社会保険労務士試験【雇用保険法/徴収法】<令和3年第2問>

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未支給の失業等給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

雇用保険法/徴収法 令和3年第2問 A

死亡した受給資格者に配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)及び子がいないとき、死亡した受給資格者と死亡の当時生計を同じくしていた父母は未支給の失業等給付を請求することができる

解答の根拠

法10条の3第1項・2項

本問全体のテーマは「未支給の失業等給付」です。

難易度としては基本的だと思いますので、確実に正解しましょう。

まずは肢Aです。

根拠法令を確認します。

(未支給の失業等給付)
第十条の三 失業等給付の支給を受けることができる者が死亡した場合において、その者に支給されるべき失業等給付でまだ支給されていないものがあるときは、その者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の失業等給付の支給を請求することができる。

 前項の規定による未支給の失業等給付の支給を受けるべき者の順位は、同項に規定する順序による。

雇用保険法

失業等給付を受けることができる者が、何かしらの原因でその給付を受ける前に亡くなってしまった場合、その給付はどうなるのでしょうか。

亡くなってしまったのであれば、そのまま自然消滅…となりそうですが、実際は遺族に対して支給されることとなります。

そして、遺族がたった一人であれば話はシンプルですが、通常は何人か存在します。

そのため、どの遺族に支給されるのか、優先順位・順番が大切であり、法律ではそれについてしっかりと規定されています。

上記の条文のポイントをまとめると、以下のようになります。

●未支給の失業等給付の支給を受けるべき者の順位
①配偶者(事実婚含む)
②子
③父母
④祖父母
⑤兄弟姉妹

問題文には、上記①の配偶者、および②子がいない場合は、③父母が請求できる、と書いてあり、条文の順番の通りです。

本肢は○となり、本問の正解となります。

雇用保険法/徴収法 令和3年第2問 B

失業等給付の支給を受けることができる者が死亡した場合において、未支給の失業等給付の支給を受けるべき順位にあるその者の遺族は、死亡した者の名でその未支給の失業等給付の支給を請求することができる。

解答の根拠

法10条の3第1項

本肢も、前述Aと同じ根拠条文となります。

念のため、再掲します。

(未支給の失業等給付)
第十条の三 失業等給付の支給を受けることができる者が死亡した場合において、その者に支給されるべき失業等給付でまだ支給されていないものがあるときは、その者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の失業等給付の支給を請求することができる。

雇用保険法

未支給の失業等給付を請求する場合は、上記のように「自己の名で」請求することとなっています。

配偶者なら配偶者の名で、子であれば子の名で請求する。

失業等給付自体は亡くなった方の権利ですが、もちろん亡くなった方は自分のために当該給付を請求することはできません。

その権利を引き継いだ遺族が「自分の権利」として「自己の名で」請求をする…ということになります。

本肢は×です。

雇用保険法/徴収法 令和3年第2問 C

正当な理由がなく自己の都合によって退職したことにより基本手当を支給しないこととされた期間がある受給資格者が死亡した場合、死亡した受給資格者の遺族の請求により、当該基本手当を支給しないこととされた期間中の日に係る未支給の基本手当が支給される。

解答の根拠

行政手引53103

本肢にある「正当な理由がなく自己の都合によって退職したことにより基本手当を支給しないこととされた期間」というのは、一般的には「待機期間」と言われています。

つまり、「待機期間中に死亡した場合に、遺族が未支給の基本手当を請求できるのか」という論点の問題になります。

本肢の根拠は、行政手引き(正式には「雇用保険に関する業務取扱要領」)となります。

該当部分を準用します。

53103 (3)未支給失業等給付の支給対象日
イ 未支給失業等給付のうち、死亡者が死亡したため所定の認定日に安定所に出頭し失業の認定を受けることができなかった基本手当については、当該未認定の日について失業の認定をした上支給される。
したがって、次に掲げる日等本来受給資格者が死亡していなくても失業の認定を受けることができない日については支給されない。
(イ)法第21条の待機中の日
(ロ)法第32条第1項若しくは第2項又は法第33条第1項の規定により基本手当を支給しないこととされた期間中の日
(ハ)法第19条の規定により基本手当を支給しないこととされた日

