厚生年金保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
厚生年金保険法 令和6年第9問 A
2以上の種別の被保険者であった期間を有する者の場合、厚生年金保険法附則第8条の規定により支給される特別支給の老齢厚生年金の支給要件のうち「1年以上の被保険者期間を有すること」については、その者の2以上の種別の被保険者であった期間に係る被保険者期間を合算することはできない。
法附則第20条第1項
根拠条文を確認します。
(二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者に係る特例による老齢厚生年金の特例)
第二十条 二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者については、附則第八条(附則第八条の二において読み替えて適用する場合を含む。)の規定を適用する場合においては、各号の厚生年金被保険者期間に係る被保険者期間ごとに適用する。ただし、附則第八条第二号の規定については、その者の二以上の被保険者の種別に係る被保険者であつた期間に係る被保険者期間を合算し、一の期間に係る被保険者期間のみを有するものとみなして適用する。厚生年金保険法附則
本肢は、「二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者に係る特例による老齢厚生年金の特例」に関する問題です。
特別支給の老齢厚生年金には、2以上の種別の被保険者であった期間に関する特例があります。
それは、上記根拠条文のとおり、「その者の2以上の被保険者の種別に係る被保険者であった期間に係る被保険者期間を合算し、1の期間に係る被保険者期間のみを有するものとみなして適用する。」というものです。
そのため、この合算をすることで、支給要件である「1年以上の被保険者期間を有すること」を満たせば、特別支給の老齢厚生年金を受給することができることとなります。
本肢は×です。
厚生年金保険法 令和6年第9問 B
2以上の種別の被保険者であった期間を有する者に係る老齢厚生年金の額は、その者の2以上の種別の被保険者であった期間を合算して一の期間に係る被保険者期間のみを有するものとみなして平均標準報酬額を算出し計算することとされている。
法第78条の26第2項
根拠条文を確認します。
(老齢厚生年金の受給権者及び年金額の特例)
第七十八条の二十六
2 二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者に係る老齢厚生年金について、第四十三条(この法律及び他の法令において、引用し、準用し、又はその例による場合を含む。)の規定を適用する場合においては、同条第一項に規定する被保険者であつた全期間並びに同条第二項及び第三項に規定する被保険者であつた期間は、各号の厚生年金被保険者期間ごとに適用し、同条第一項に規定する被保険者期間は、各号の厚生年金被保険者期間に係る被保険者期間ごとに適用し、同条第二項及び第三項に規定する被保険者の資格は、被保険者の種別ごとに適用する。厚生年金保険法
本肢は、「老齢厚生年金の受給権者及び年金額の特例」に関する問題です。
上記根拠条文のとおり、「2以上の種別の被保険者であった期間を有する者に係る老齢厚生年金について、第43条(年金額)の規定を適用する場合においては、同条1項に規定する被保険者期間は、各号の厚生年金被保険者期間に係る被保険者期間ごとに適用する」とされています。
問題文にあるように、一つの期間にまとめて…という対応はしません。
本肢は×です。
厚生年金保険法 令和6年第9問 C
第1号厚生年金被保険者として在職中である者が、報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金の受給権を取得したとき、第1号厚生年金被保険者としての期間が44年以上である場合は、老齢厚生年金の額の計算に係る特例の適用となり、その者の特別支給の老齢厚生年金に定額部分が加算される。
法附則第9条の3第1項
根拠条文を確認します。
第九条の三 附則第八条の規定による老齢厚生年金の受給権者が、その権利を取得した当時、被保険者でなく、かつ、その者の被保険者期間が四十四年以上であるとき(次条第一項の規定が適用される場合を除く。)は、当該老齢厚生年金の額は、第四十三条第一項の規定にかかわらず、前条第二項の規定の例により計算する。
厚生年金保険法附則
本肢は、「長期加入者の特例」に関する問題です。
60歳台前半の報酬比例部分のみの老齢厚生年金の受給権者が、
・被保険者でない
・被保険者期間が44年以上あるとき
双方を満たすときは、報酬比例部分と定額部分を併せた老齢厚生年金が支給されることとなります。
問題文のケースでは「在職中」とあるため、当該特例の適用はありません。
本肢は×です。
厚生年金保険法 令和6年第9問 D
65歳以上の被保険者で老齢厚生年金の受給権者が離職し、雇用保険法に基づく高年齢求職者給付金を受給した場合は、当該高年齢求職者給付金に一定の率を乗じて得た額に相当する部分の老齢厚生年金の支給が停止される。
法附則第11条の5
根拠条文を確認します。
第十一条の五 附則第七条の四の規定は、附則第八条の規定による老齢厚生年金について準用する。この場合において、附則第七条の四第二項第二号中「第四十六条第一項及び平成二十五年改正法附則第八十六条第一項の規定によりなおその効力を有するものとされた平成二十五年改正法第一条の規定による改正前の第四十六条第五項」とあるのは、「附則第十一条から第十一条の三まで又は第十一条の四第二項及び第三項」と読み替えるものとする。
厚生年金保険法附則
本肢は、「老齢厚生年金と高年齢求職者給付の調整」に関する問題です。
通常の(65歳以降の)老齢厚生年金と雇用保険の高年齢求職者給付金は、同時に受給しても調整されません。
調整対象するのは、60歳台前半の老齢厚生年金です。
本肢は×です。
厚生年金保険法 令和6年第9問 E
65歳以後の在職老齢年金の仕組みにおいて、在職中であり、被保険者である老齢厚生年金の受給権者が、66歳以降に繰下げの申出を行った場合、当該老齢厚生年金の繰下げ加算額は、在職老齢年金の仕組みによる支給停止の対象とはならない。
法第46条第1項
根拠条文を確認します。
(支給停止)
第四十六条 老齢厚生年金の受給権者が被保険者(略)である日(厚生労働省令で定める日を除く。)、国会議員若しくは地方公共団体の議会の議員(略)である日又は七十歳以上の使用される者(略)である日が属する月において、その者の標準報酬月額とその月以前の一年間の標準賞与額の総額を十二で除して得た額とを合算して得た額(略/「総報酬月額相当額」という。)及び老齢厚生年金の額(略)を十二で除して得た額(以下この項において「基本月額」という。)との合計額が支給停止調整額を超えるときは、その月の分の当該老齢厚生年金について、総報酬月額相当額と基本月額との合計額から支給停止調整額を控除して得た額の二分の一に相当する額に十二を乗じて得た額(以下この項において「支給停止基準額」という。)に相当する部分の支給を停止する。ただし、支給停止基準額が老齢厚生年金の額以上であるときは、老齢厚生年金の全部(同条第四項に規定する加算額を除く。)の支給を停止するものとする。厚生年金保険法
本肢は、「支給停止」に関する問題です。
65歳以降の在職老齢年金による支給停止において、
・繰下げ加算額
・経過的加算額
は、支給停止の対象ではありません。
本肢は○となり、本問の正解となります。