理者を選任し、その者に第三十条第一項各号の事項のうち技術的事項を管理させなければならない。
本肢は、「元方安全衛生管理者」に関する問題です。
既に肢Aで
・甲社は「特定元方事業者」
・全体の労働者は「53人」
・統括安全衛生責任者の選任義務がある
と整理できていますので、この上で肢Bを検討します。
上記根拠条文の通り、
・特定元方事業者で統括安全衛生責任者の選任をしている
・建設業である
場合は、「元方安全衛生管理者」を選任する義務があります。
肢Aと肢Bは、セットでおさえておきましょう!
本肢は○です。
労働安全衛生法 令和4年第8問 C
甲社は、当該建設工事の請負契約を締結している事業場に、当該建設工事における安全衛生の技術的事項に関する管理を行わせるため店社安全衛生管理者を選任しなければならない。
法第15条の3第1項
根拠条文を確認します。
(店社安全衛生管理者)
労働安全衛生法
第十五条の三 建設業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者が一の場所(これらの労働者の数が厚生労働省令で定める数未満である場所及び第十五条第一項又は第三項の規定により統括安全衛生責任者を選任しなければならない場所を除く。)において作業を行うときは、当該場所において行われる仕事に係る請負契約を締結している事業場ごとに、これらの労働者の作業が同一の場所で行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、店社安全衛生管理者を選任し、その者に、当該事業場で締結している当該請負契約に係る仕事を行う場所における第三十条第一項各号の事項を担当する者に対する指導その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。
本肢は、「店社安全衛生管理者」に関する問題です。
既に肢Aで
・甲社は「特定元方事業者」
・全体の労働者は「53人」
・統括安全衛生責任者の選任義務がある
と整理できていますので、この上で肢Cを検討します。
「店社安全衛生管理者」は、上記根拠条文の通り、「統括安全衛生責任者を選任しなければならない場所を除く」と例外が設けられており、肢Aで確認したとおり、当該事業場は「統括安全衛生責任者の選任義務がある」ケースですので、「店社安全衛生管理者」を選任する必要がない、という結論になります。
本肢は×となり、本問の正解となります。
労働安全衛生法 令和4年第8問 D
甲社は、労働災害を防止するために協議組織を設置し運営しなければならないが、この協議組織には自社が請負契約を交わした乙①社及び乙②社のみならず丙①社及び丙②社も参加する組織としなければならない。
則第635条
根拠条文を確認します。
(協議組織の設置及び運営)
労働安全施行規則
第六百三十五条 特定元方事業者(法第十五条第一項の特定元方事業者をいう。以下同じ。)は、法第三十条第一項第一号の協議組織の設置及び運営については、次に定めるところによらなければならない。
一 特定元方事業者及びすべての関係請負人が参加する協議組織を設置すること。
二 当該協議組織の会議を定期的に開催すること。
2 関係請負人は、前項の規定により特定元方事業者が設置する協議組織に参加しなければならない。
本肢は、「協議組織」に関する問題です。
まず、肢Aで引用した根拠条文「法第15条第1項」を再度ご確認ください。
そうすると、実は「関係請負人」に関する規定を青マーカー太字にしています。
本肢の論点である「乙①社・乙②社・丙①社・丙②社」は、全て「関係請負人」に該当します。
したがって、上記則第635条の規定により、
・特定元方事業者である甲社は、「特定元方事業者及びすべての関係請負人が参加する協議組織を設置」しなければならず、
・関係請負人である乙①社・乙②社・丙①社・丙②社は、その「協議組織に参加しなければならない」
となります。
本肢は○です。
労働安全衛生法 令和4年第8問 E
甲社は、丙②社の労働者のみが使用するために丙②社が設置している足場であっても、その設置について労働安全衛生法又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行わなければならない。
法第29条第1項
根拠条文を確認します。
(元方事業者の講ずべき措置等)
労働安全衛生法
第二十九条 元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行なわなければならない。
本肢は「元方事業者の講ずべき措置」に関する問題です。
肢Dで確認した通り、丙②社は「関係請負人」に該当します。
そして、上記法第29条の規定のとおり、元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行なわなければならないとされています。
したがって、甲社には、丙②社が設置している足場についても(たとえ、その足場を使うのが、丙②社の労働者のみだとしても)しっかりとチェック・必要な指導を行わなければならないわけですね。
本肢は○です。