被保険者資格の有無の判断に係る所定労働時間の算定に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
雇用保険法/徴収法 令和3年第1問 A
雇用契約書等により1週間の所定労働時間が定まっていない場合やシフト制などにより直前にならないと勤務時間が判明しない場合、勤務実績に基づき平均の所定労働時間を算定する。
法6条1号、行政手引20303
本問は全般的に「被保険者資格の有無の判断」について問われています。
まず、各肢の内容に入る前に、被保険者資格に関する基本事項を確認しておきましょう。
【雇用保険の被保険者】
下記の条件を満たす場合は、原則被保険者となる
① 1 週間の所定労働時間が 20 時間以上、かつ、② 31 日以上の雇用見込みがある場合
そこで、肢Aの問題文に移ります。
上記の被保険者の条件の①にある「所定労働時間」の解釈として、1週間の所定労働時間が定まっていない、または、シフト制などで安定的でない場合は、どのようにして20時間以上と判断するかが難しいところです。
本肢では、その判断基準として「勤務実績」、つまり実際に働いた時間の平均を見て、20時間以上となるかどうかを判断する…と記載があり、これが正しいかどうか、となります。
この点は、法令には直接規定されておりません。
しかし、一般企業でもよくある「マニュアル」的なものとして、「業務取扱要領(行政手引)」というものがあり、その中に以下のように規定されています。
20303(3)被保険者とならない者
雇用保険に関する業務取扱要領
イ 1 週間の所定労働時間が 20 時間未満である者(法第 6 条第 1 号)
…雇用契約書等により1週間の所定労働時間が定まっていない場合やシフト制などにより直前にならないと勤務時間が判明しない場合については、勤務実績に基づき平均の所定労働時間を算定すること。…
ということで、問題文のとおり、勤務時間が一定でない場合は実績に基づいて判断する、ということになります。
よく考えてみれば当たり前ですが、勤務時間の予測が立てられない・毎週バラバラ、という場合は、実際働いてみてどうか、というのを確認するしか手段はないですよね。
本肢は○です。
雇用保険法/徴収法 令和3年第1問 B
所定労働時間が1か月の単位で定められている場合、当該時間を12分の52で除して得た時間を1週間の所定労働時間として算定する。
法6条1号、行政手引20303
本肢も、同じ業務取扱要領からの出題になります。
問題文に関連する内容として、以下が規定されています。
20303(3)被保険者とならない者
雇用保険に関する業務取扱要領
イ 1 週間の所定労働時間が 20 時間未満である者(法第 6 条第 1 号)
…所定労働時間が 1 か月の単位で定められている場合には、当該時間を 12 分の 52 で除して得た時間を 1 週間の所定労働時間とする。…
ということで、問題文の内容がそのまま書かれております。
ちなみに、12分の52というのは、分数の割り算→分母と分子を入れ替えて掛け算する…ということですので、
【1ヶ月の所定労働時間】×12 … 1ヶ月単位の所定労働時間を1年単位にする ー①
① ÷ 52 … 1年単位の所定労働時間時間を週単位に直す
という計算をすることになります。
1ヶ月は4週間近い月であったり、5週に近い月もありバラバラですので、1年単位で平均しているわけですね。
本肢は○です。
雇用保険法/徴収法 令和3年第1問 C
1週間の所定労働時間算定に当たって、4週5休制等の週休2日制等1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動し、通常の週の所定労働時間が一通りでないとき、1週間の所定労働時間は、それらの加重平均により算定された時間とする。
法6条1号、行政手引20303
本肢も、同じ業務取扱要領からの出題になります。
問題文に関連する内容として、以下が規定されています。
20303(3)被保険者とならない者
雇用保険に関する業務取扱要領
イ 1 週間の所定労働時間が 20 時間未満である者(法第 6 条第 1 号)
…4 週 5 休制等の週休 2 日制等 1 週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動し、通常の
週の所定労働時間が一通りでないときは、1 週間の所定労働時間は、それらの平均(加重平均)により算定された時間とし…
ということで、問題文の内容がそのまま書かれております。
本肢は○です。
雇用保険法/徴収法 令和3年第1問 D
労使協定等において「1年間の所定労働時間の総枠は〇〇時間」と定められている場合のように、所定労働時間が1年間の単位で定められている場合は、さらに、週又は月を単位として所定労働時間が定められている場合であっても、1年間の所定労働時間の総枠を52で除して得た時間を1週間の所定労働時間として算定する。
法6条1号、行政手引20303
本肢も、同じ業務取扱要領からの出題になります。
問題文に関連する内容として、以下が規定されています。
20303(3)被保険者とならない者
雇用保険に関する業務取扱要領
イ 1 週間の所定労働時間が 20 時間未満である者(法第 6 条第 1 号)
…なお、労使協定等において「1 年間の所定労働時間の総枠は○○時間」と定められている場合のように、所定労働時間が 1 年間の単位で定められている場合であっても、さらに、週又は月を単位として所定労働時間が定められている場合には、上記によらず、当該週又は月を単位として定められた所定労働時間により 1 週間の所定労働時間を算定すること…
問題文を落ち着いて読み解いてみます。
①所定労働時間が1年単位で定められている場合
さらに
②週又は月単位で所定労働時間が定められている場合
→①と②、どちらを優先するか、ということをきいているわけですね。
問題文には、「1年間の所定労働時間の総枠を52で除して得た時間を1週間の所定労働時間として算定する。」とあり、①の方を優先するとしています。
一方、上記で引用した業務取扱要領では「当該週又は月を単位として定められた所定労働時間により 1 週間の所定労働時間を算定する」とあり、②の方を優先するとしています。
ということで、問題文の業務取扱要領の記載に相違がありますね。
確かに、1年間の総枠で所定労働時間を判断するより、年よりも月、月よりも週で定められている方を優先させた方が、より「週の所定労働時間」に近しい数字になりますよね。
本肢は×となり、本問の正解となります。
雇用保険法/徴収法 令和3年第1問 E
雇用契約書等における1週間の所定労働時間と実際の勤務時間に常態的に乖離がある場合であって、当該乖離に合理的な理由がない場合は、原則として実際の勤務時間により1週間の所定労働時間を算定する。
法6条1号、行政手引20303
本肢も、同じ業務取扱要領からの出題になります。
問題文に関連する内容として、以下が規定されています。
20303(3)被保険者とならない者
雇用保険に関する業務取扱要領
イ 1 週間の所定労働時間が 20 時間未満である者(法第 6 条第 1 号)
…また、雇用契約書等における1週間の所定労働時間と実際の勤務時間に常態的に乖離がある場合であって、当該乖離に合理的な理由がない場合は、原則として実際の勤務時間により判断する。…
ということで、問題文の内容がそのまま書かれております。
例えば、1週間の所定労働時間は16時間となっているのに、実際は、働き始めたらガンガン働いてしまって、気が付いた週30時間という働き方が常態化している…ということがあるのかどうかわかりませんが、もし実際にそういう状況になったら、実態である30時間を基準にして雇用保険に加入させてあげないとかわいそうですよね。
本肢は○となります。