適用事業に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
雇用保険法 令和4年第2問 A
法人格がない社団は、適用事業の事業主とならない。
雇用保険に関する業務取扱要領 20002
根拠となる行政手引を確認します。
20002(2)「事業」及び「事業主」の意義
雇用保険に関する業務取扱要領
ロ (中略)事業主は、自然人であると、法人であると又は法人格がない社団若しくは財団であるとを問わない。法人又は法人格がない社団若しくは財団の場合は、その法人又は社団若しくは財団そのものが事業主であって、その代表者が事業主となるのではない。
本肢は、「適用事業の事業主」に関する問題です。
「法人格がない」…と書いてあると、「なんか適用事業の事業主にならなそうだな…」と思ってしまいますよね。
ですが、上記行政手引にあるとおり、法人格の有無を問わず事業主になること、また、法人や社団・財団そのものが事業主になることが記載されています。
本肢は×です。
雇用保険法 令和4年第2問 B
雇用保険に係る保険関係が成立している建設の事業が労働保険徴収法第8条の規定による請負事業の一括が行われた場合、被保険者に関する届出の事務は元請負人が一括して事業主として処理しなければならない。
雇用保険に関する業務取扱要領 20002
根拠となる行政手引を確認します。
20002(2)「事業」及び「事業主」の意義
雇用保険に関する業務取扱要領
ロ(中略)なお、雇用保険に係る保険関係及び労災保険に係る保険関係の成立している事業のうち建設の事業については、徴収法第 8 条の規定による請負事業の一括が行われた場合であっても、被保険者に関する届出の事務等、法の規定に基づく事務については、元請負人、下請負人がそれぞれ別個の事業主として処理しなければならない
本肢は、「請負事業の一括時の事業主」に関する問題です。
請負事業の一括が行われると、戦隊モノの合体ロボのような感じに一つになるイメージがありますが、合体した個々のロボ(被一括事業)は溶けて取り込まれるわけではなく、形としては一つの企業として残っています。
もちろん、一括された請負事業が終了すれば、合体が解除されて元に戻るわけです。
そのため、一括されている間も、一つの事業・事業主として、法の規定に基づく事務は別個に処理する必要があるわけですね。
本肢は×です。
雇用保険法 令和4年第2問 C
事業主が適用事業に該当する部門と暫定任意適用事業に該当する部門とを兼営する場合、それぞれの部門が独立した事業と認められるときであっても当該事業主の行う事業全体が適用事業となる。
雇用保険に関する業務取扱要領 20106
根拠となる行政手引を確認します。
20106(6) 事業主が適用事業に該当する部門と暫定任意適用事業に該当する部門とを兼営する場合の取扱い
雇用保険に関する業務取扱要領
事業主が適用事業に該当する部門(以下「適用部門」という。)と暫定任意適用事業に該当する部門(以下「非適用部門」という。)とを兼営している場合は、次によって取り扱う。
イ それぞれの部門が独立した事業と認められる場合は、適用部門のみが適用事業となる。
ロ 一方が他方の一部門にすぎず、それぞれの部門が独立した事業と認められない場合であって、主たる業務が適用部門であるときは、当該事業主の行う事業全体が適用事業となる。
本肢は、「適用事業・暫定任意適用事業の事業主」に関する問題です。
ある事業主が、適用事業に該当する部門と、暫定任意適用事業に該当する部門、双方を兼営していた場合、どのように取り扱うのでしょうか。
このような場合は、「それぞれの部門が独立しているか否か」によって判断します。
つまり、問題文にあるように「それぞれの部門が独立している」ような場合は、あえて無理に暫定任意適用事業の部門を一緒に考える必要はありませんので、適用事業に該当する部門だけ考えればよい、となります。
一方、「それぞれの部門が独立していない」…例えば上記手引きにあるように、「一方が他方の一部門に過ぎず、独立性がない」というような場合は、主たる方とセットで考えることとなります。
もし主たる部門が適用事業に該当するのであれば、従たる暫定任意適用事業に該当する部門をセットにして「適用事業」として考えるわけですね。
本肢は×です。
雇用保険法 令和4年第2問 D
日本国内において事業を行う外国会社(日本法に準拠してその要求する組織を具備して法人格を与えられた会社以外の会社)は、労働者が雇用される事業である限り適用事業となる。
法第5条第1項 / 雇用保険に関する業務取扱要領 20051
根拠条文および行政手引を確認します。
(適用事業)
雇用保険法
第五条 この法律においては、労働者が雇用される事業を適用事業とする。
20051(1)日本人以外の事業主が行う事業
雇用保険に関する業務取扱要領
日本人以外の事業主が日本国内において行う事業が法第 5 条に該当する場合は、当該事業主の国籍のいかん及び有無を問わず、その事業は適用事業である(以下略)
本肢は、「外国会社」に関する問題です。
外国に本社がある会社が、日本に支社を作るなどした場合、その企業は適用事業となるのでしょうか。
上記手引きの通り、「第5条(労働者を雇用)に該当していれば、当該事業主の国籍のいかん及び有無を問わず、その事業は適用事業である」とされています。
国内企業・国外企業の別などは関係なく、「日本で労働者を雇用して事業をしているのであれば該当
」とわかりやすい整理ですね。
本肢は○となり、本問の正解となります。
雇用保険法 令和4年第2問 E
事業とは、経営上一体をなす本店、支店、工場等を総合した企業そのものを指す。
雇用保険に関する業務取扱要領 20002
根拠となる行政手引を確認します。
20002(2)「事業」及び「事業主」の意義
雇用保険に関する業務取扱要領
イ 「事業」とは、反復継続する意思をもって業として行われるものをいうが、法において事業とは、一の経営組織として独立性をもったもの、すなわち、一定の場所において一定の組織のもとに有機的に相関連して行われる一体的な経営活動がこれに当たる。したがって、事業とは、経営上一体をなす本店、支店、工場等を総合した企業そのものを指すのではなく、個々の本店、支店、工場、鉱山、事務所のように、一つの経営組織として独立性をもった経営体をいう。
本肢は「事業の定義」に関する問題です。
大きな企業であれば、本店のみならず、支店や別拠点の向上など、数々の拠点を有している企業もあるでしょう。
その場合は、雇用保険法上の「事業」の概念をどのように考えればよいのでしょうか。
考え方は、丸っと一つの合体ロボのように考えるのではなく、それぞれ別個の本社・支店・工場・事務所…と独立性を持たせて考える、とされています。
ぜひおさえておきましょう。
本肢は○です。