社会保険労務士試験【労働基準法】<令和5年第3問>

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労働基準法の年少者及び妊産婦等に係る規定に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

労働基準法 令和5年第3問 A

年少者を坑内で労働させてはならないが、年少者でなくても、妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た女性については、坑内で行われるすべての業務に就かせてはならない。

解答の根拠

法第63条 / 法第64条の2第1項第1号

根拠条文を確認します。

(坑内労働の禁止)
第六十三条 使用者は、満十八才に満たない者を坑内で労働させてはならない。

(坑内業務の就業制限)
第六十四条の二 使用者は、次の各号に掲げる女性を当該各号に定める業務に就かせてはならない。
 妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後一年を経過しない女性 坑内で行われるすべての業務

労働基準法

本肢は、「年少者・妊産婦等」に関する問題です。

問題文を分解して確認していきましょう。

まず「年少者を坑内で労働させてはならないが」について。

上記根拠条文(法第63条)のとおり「使用者は、満18才に満たない者を坑内で労働させてはならない」と規定されているので、正しい内容となります。

次に「妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た女性については、坑内で行われるすべての業務に就かせてはならない。」について。

上記根拠条文(法第64条)を確認すると、「使用者は、妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性を、坑内で行われるすべての業務に就かせてはならない」とされています。

対象は…
・妊娠中の女性
・申し出のあった産後1年以内の女性
となりますので、「産後1年以内」の記載がない問題文は誤りとなります。

本肢は×となり、本問の正解となります。

労働基準法 令和5年第3問 B

女性労働者が妊娠中絶を行った場合、産前6週間の休業の問題は発生しないが、妊娠4か月(1か月28日として計算する。)以後行った場合には、産後の休業について定めた労働基準法第65条第2項の適用がある。

解答の根拠

昭和26年4月2日婦発113号

根拠通達を確認します。

妊娠中絶(人工流産)であっても、妊娠4箇月以後に行った場合は、産後休業の規定が適用される。

昭和26年4月2日婦発113号

本肢は、「産前産後休業」に関する問題です。

こちらも問題文を分解して確認していきましょう。

まず「女性労働者が妊娠中絶を行った場合、産前6週間の休業の問題は発生しない」について。

産前休業の意義を考えると、出産予定日に向けて負担が増えた身体を安定させ、徐々に準備をする期間と考えられますよね。

しかし、妊娠中絶はそのような段階の前の話となりますので、産前休業は想定されていませんので、正しい内容となります。

次に「妊娠4か月(1か月28日として計算する。)以後行った場合には、産後の休業について定めた労働基準法第65条第2項の適用がある。」について。

こちらは、上記根拠通達のとおり「妊娠中絶(人工流産)であっても、妊娠4箇月以後に行った場合は、産後休業の規定が適用される。」とされているため、正しい内容となります。

母体の負担…という観点では、通常の出産も、妊娠中絶も同じ、ということになりますね。

本肢は○です。

労働基準法 令和5年第3問 C

6週間以内に出産する予定の女性労働者が休業を請求せず引き続き就業している場合は、労働基準法第19条の解雇制限期間にはならないが、その期間中は女性労働者を解雇することのないよう行政指導を行うこととされている。

解答の根拠

昭和25年6月16日基収1526号

根拠通達を確認します。


1.6週間以内に出産する予定の女性同労働者が休業を請求せずに引続き就労している場合は、労働基準法第19条の解雇制限の時間となるか

1.6週間以内に出産する予定の女性労働者が休業を請求せず引続き就労している場合は、労働基準法第19条の解雇制限期間にはならないが、その期間中は女性労働者を解雇することのないよう指導されたい。

昭和25年6月16日基収1526号

本肢は、「妊娠中の女性の解雇制限」に関する問題です。

こちらは、上記根拠通達のとおりの問題となります。

労基法第19条の解雇制限は、「産前」については、産前休業期間中の解雇を制限しています。

しかし、産前休業は任意取得であるため、労働者自身の判断で産前休業を取得していなければ、解雇制限の対象とならないのか…という論点があります。

この点、上記根拠通達では、「6週間以内に出産する予定の女性労働者が、休業を請求せず引き続き就労している場合は、法19条の解雇制限期間にはならないが、その期間中は女性労働者を解雇することのないよう指導されたい」としています。

法律の対象外だけど、だからと言って解雇はしないようにね…という感じです。

本肢は○です。

労働基準法 令和5年第3問 D

災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等を規定した労働基準法第33条第1項は年少者にも適用されるが、妊産婦が請求した場合においては、同項を適用して時間外労働等をさせることはできない。

解答の根拠

法第33条第1項 / 法第60条第1項 / 法第66条第2項

根拠条文を確認します。

(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)
第三十三条 災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。

(労働時間及び休日)
第六十条 第三十二条の二から第三十二条の五まで、第三十六条、第四十条及び第四十一条の二の規定は、満十八才に満たない者については、これを適用しない。

第六十六条
 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十三条第一項及び第三項並びに第三十六条第一項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。

労働基準法

本肢は、「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働」に関する問題です。

こちらも問題文を分解して確認していきましょう。

まず「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等を規定した労働基準法第33条第1項は年少者にも適用される」について。

上記根拠条文法第33条(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)は、年少者に対する除外を規定した法第60条のなかに含まれていません。

ということは、法第33条は年少者にも適用されることとなりますので、正しい内容となります。

次に「妊産婦が請求した場合においては、同項を適用して時間外労働等をさせることはできない。」について。

妊産婦の場合は、上記根拠条文法第66条において、「法第33条第1項に関わらず労働させてはならない」と規定されていますので、正しい内容となります。

本肢は○です。

労働基準法 令和5年第3問 E

年少者の、深夜業に関する労働基準法第61条の「使用してはならない」、危険有害業務の就業制限に関する同法第62条の「業務に就かせてはならない」及び坑内労働の禁止に関する同法第63条の「労働させてはならない」は、それぞれ表現が異なっているが、すべて現実に労働させることを禁止する趣旨である。

解答の根拠

昭和23年5月18日基収1625号

根拠条文を確認します。


法61条1項及び現62条の「使用してはならない」は「労働させてはならない」又は「業務に就かせてはならない」と異なるか」

「すべて現実に労働させることを禁止する趣旨である」

昭和23年5月18日基収1625号

本肢は「労働禁止規定」に関する問題です。

少し毛色が変わった問題ですね。

・法第61条…使用してはならない
・法第62条…業務に就かせてはならない
・法第63条…労働させてはならない

微妙に表現が違いますが、結局言いたいことは、上記3つとも全部「現実に労働をさせてはいけませんよ」という意味であっています…という確認の通達が存在するのですね。

本肢は○です。

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