国民年金法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
国民年金法 令和3年第2問 A
同一人に対して障害厚生年金(厚生労働大臣が支給するものに限る。)の支給を停止して老齢基礎年金を支給すべき場合に、その支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月以降の分として当該障害厚生年金が支払われたときは、その支払われた障害厚生年金は当該老齢基礎年金の内払とみなすことができる。
法第21条第3項
根拠条文を確認します。
(年金の支払の調整)
国民年金法
第二十一条
3 同一人に対して厚生年金保険法による年金たる保険給付(厚生労働大臣が支給するものに限る。以下この項において同じ。)の支給を停止して年金給付を支給すべき場合において、年金給付を支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月以降の分として同法による年金たる保険給付の支払が行われたときは、その支払われた同法による年金たる保険給付は、年金給付の内払とみなすことができる。
本肢は、「年金支払いの調整」に関する問題です。
実務ではあるあるだと思いますが、手続きのタイミングなどが原因で、給付の種別の切り替えが遅れることがあります。
今回は、「もともと障害厚生年金を受給していた方が、それを停止して老齢基礎年金に切り替える」ケースです。
その場合に、「障害厚生年金として受け取ったお金を返金して、老齢基礎年金として再び振り込んでもらう」というのが、あるべき姿なのかもしれません。
しかし、支払っている人も同じ(そのため、かっこ書きで「厚生労働大臣が支給するものに限る」とあります)で、受け取っている名目は違いますが、同じお金はお金…そのように返金・再振り込みしてもらうことで誰にメリットがあるの?という感じですよね。
そのため、根拠条文にあるとおり、そのような場合は「内払い」として処理しますよ、とされています。
本肢は○です。
国民年金法 令和3年第2問 B
障害基礎年金について、初診日が令和8年4月1日前にある場合は、当該初診日の前日において当該初診日の属する月の前々月までの1年間(当該初診日において被保険者でなかった者については、当該初診日の属する月の前々月以前における直近の被保険者期間に係る月までの1年間)に、保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がなければ保険料納付要件は満たされたものとされる。ただし、当該初診日において65歳未満であるときに限られる。
昭60法附則第20条第1項
根拠条文を確認します。
(障害基礎年金等の支給要件の特例)
国民年金法 昭60法附則
第二十条 初診日が令和八年四月一日前にある傷病による障害について国民年金法第三十条第一項ただし書(同法第三十条の二第二項、同法第三十条の三第二項、同法第三十四条第五項及び同法第三十六条第三項において準用する場合を含む。)の規定を適用する場合においては、同法第三十条第一項ただし書中「三分の二に満たないとき」とあるのは、「三分の二に満たないとき(当該初診日の前日において当該初診日の属する月の前々月までの一年間(当該初診日において被保険者でなかつた者については、当該初診日の属する月の前々月以前における直近の被保険者期間に係る月までの一年間)のうちに保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がないときを除く。)」とする。ただし、当該障害に係る者が当該初診日において六十五歳以上であるときは、この限りでない。
本肢は、「障害基礎年金の支給要件」に関する問題です。
今回は、障害基礎年金の支給要件の中でも、いわゆる「特例要件」です。
まとめてみると、以下のようになります。
【障害基礎年金等の支給要件の特例】
・初診日(65歳未満に限る)が令和8年4月1日前である場合
・当該初診日の前日において当該初診日の属する月の前々月までの1年間
(当該初診日において被保険者でなかった者については、当該初診日の属する月の前々月以前における直近の被保険者期間に係る月までの1年間)に
・保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がない
→保険料納付要件を満たす
上記の通り、根拠条文どおりの問題のため、〇となります。
本肢は○です。
国民年金法 令和3年第2問 C
第3号被保険者が被扶養配偶者でなくなった時点において、第1号被保険者又は第2号被保険者に該当するときは、種別の変更となり、国民年金の被保険者資格は喪失しない。
法第9条第1項第6号
根拠条文を確認します。
(資格喪失の時期)
国民年金法
第九条 第七条の規定による被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日(第二号に該当するに至つた日に更に第七条第一項第二号若しくは第三号に該当するに至つたとき又は第三号から第五号までのいずれかに該当するに至つたとき(第四号については、厚生年金保険法に基づく老齢給付等を受けることができる者となつたときに限る。)は、その日)に、被保険者の資格を喪失する。
