有期事業の一括に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第10問 A
有期事業の一括が行われるには、当該事業の概算保険料の額(労働保険徴収法第15条第2項第1号又は第2号の労働保険料を算定することとした場合における当該労働保険料の額)に相当する額が160万円未満でなければならない。
法7条 / 則6条1項
まずは根拠法令を確認します。
(有期事業の一括)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
第七条 二以上の事業が次の要件に該当する場合には、この法律の規定の適用については、その全部を一の事業とみなす。
一 事業主が同一人であること。
二 それぞれの事業が、事業の期間が予定される事業(以下「有期事業」という。)であること。
三 それぞれの事業の規模が、厚生労働省令で定める規模以下であること。
四 それぞれの事業が、他のいずれかの事業の全部又は一部と同時に行なわれること。
五 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める要件に該当すること。
(有期事業の一括)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則
第六条 法第七条第三号の厚生労働省令で定める規模以下の事業は、次の各号に該当する事業とする。
一 当該事業について法第十五条第二項第一号又は第二号の労働保険料を算定することとした場合における当該労働保険料の額に相当する額が百六十万円未満であること。
二 立木の伐採の事業にあつては、素材の見込生産量が千立方メートル未満であり、立木の伐採の事業以外の事業にあつては、請負金額が一億八千万円未満であること。
本肢は基本事項なので、確実に解答したいところです。
ここで念のため、有期事業の一括の条件を以下にまとめます。
建設の事業 | 立木の伐採の事業 |
---|---|
請負金額が1億8000万円未満 | 素材の見込生産量が1000立方メートル未満 |
概算保険料相当額が160万円未満 | 概算保険料相当額が160万円未満 |
上記の通り、有期事業の一括には「概算保険料相当額が160万円未満」という条件を満たす必要があります。
本肢は○です。
労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第10問 B
有期事業の一括が行われる要件の一つとして、それぞれの事業が、労災保険に係る保険関係が成立している事業であり、かつ建設の事業又は立木の伐採の事業であることが定められている。
法7条 / 則6条2項1号
根拠条文を確認します。
(有期事業の一括)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
第七条 二以上の事業が次の要件に該当する場合には、この法律の規定の適用については、その全部を一の事業とみなす。
一 事業主が同一人であること。
二 それぞれの事業が、事業の期間が予定される事業(以下「有期事業」という。)であること。
三 それぞれの事業の規模が、厚生労働省令で定める規模以下であること。
四 それぞれの事業が、他のいずれかの事業の全部又は一部と同時に行なわれること。
五 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める要件に該当すること。
(有期事業の一括)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則
第六条
2 法第七条第五号の厚生労働省令で定める要件は、次のとおりとする。
一 それぞれの事業が、労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち、建設の事業であり、又は立木の伐採の事業であること。
二 それぞれの事業が、事業の種類(別表第一に掲げる事業の種類をいう。以下同じ。)を同じくすること。
三 それぞれの事業に係る労働保険料の納付の事務が一の事務所で取り扱われること。
本肢も肢Aに続き基本事項なので、確実に解答したいところです。
法7条で有期事業の一括の条件として別途定めると規定し、それを受けての則6条2項1号で
・労災保険に係る保険関係か成立している事業
・建設の事業 or 立木の伐採の事業
と規定しています。
本肢は○です。
労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第10問 C
建設の事業に有期事業の一括が適用されるには、それぞれの事業の種類を同じくすることを要件としているが、事業の種類が異なっていたとしても、労災保険率が同じ事業は、事業の種類を同じくするものとみなして有期事業の一括が適用される。
法7条 / 則6条2項2号
根拠条文を確認します。
(有期事業の一括)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
第七条 二以上の事業が次の要件に該当する場合には、この法律の規定の適用については、その全部を一の事業とみなす。
一 事業主が同一人であること。
二 それぞれの事業が、事業の期間が予定される事業(以下「有期事業」という。)であること。
三 それぞれの事業の規模が、厚生労働省令で定める規模以下であること。
四 それぞれの事業が、他のいずれかの事業の全部又は一部と同時に行なわれること。
五 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める要件に該当すること。
(有期事業の一括)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則
第六条
2 法第七条第五号の厚生労働省令で定める要件は、次のとおりとする。
一 それぞれの事業が、労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち、建設の事業であり、又は立木の伐採の事業であること。
二 それぞれの事業が、事業の種類(別表第一に掲げる事業の種類をいう。以下同じ。)を同じくすること。
三 それぞれの事業に係る労働保険料の納付の事務が一の事務所で取り扱われること。
条文構成としては、肢Bと同じく、法7条で有期事業の一括の条件として別途定めると規定し、それを受けての則6条2項2号で「それぞれの事業が、事業の種類(別表第一に掲げる事業の種類をいう。以下同じ。)を同じくすること」と規定しています。
この部分は、肢Cの前段部分に該当します。
しかし、肢Cの後段部分にある「事業の種類が異なっていたとしても、労災保険率が同じ事業は、事業の種類を同じくするものとみなして有期事業の一括が適用される」とは条文のどこを見ても規定されていません。
冷静に考えれば、労災保険料率が同じだからとって、例えば「舗装工事業」と「鉄道又は軌道新設事業」(ともに、労災保険料率が1000分の9)を有期一括する…というのは強引ですよね。
本肢は×となり、本問の正解となります。
労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第10問 D
同一人がX株式会社とY株式会社の代表取締役に就任している場合、代表取締役が同一人であることは、有期事業の一括が行われる要件の一つである「事業主が同一人であること」に該当せず、有期事業の一括は行われない。
法7条
根拠条文を確認します。
(有期事業の一括)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
第七条 二以上の事業が次の要件に該当する場合には、この法律の規定の適用については、その全部を一の事業とみなす。
一 事業主が同一人であること。
二 それぞれの事業が、事業の期間が予定される事業(以下「有期事業」という。)であること。
三 それぞれの事業の規模が、厚生労働省令で定める規模以下であること。
四 それぞれの事業が、他のいずれかの事業の全部又は一部と同時に行なわれること。
五 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める要件に該当すること。
問題文にはある「代表取締役」と、法7条の「事業主」は同じ概念なのでしょうか。
実は、法7条の「事業主」というのは、法人(会社)そのものを指し、代表取締役ではない、とされています。
したがって、X株式会社とY株式会社は、代表取締役が同一人物であったとしても、法人格が別個ですので、法7条に規定されている「事業主が同一人であること」には該当しません。
本肢は○となります。
労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第10問 E
X会社がY会社の下請として施工する建設の事業は、その事業の規模及び事業の種類が有期事業の一括の要件を満たすものであっても、X会社が元請として施工する有期事業とは一括されない。
法8条
本肢は慎重に読み解く必要があります。
まずは、
・Y会社…元請会社
・X会社…Y会社の下請け会社
と正確に読み取りましょう。
試験中に焦っていると、アルファベットの順番から、感覚的にX会社の方が元請会社と早とちりしてしまいがちですので、注意が必要です。
以上を踏まえて、根拠条文を確認します。
(請負事業の一括)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
第八条 厚生労働省令で定める事業が数次の請負によつて行なわれる場合には、この法律の規定の適用については、その事業を一の事業とみなし、元請負人のみを当該事業の事業主とする。
上記法8条によると、数字の請負の事業は、元請負人のみを事業主とする、としています。
ということは、問題文における元請負人というのは、「Y会社」となりますので、「Y会社が元請となる請負事業の一括」となり、「一括されない」と締めくくっている本肢は正しい、となります。
本肢は○となります。