雇用保険に関する業務取扱要領

上記によれば…

(イ)法第21条→7日間の待機期間中
(ロ)法32条→給付制限期間中(訓練・指導を受けない)/法33条→給付制限期間中(自己の責めによる解雇・自己都合退職)
(ハ)法19条→自己の労働によって収入を得たために、基本手当を支給しないこととされた日

については、未支給の失業等給付の請求ができない、となります。

問題文には、「正当な理由がなく自己の都合によって退職したことにより基本手当を支給しないこととされた期間」とありますので、上記の(ロ)に該当することとなり、未支給の失業等給付の請求ができません。

本肢は×となります。

雇用保険法/徴収法 令和3年第2問 D

死亡した受給資格者が、死亡したため所定の認定日に公共職業安定所に出頭し失業の認定を受けることができなかった場合、未支給の基本手当の支給を請求する者は、当該受給資格者について失業の認定を受けたとしても、死亡直前に係る失業認定日から死亡日までの基本手当を受けることができない。

解答の根拠

法31条1項、行政手引53101

本肢は、受給資格者が死亡した場合、失業認定が受けられなかった分の基本手当は、請求者である遺族が代わりに失業認定を受けたらもらえるのかもらえないのか、という論点になります。

受給資格者本人は死亡しているので、もちろんもう失業認定を受けることはできません。

代わりに遺族が失業認定を受けることができるのでしょうか。

この点、先ほどから引用している行政手引きには、以下のように書かれています。

53101 (1)概要
イ【略】
ロ この場合において、遺族は受給資格者が既に失業の認定、又は基本手当以外の失業等給付の支給要件に該当することの認定を受けた後に死亡した場合には、当該既認定に係る失業等給付の支給を請求することができるのはもちろん、未認定の失業等給付についても支給を請求することができるが、この場合には当該死亡者について、死亡したため失業の認定を受けることができなかった期間についての失業の認定又は基本手当以外の失業等給付の支給要件に該当することの認定を受けなければならない

雇用保険に関する業務取扱要領

行政手引きには「当該死亡者について、死亡したため失業の認定を受けることができなかった期間についての失業の認定又は基本手当以外の失業等給付の支給要件に該当することの認定を受けなければならない」とあります。

裏を返せば、「失業の認定を受ければ、未支給の失業等給付を請求をすることができる」と解釈できます。

問題文の語尾には「…失業の認定を受けたとしても、死亡直前に係る失業認定日から死亡日までの基本手当を受けることができない。」とありますので、誤りとなります。

本肢は×となります。

雇用保険法/徴収法 令和3年第2問 E

受給資格者の死亡により未支給の失業等給付の支給を請求しようとする者は、当該受給資格者の死亡の翌日から起算して3か月以内に請求しなければならない。

解答の根拠

則17条の2第1項、行政手引53105

本肢は、未支給の失業等給付の請求期限に関して問われています。

根拠法令を確認します。

(未支給失業等給付の請求手続)
第十七条の二

法第十条の三第一項の規定による失業等給付の支給を請求しようとする者(以下「未支給給付請求者」という。)は、死亡した受給資格者、高年齢受給資格者、特例受給資格者、日雇受給資格者又は就職促進給付、教育訓練給付金若しくは雇用継続給付の支給を受けることができる者(以下この節において「受給資格者等」という。)が死亡した日の翌日から起算して六箇月以内に、未支給失業等給付請求書(様式第十号の四)に当該受給資格者等の死亡の事実及び死亡の年月日を証明することができる書類、未支給給付請求者と死亡した受給資格者等との続柄を証明することができる書類並びに未支給給付請求者が死亡した受給資格者等と生計を同じくしていたことを証明することができる書類を添えて死亡者に係る公共職業安定所の長に提出しなければならない。

雇用保険法施行規則

未支給の失業等給付の請求は、「当該受給資格者の死亡の翌日から起算して6か月以内に請求しなければならない。」とされており、「3ヶ月」としている本問は誤りとなります。

本肢は×となります。

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