社会保険労務士試験【労働者災害補償保険法/徴収法】<令和3年第7問>

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上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準(平成 9 年 2 月 3 日付け基発第 65 号)によれば、⑴上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後に発症したものであること、⑵発症前に過重な業務に就労したこと、⑶過重な業務への就労と発症までの経過が、医学上妥当なものと認められることのいずれの要件も満たし、医学上療養が必要であると認められる上肢障害は、労働基準法施行規則別表第 1 の 2 第 3 号 4 又は 5 に該当する疾病として取り扱うこととされている。この認定要件の運用基準又は認定に当たっての留意事項に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第7問 A

「相当期間」とは原則として6か月程度以上をいうが、腱鞘炎等については、作業従事期間が6か月程度に満たない場合でも、短期間のうちに集中的に過度の負担がかかった場合には、発症することがあるので留意することとされている。

解答の根拠

上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準(平成9年2月3日基発65号)

本問はすべて、上記解答の根拠に示している「上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準」に基づく出題となります。

厚生労働省の原文のリンクをつけておきました。

あまり長くないドキュメントなので、一読されても良いかもしれません。

正直申し上げて、私は本解説を書くまで、この認定基準の存在を知りませんでした。

そして、おそらく(推測の域を超えませんが)出題者も、この認定基準を受験生がしっかりチェック・頭に入れていることを期待して出題しているとは思えません。

なので、個人的には「捨て問」の扱いで良いかな…と思います。

なお、私が「捨て問」と表現するのは、鉛筆を転がして適当に答える…という意味ではなく、一応各肢をしっかり読んで、自分で「これかな…」と回答をしたら、もう悩まずに次へ行く!という意味で使っています。

知らないことをあーでもないこーでもないと悩んでいる時間があるのであれば、さっと解いて次へ進む…という戦略です。

本番はそのような対応で良いですが、本ブログは解説が目的ですので、以下、しっかりと解説していきます。

さて、本肢では、「相当期間」の定義について問われています。

認定基準を確認すると、以下の記述があります。

第2 認定要件の運用基準
2 「相当期間」とは、1週間とか10日間という極めて短期的なものではなく、原則として6か月程度以上をいう。

第3 認定に当たっての留意事項
4 上肢障害の発症までの作業従事期間について
上肢障害の発症までの作業従事期間については、原則として6か月程度以上としたが、腱鞘炎等については、作業従事期間が6か月程度に満たない場合でも、短期間のうちに集中的に過度の負担がかかった場合には、発症することがあるので留意すること。

上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準(平成9年2月3日基発65号)

上記を整理すると…
・「相当期間」とは、原則として「6か月程度以上」
・ただし、腱鞘炎等については、6か月程度に満たない場合でも発症することがある

となります。

したがって、本肢の記載の通りとなりますので、本肢は○です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第7問 B

業務以外の個体要因(例えば年齢、素因、体力等)や日常生活要因(例えば家事労働、育児、スポーツ等)をも検討した上で、上肢作業者が、業務により上肢を過度に使用した結果発症したと考えられる場合に、業務に起因することが明らかな疾病として取り扱うものとされている。

解答の根拠

上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準(平成9年2月3日基発65号)

本肢では、業務上疾病の認定基準として、個体要因や日常生活要因を検討するか否か、が問われています。

認定基準を確認すると、以下の記述があります。

第3 認定に当たっての留意事項
1 認定に当たっての基本的な考え方について
上肢作業に伴う上肢等の運動器の障害は、加齢や日常生活とも密接に関連しており、その発症には、業務以外の個体要因(例えば年齢、素因、体力等)や日常生活要因(例えば家事労働、育児、スポーツ等)が関与している。
また、上肢等に負担のかかる作業と同様な動作は、日常生活の中にも多数存在している。
したがって、これらの要因をも検討した上で、上肢作業者が、業務により上肢を過度に使用した結果発症したと考えられる場合には、業務に起因することが明らかな疾病として取り扱うものである。

上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準(平成9年2月3日基発65号)

上記を整理すると…
・業務以外の個体要因や日常生活要因を検討したうえで、業務により発症したと考えられる場合には、業務上疾病として取り扱う
となります。

したがって、本肢の記載の通りとなりますので、本肢は○です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第7問 C

