国民年金法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
国民年金法 令和4年第3問 A
付加年金が支給されている老齢基礎年金の受給者(65歳に達している者に限る。)が、老齢厚生年金を受給するときには、付加年金も支給される。
法第20条第1項 / 法附則第9条の2の4
根拠条文を確認します。
(併給の調整)
国民年金法
第二十条 遺族基礎年金又は寡婦年金は、その受給権者が他の年金給付(付加年金を除く。)又は厚生年金保険法による年金たる保険給付(当該年金給付と同一の支給事由に基づいて支給されるものを除く。以下この条において同じ。)を受けることができるときは、その間、その支給を停止する。老齢基礎年金の受給権者が他の年金給付(付加年金を除く。)又は同法による年金たる保険給付(遺族厚生年金を除く。)を受けることができる場合における当該老齢基礎年金及び障害基礎年金の受給権者が他の年金給付(付加年金を除く。)を受けることができる場合における当該障害基礎年金についても、同様とする。
(併給調整の特例)
国民年金法附則
第九条の二の四 第二十条第一項の規定の適用については、当分の間、同項中「遺族基礎年金又は寡婦年金」とあるのは「年金給付(老齢基礎年金及び障害基礎年金(その受給権者が六十五歳に達しているものに限る。)並びに付加年金を除く。)」と、「老齢基礎年金の受給権者」とあるのは「老齢基礎年金の受給権者(六十五歳に達している者に限る。)」と、「障害基礎年金の受給権者」とあるのは「障害基礎年金の受給権者(六十五歳に達している者に限る。)」とする。
本肢は、「併給調整」に関する問題です。
併給調整の原則は、いわゆる「1人1年金」です。
そのため、1人の人間に複数の年金受給権が発生した場合は、本人が一つのみを選択して受給するのが原則となります。
ただし、同一の支給事由による「国年法の年金」と「厚年法の年金」は併給されます。
【併給可能な組み合わせ①】
・老齢基礎年金+老齢厚生年金
・障害基礎年金+障害厚生年金
・遺族基礎年金+遺族厚生年金
またこれ以外にも、特殊な組み合わせとして、下記2つを覚えておきましょう。
【併給可能な組み合わせ②】
・障害基礎年金+老齢/遺族厚生年金(ただし65歳以上)
・老齢基礎年金+遺族厚生年金(ただし65歳以上)
ここで、問題文のケースを考えます。
上記まとめのとおり、65歳に達している老齢基礎年金の受給権者は、老齢厚生年金を併給することができます。
そして、付加年金は老齢基礎年金とセットと考えるため、付加年金も支給されることとなります。
本肢は○です。
国民年金法 令和4年第3問 B
第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間が25年以上あり、老齢基礎年金及び障害基礎年金の支給を受けたことがない夫が死亡した場合において、死亡の当時当該夫によって生計を維持し、かつ、夫との婚姻関係が10年以上継続した妻が60歳未満であるときは、寡婦年金の受給権が発生する。
法第49条第1項・第3項
根拠条文を確認します。
(支給要件)
第四十九条 寡婦年金は、死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第一号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が十年以上である夫(保険料納付済期間又は第九十条の三第一項の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係る期間以外の保険料免除期間を有する者に限る。)が死亡した場合において、夫の死亡の当時夫によつて生計を維持し、かつ、夫との婚姻関係(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)が十年以上継続した六十五歳未満の妻があるときに、その者に支給する。ただし、老齢基礎年金又は障害基礎年金の支給を受けたことがある夫が死亡したときは、この限りでない。
2 (略)
3 六十歳未満の妻に支給する寡婦年金は、第十八条第一項の規定にかかわらず、妻が六十歳に達した日の属する月の翌月から、その支給を始める。
本肢は、「寡婦年金」に関する問題です。
まず、寡婦年金の要件を確認しましょう。
●寡婦年金の要件…下記①・②を満たす場合
①死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上である夫が死亡した場合
②夫の死亡の当時夫によって生計を維持し、かつ、夫との婚姻関係が10年以上継続した65歳未満の妻がある場合
したがって、問題文のケースは受給権が発生することとなります。
ただし、上記根拠条文(法第49条第3項)のとおり、60歳未満の妻に支給する寡婦年金は、妻が60歳に達した日の属する月の翌月から、その支給が開始されることとなります。
