社会保険労務士試験【健康保険法】<令和3年第1問>

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健康保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

健康保険法 令和3年第1問 A

一時帰休に伴い、就労していたならば受けられるであろう報酬よりも低額な休業手当が支払われることとなり、その状態が継続して3か月を超える場合には、固定的賃金の変動とみなされ、標準報酬月額の随時改定の対象となる。

解答の根拠

昭和50年3月29日保険発25号 / 庁保険発8号

肢Aは、「一時帰休をし、休業手当の支給が続いた場合の標準報酬の取り扱い」について問われています。

随時改定の内容は基本的な内容ですので、社労士試験を目指されている皆さんであればばっちりなはずです(うんうん…とならなかった方は、今すぐにテキストを見直しましょう!まだ大丈夫です!)

さて、問題文を読んでおそらく多くの方が、「理由はともあれ、実際の報酬よりも低額な手当てが支給されている状態なのであれば、その状態に合わせて標準報酬月額も変えてあげないとかわいそうじゃないなか…」と思われるはずです。

そこで、根拠となる通達を確認します。

一時帰休等の措置がとられた場合における健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格及び標準報酬の取扱いについて

2 標準報酬の取扱い
(1)  一時帰休の場合
イ 随時改定
一時帰休に伴い、就労していたならば受けられるであろう報酬よりも低額な休業手当等が支払われることとなつた場合は、これを固定的賃金の変動とみなし、随時改定の対象とすること。ただし、当該報酬のうち固定的賃金が減額され支給される場合で、かつ、その状態が継続して三か月を超える場合に限るものであること。

昭和50年3月29日保険発25

ということで、当初の見立ての通りの結論のようですね。

もちろん随時改定なので、一時的に報酬が減ったのではなく、減った状態が一定期間(3ヶ月超)続いていることが求められています。

随時改定が何のために行われるのか…という趣旨を理解していれば、少し変化球を投げられても対応できますね。

本肢は○です。

健康保険法 令和3年第1問 B

賃金が月末締め月末払いの事業所において、2月19日から一時帰休で低額な休業手当等の支払いが行われ、5月1日に一時帰休の状況が解消した場合には、2月、3月、4月の報酬を平均して2等級以上の差が生じていれば、5月以降の標準報酬月額から随時改定を行う。

解答の根拠

令和3年4月1日事務連絡(標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集)

本肢も、一時帰休と随時改定に関する問題です。

一時帰休の状態になり低額な手当が支給されることになった場合に随時改定が行われることは、肢Aにて確認をしました。

肢Aでも触れた随時改定の要件である「3ヶ月を超えている」状態か否かが、本肢の論点となっています。

問題文のキーワードは「5月1日に一時帰休の状況が解消」という部分。

5月1日に一時帰休の状態が解消されたということは、一時帰休の状態だったのは前日の4月30日までとうことになります。

そうなると、随時改定の対象となるのは2月(2月19日から一時帰休の状態、となっていますが、下記のに引用した事例集にあるように、月単位でカウントします)・3月・4月の3ヶ月ぴったりとなり、「3ヶ月を超える」状態ではないことがわかります。

今回の問題のベースとなっていると思われる、下記の事例集でも、「随時改定は行わない」という結論となっています。

○一時帰休における標準報酬月額の決定・改定について
(2)随時改定について
問2 一時帰休に伴う随時改定は、低額な休業手当等の支払いが継続して3か月を超える場合に行うこととなるが、いつの時点から3か月を起算するのか。

(答) 3か月は暦日ではなく、月単位で計算する。例えば、月末締め月末払いの事業所において一時帰休の開始日を2月10日とした場合は、5月1日をもって「3か月を超える場合」に該当し、2・3・4月の報酬を平均して2等級以上の差が生じていれば、5月以降の標準報酬月額から随時改定する。なお、5月1日時点で一時帰休の状況が解消している場合には、3か月を超えないため、随時改定は行わない。

標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集

本肢は×で、本問の正解になります。

健康保険法 令和3年第1問 C

その年の1月から6月までのいずれかの月に随時改定された標準報酬月額は、再度随時改定、育児休業等を終了した際の標準報酬月額の改定又は産前産後休業を終了した際の標準報酬月額の改定を受けない限り、その年の8月までの標準報酬月額となり、7月から12月までのいずれかの月に改定された標準報酬月額は、再度随時改定、育児休業等を終了した際の標準報酬月額の改定又は産前産後休業を終了した際の標準報酬月額の改定を受けない限り、翌年の8月までの標準報酬月額となる。