一~五(略)
六 被扶養配偶者でなくなつたとき(第七条第一項第一号又は第二号に該当するときを除く。)。
本肢は、「資格喪失」に関する問題です。
国民年金の資格喪失については、上記根拠条文の通り、第9条に規定があります。
この中で、第1項の第6号に「被扶養配偶者でなくなつたとき(第七条第一項第一号又は第二号に該当するときを除く。)」とあり、本肢はこれをベースに作問されています。
原則として、被扶養者でなくなったときに資格喪失となりますが、かっこ書きで「第七条第一項第一号又は第二号に該当するときを除く」とあります。
この第7条というのは、いわゆる「1号被保険者」「2号被保険者」の用語の由来となっている被保険者資格の条文です。
ということで、1・2号被保険者になる場合は除く=被保険者を喪失せずに「種別の変更」となります。
本肢は○です。
国民年金法 令和3年第2問 D
繰下げ支給の老齢基礎年金の受給権者に対し国民年金基金(以下本問において「基金」という。)が支給する年金額は、200円に国民年金基金令第24条第1項に定める増額率を乗じて得た額を200円に加えた額に、納付された掛金に係る当該基金の加入員期間の月数を乗じて得た額を超えるものでなければならない。
法第130条第2項
根拠条文を確認します。
第百三十条
国民年金法
2 老齢基礎年金の受給権者に対し基金が支給する年金の額は、二百円(第二十八条又は附則第九条の二若しくは第九条の二の二の規定による老齢基礎年金の受給権者に対し基金が支給する年金については、政令で定める額。以下同じ。)に納付された掛金に係る当該基金の加入員であつた期間(第八十七条の規定による保険料に係る保険料納付済期間である期間に限る。以下「加入員期間」という。)の月数を乗じて得た額を超えるものでなければならない。
(支給の繰下げ及び繰上げの際に加入員期間の月数に乗ずる額)
国民年金基金令
第二十四条 法第二十八条の規定による老齢基礎年金の受給権者に係る法第百三十条第二項の政令で定める額は、二百円に増額率(千分の七に老齢基礎年金の受給権者が当該老齢基礎年金の受給権を取得した日の属する月からその者が当該老齢基礎年金の支給の繰下げの申出(法第二十八条第五項の規定により同条第一項の申出があったものとみなされた場合における当該申出を含む。)をした日の属する月の前月までの月数(当該月数が百二十を超えるときは、百二十)を乗じて得た率をいう。)を乗じて得た額を二百円に加えた額とする。
本肢は、「繰下げ支給の老齢基礎年金と国民年金基金が支給する年金」に関する問題です。
本体の老齢基礎年金を繰り下げた場合、国民年金基金が支給する年金額に影響はあるのでしょうか。
上記根拠条文(法第130条)の通り、「政令で定める額(国民年金基金令:200円+200円に増額率を乗じた額」に加入期間の月数を乗じた額を超える必要がある、とされています。
つまり、国民年金基金の年金の方も、一定の増額率をかけて増額させていることがわかりますね。
本肢は○です。
国民年金法 令和3年第2問 E
被保険者又は被保険者であった者が、第3号被保険者としての被保険者期間の特例による時効消滅不整合期間について厚生労働大臣に届出を行ったときは、当該届出に係る時効消滅不整合期間は、当該届出の行われた日以後、国民年金法第89条第1項に規定する法定免除期間とみなされる。
法附則第9条の4の2第4項
根拠条文を確認します。
(第三号被保険者としての被保険者期間の特例)
国民年金法附則
第九条の四の二
4 特定期間を有する者に対する昭和六十年改正法附則第十八条の規定の適用については、同条第一項中「同日以後の国民年金の被保険者期間」とあるのは、「同日以後に同法附則第九条の四の二第二項の規定により同法第九十条の三第一項の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係る期間とみなされた期間」とする。
本肢は、「時効消滅不整合期間」に関する問題です。
まずは「時効消滅不整合期間」について軽く説明します。
例えば、夫会社員(2号)+専業主婦の妻(3号)のケースをイメージしてください。
夫が一念発起し会社を辞めて起業したら、夫婦ともに1号になりますね。
この際に、うっかり妻が3号→1号への種別変更の届出を忘れてしまうと、「保険料未納期間」が発生し続けることになり、そのまま継続した場合、2年を過ぎた部分は保険料を後から納付できない期間となってしまいます。
この期間が「時効消滅不整合期間」です。
この期間に対する救済措置として「時効消滅不整合期間に係る特定期間該当届」というものを届け出れば、「この期間は『学生等納付特例期間』とみなす」とされています。
「学生等納付特例期間」は、年金の受給資格期間としてはカウントされますが、受給額には反映されませんので、その点で問題文にある法定免除とは異なります。
本肢は×となり、本問の正解となります。