上肢障害には、加齢による骨・関節系の退行性変性や関節リウマチ等の類似疾病が関与することが多いことから、これが疑われる場合には、専門医からの意見聴取や鑑別診断等を実施することとされている。

解答の根拠

上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準(平成9年2月3日基発65号)

本肢では、上肢障害につき、退行性変性や類似疾病が疑われる場合は、専門医の意見聴取・鑑別診断等を実施するかどうか、が問われています。

認定基準を確認すると、以下の記述があります。

第3 認定に当たっての留意事項
5 類似疾病との鑑別について
上肢障害には、加齢による骨・関節系の退行性変性や関節リウマチ等の類似疾病が関与することが多いことから、これが疑われる場合には、専門医からの意見聴取や鑑別診断等を実施すること。

上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準(平成9年2月3日基発65号)

こちらは、認定基準の記載そのままとなりますので、本肢は○です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第7問 D

「上肢等に負担のかかる作業」とは、⑴上肢の反復動作の多い作業、⑵上肢を上げた状態で行う作業、⑶頸部、肩の動きが少なく、姿勢が拘束される作業、⑷上肢等の特定の部位に負担のかかる状態で行う作業のいずれかに該当する上肢等を過度に使用する必要のある作業をいうとされている。

解答の根拠

上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準(平成9年2月3日基発65号)

本肢では、「上肢等に負担のかかる作業」に関して具体的事例を挙げて、それらが該当するかどうかが問われています。

認定基準を確認すると、以下の記述があります。

第2 認定要件の運用基準
1 「上肢等に負担のかかる作業」とは、次のいずれかに該当する上肢等を過度に使用する必要のある作業をいう。
(1) 上肢の反復動作の多い作業
(2) 上肢を上げた状態で行う作業
(3) 頸部、肩の動きが少なく、姿勢が拘束される作業
(4) 上肢等の特定の部位に負担のかかる状態で行う作業

上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準(平成9年2月3日基発65号)

上記に挙げられている4つの具体的事例と、本肢に挙げられている内容が同じであることがわかります。

したがって、本肢の記載の通りとなりますので、本肢は○です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第7問 E

一般に上肢障害は、業務から離れ、あるいは業務から離れないまでも適切な作業の指導・改善等を行い就業すれば、症状は軽快し、また、適切な療養を行うことによっておおむね1か月程度で症状が軽快すると考えられ、手術が施行された場合でも一般的におおむね3か月程度の療養が行われれば治ゆするものと考えられるので留意することとされている。

解答の根拠

上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準(平成9年2月3日基発65号)

本肢は、上肢障害の治ゆ期間について問われています。

認定基準を確認すると、以下の記述があります。

第3 認定に当たっての留意事項
6 その他
一般に上肢障害は、業務から離れ、あるいは業務から離れないまでも適切な作業の指導・改善等を行い就業すれば、症状は軽快する。
また、適切な療養を行うことによって概ね3か月程度で症状が軽快すると考えられ、手術が施行された場合でも一般的におおむね6か月程度の療養が行われれば治ゆするものと考えられるので留意すること。

上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準(平成9年2月3日基発65号)

上記を整理すると…
・適切な療養…概ね3か月程度で症状軽快
・手術施行時…概ね6か月程度で治ゆ

となります。

したがって、本肢の「1か月・3か月」は誤りですので、本肢は×となり本肢の正解となります。

本問は、解答根拠となっている認定基準を知っていれば、確実に正解できる問題です。しかし、冒頭にも書いた通り、そもそもこの認定基準を押さえている受験生がどれだけいるのか…少ないのではないか、というのが個人的な感覚です。また、仮に本認定基準の存在を知っていた・読んだことがある、という受験生でも、その内容がしっかりと頭に入っているか、という点では怪しいと思います。

今回は肢Eが正当となり、認定基準の存在を知らずに一般的な常識感覚で解こうとしても、「1か月・3か月」と「3か月・6か月」の違いに着目するのは結構難しいと思います。

一度解答したら、他の問題に時間を割いた方が得策です!

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