解答の根拠

法43条2項

根拠条文を確認します。

(改定)
第四十三条 保険者等は、被保険者が現に使用される事業所において継続した三月間(各月とも、報酬支払の基礎となった日数が、十七日以上でなければならない。)に受けた報酬の総額を三で除して得た額が、その者の標準報酬月額の基礎となった報酬月額に比べて、著しく高低を生じた場合において、必要があると認めるときは、その額を報酬月額として、その著しく高低を生じた月の翌月から、標準報酬月額を改定することができる。
 前項の規定によって改定された標準報酬月額は、その年の八月(七月から十二月までのいずれかの月から改定されたものについては、翌年の八月)までの各月の標準報酬月額とする

健康保険法

本肢は随時改定の基本中の基本ですので、落とさないようにしましょう。

随時改定で決定された標準報酬月額は、いつまで有効か、というルールの確認です。
①その年の前半(1~6月)に改定があった→その年の8月まで
②その年の後半(7~12月)に改定があった→翌年の8月まで

となりますので、しっかりとおさえておきましょう。

本肢は○です。

健康保険法 令和3年第1問 D

前月から引き続き被保険者であり、12月10日に賞与を50万円支給された者が、同月20日に退職した場合、事業主は当該賞与に係る保険料を納付する義務はないが、標準賞与額として決定され、その年度における標準賞与額の累計額に含まれる。

解答の根拠

法45条1項 / 法156条3項

本肢は、
①賞与に係る保険料
②標準賞与額の累計額
を分けて考える必要があります

まず①について、根拠条文を確認します。

(被保険者の保険料額)
第百五十六条 
 前二項の規定にかかわらず、前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合においては、その月分の保険料は、算定しない。

健康保険法

通常の月額保険料も、賞与の保険料も、退職した月分の保険料は上記のとおり納付する義務はありません。

次に②について、根拠条文を確認します。

(標準賞与額の決定)
第四十五条 保険者等は、被保険者が賞与を受けた月において、その月に当該被保険者が受けた賞与額に基づき、これに千円未満の端数を生じたときは、これを切り捨てて、その月における標準賞与額を決定する。ただし、その月に当該被保険者が受けた賞与によりその年度(毎年四月一日から翌年三月三十一日までをいう。以下同じ。)における標準賞与額の累計額が五百七十三万円(第四十条第二項の規定による標準報酬月額の等級区分の改定が行われたときは、政令で定める額。以下この項において同じ。)を超えることとなる場合には、当該累計額が五百七十三万円となるようその月の標準賞与額を決定し、その年度においてその月の翌月以降に受ける賞与の標準賞与額は零とする。

健康保険法

上記によると、
・賞与を受けた月→その月における標準賞与額を決定
とあります。

つまり、①のとおり保険料を支払う必要はありませんが、②については賞与支払届の中に含めて届け出る必要があるということになります。

これは実務でもよく誤りが見られるポイントです。

保険料を支払わないのであれば、届け出もしなくても良いのでは…と思ってしまいますよね。

本肢は○です。

健康保険法 令和3年第1問 E

訪問看護事業とは、疾病又は負傷により、居宅において継続して療養を受ける状態にある者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)に対し、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者が行う療養上の世話又は必要な診療の補助(保険医療機関等又は介護保険法第8条第28項に規定する介護老人保健施設若しくは同条第29項に規定する介護医療院によるものを除く。)を行う事業のことである。

解答の根拠

法88条1項

根拠条文を確認します。

(訪問看護療養費)
第八十八条 被保険者が、厚生労働大臣が指定する者(以下「指定訪問看護事業者」という。)から当該指定に係る訪問看護事業(疾病又は負傷により、居宅において継続して療養を受ける状態にある者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)に対し、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者が行う療養上の世話又は必要な診療の補助(保険医療機関等又は介護保険法第八条第二十八項に規定する介護老人保健施設若しくは同条第二十九項に規定する介護医療院によるものを除く。以下「訪問看護」という。)を行う事業をいう。)を行う事業所により行われる訪問看護(以下「指定訪問看護」という。)を受けたときは、その指定訪問看護に要した費用について、訪問看護療養費を支給する。

健康保険法

上記根拠条文はかっこがきが多いですが、黄色マーカーの部分だけ読んでいただければ、問題文と同じ内容になっていますね。

訪問看護事業の説明に関する問題で、条文の通りとなります。

本肢は○です。

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