60歳未満でも受給権は発生するが、それに基づいて実際に支給を受けるのは60歳以降…という感じですね。
本肢は○です。
国民年金法 令和4年第3問 C
脱退一時金の支給の請求に関し、最後に被保険者の資格を喪失した日に日本国内に住所を有していた者は、同日後初めて、日本国内に住所を有しなくなった日から起算して2年を経過するまでに、その支給を請求しなければならない。
法附則第9条の3の2第1項第3号
根拠条文を確認します。
(日本国籍を有しない者に対する脱退一時金の支給)
国民年金法附則
第九条の三の二 当分の間、保険料納付済期間等の月数(請求の日の前日において請求の日の属する月の前月までの第一号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間の月数、保険料四分の一免除期間の月数の四分の三に相当する月数、保険料半額免除期間の月数の二分の一に相当する月数及び保険料四分の三免除期間の月数の四分の一に相当する月数を合算した月数をいう。第三項において同じ。)が六月以上である日本国籍を有しない者(被保険者でない者に限る。)であつて、第二十六条ただし書に該当するものその他これに準ずるものとして政令で定めるものは、脱退一時金の支給を請求することができる。ただし、その者が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 日本国内に住所を有するとき。
二 障害基礎年金その他政令で定める給付の受給権を有したことがあるとき。
三 最後に被保険者の資格を喪失した日(同日において日本国内に住所を有していた者にあつては、同日後初めて、日本国内に住所を有しなくなつた日)から起算して二年を経過しているとき。
本肢は、「脱退一時金」に関する問題です。
まず、上記根拠条文に従って、脱退一時金が支給されないケースを整理しておきましょう。
●脱退一時金が支給されないケース
1. 日本国内に住所を有するとき。
2. 障害基礎年金等の受給権を有したことがあるとき。
3. 最後に被保険者の資格を喪失した日(同日において日本国内に住所を有していた者にあっては、同日後初めて、日本国内に住所を有しなくなった日)から起算して2年を経過しているとき。
問題文のケースは上記の3に該当します。
本肢は○です。
国民年金法 令和4年第3問 D
国民年金法第107条第2項に規定する障害基礎年金の加算の対象となっている子が、正当な理由がなくて、同項の規定による受診命令に従わず、又は同項の規定による当該職員の診断を拒んだときは、年金給付の支払を一時差し止めることができる。
法第72条第1項第2号
根拠条文を確認します。
第七十二条 年金給付は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、その額の全部又は一部につき、その支給を停止することができる。
一 受給権者が、正当な理由がなくて、第百七条第一項の規定による命令に従わず、又は同項の規定による当該職員の質問に応じなかつたとき。
二 障害基礎年金の受給権者又は第百七条第二項に規定する子が、正当な理由がなくて、同項の規定による命令に従わず、又は同項の規定による当該職員の診断を拒んだとき。
本肢は、「支給停止」に関する問題です。
上記根拠条文のとおり、「障害基礎年金の受給権者又子が、正当な理由がなくて、同項の規定による命令に従わず、又は同項の規定による当該職員の診断を拒んだとき」は、年金給付の全部又は一部を支給停止する、と規定されています。
問題文には「支払を一時差し止めることができる」とありますが、正しくは上記根拠条文のとおり、「支給を停止することができる」とありますので、この点が誤りとなります。
本肢は×となり、本問の正解となります。
国民年金法 令和4年第3問 E
老齢基礎年金と付加年金の受給権を有する者が障害基礎年金の受給権を取得し、障害基礎年金を受給することを選択したときは、付加年金は、障害基礎年金を受給する間、その支給が停止される。
法第47条
根拠条文を確認します。
(支給停止)
国民年金法
第四十七条 付加年金は、老齢基礎年金がその全額につき支給を停止されているときは、その間、その支給を停止する。
本肢は「付加年金」に関する問題です。
上記根拠条文のとおり、「付加年金は、老齢基礎年金がその全額につき支給を停止されているときは、その間、その支給を停止する」と規定されています。
肢Aでも記載した通り、「付加年金は老齢基礎年金とセットと考える」ため、老齢基礎年金が支給停止されている場合は、セットで付加年金も支給停止となるわけですね。
そして、肢Aで整理したように、障害基礎年金と老齢基礎年金は併給調整の対象となりますので、障害基礎年金を受給することを選択したときは、老齢基礎年金がその全額につき支給停止されます。
したがって、付加年金は、障害基礎年金を受給する間その支給が停止されることになります。
本肢は○です。