特例高年齢被保険者に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
雇用保険法 令和4年第1問 A
特例高年齢被保険者が1の適用事業を離職した場合に支給される高年齢求職者給付金の賃金日額は、当該離職した適用事業において支払われた賃金のみにより算定された賃金日額である。
法第37条の6第2項
根拠条文を確認します。
(特例高年齢被保険者に対する失業等給付等の特例)
雇用保険法
第三十七条の六 前条第一項の規定により高年齢被保険者となつた者に対する第六十一条の四第一項、第六十一条の七第一項及び第六十一条の八第一項の規定の適用については、これらの規定中「をした場合」とあるのは、「を全ての適用事業においてした場合」とする。
2 前項に定めるもののほか、前条第一項の規定により高年齢被保険者となつた者が、同項の規定による申出に係る適用事業のうちいずれか一の適用事業を離職した場合における第三十七条の四第一項及び第五十六条の三第三項第三号の規定の適用については、第三十七条の四第一項中「第十七条第四項第二号」とあるのは「第十七条第四項」と、「額とする」とあるのは「額とする。この場合における第十七条の規定の適用については、同条第一項中「賃金(」とあるのは、「賃金(離職した適用事業において支払われた賃金に限り、」とする」と、第五十六条の三第三項第三号ロ中「第十八条まで」とあるのは「第十八条まで(第十七条第四項第一号を除く。)」とする。
本肢は、「特例高年齢被保険者の賃金」に関する問題です。
上記根拠条文の黄色マーカー部分の通り、特例高年齢被保険者の賃金についてはかっこ書きで「離職した適用事業において支払われた賃金に限り」という注釈が付されています。
ぜひおさえておきましょう。
本肢は○です。
雇用保険法 令和4年第1問 B
特例高年齢被保険者が同じ日に1の事業所を正当な理由なく自己の都合で退職し、他方の事業所を倒産により離職した場合、雇用保険法第21条の規定による待期期間の満了後1か月以上3か月以内の期間、高年齢者求職者給付金を支給しない。
マルチジョブホルダー業務取扱要領 2270
根拠要領を確認します。
2270 労働の意思及び能力があるかの確認
マルチジョブホルダー業務取扱要領
(中略)
なお、法第33条の給付制限については、マルチ高年齢被保険者でない高年齢受給資格者と同様に一定期間の給付制限(正当な理由がない自己の都合による退職の場合2か月、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇の場合3か月)を行った上で給付することとするが、同日付で二の事業所を離職した場合又は同日付で二の事業所の週所定労働時間が減少した場合で、その離職理由が異なっている場合には、給付制限の取扱いが離職者にとって不利益とならない方の離職理由に一本化して給付する
本肢は、「特例高年齢被保険者の高年齢者求職者給付金」に関する問題です。
上記根拠要領の中に「マルチ高齢被保険者」という言葉が出てきます。
雇用保険マルチジョブホルダー制度によって特例的に雇用保険の被保険者となる労働者を「マルチ高年齢被保険者」と呼びます。
「雇用保険マルチジョブホルダー」とは、複数の事業所で働く65歳以上の労働者が特定の要件を満たす場合に、申し出を行った日から特例的に雇用保険被保険者になることができる制度となります。
さて、本肢の論点は「複数の事業場で働く高年齢被保険者が、同日付けでその複数の事業場を離職したときに、離職理由がそれぞれ違う場合に、どの理由をもってその後の給付制限の条件を決めるか」となります。
問題文には
①自己都合退職
②倒産による退職
とあります。
この場合、①・②どちらを基準として給付制限を決めるのか。
上記根拠要領では「離職者に不利益とならない方の離職理由に一本化」とされていますので、②を優先して「給付制限なし」とする対応となります。
本肢は×となり、本問の正解となります。
雇用保険法 令和4年第1問 C
特例高年齢被保険者が1の適用事業を離職したことにより、1週間の所定労働時間の合計が20時間未満となったときは、特例高年齢被保険者であった者がその旨申し出なければならない。
法第37条の5第2項 / マルチジョブホルダー業務取扱要領1160
根拠条文・要領を確認します。
(高年齢被保険者の特例)
雇用保険法
第三十七条の五 次に掲げる要件のいずれにも該当する者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に申し出て、当該申出を行つた日から高年齢被保険者となることができる。
一 二以上の事業主の適用事業に雇用される六十五歳以上の者であること。
二 一の事業主の適用事業における一週間の所定労働時間が二十時間未満であること。
三 二の事業主の適用事業(申出を行う労働者の一の事業主の適用事業における一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間数以上であるものに限る。)における一週間の所定労働時間の合計が二十時間以上であること。
2 前項の規定により高年齢被保険者となつた者は、同項各号の要件を満たさなくなつたときは、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に申し出なければならない。
1160 概要
マルチジョブホルダー業務取扱要領
イ マルチ高年齢被保険者は、二の事業主に雇用されなくなった場合や二の事業主における合計した1週間の所定労働時間が20時間未満になる等、法第37条の5第1項各号の要件を満たさなくなったときは、被保険者資格を喪失し、その旨を自身の住居所を管轄する安定所長に申し出なければならない。
本肢は、「高年齢被保険者が被保険者要件を満たさなくなった時の手続き」に関する問題です。
まず、原則的な話から。
上記法第37条の5第2項の通り、「前項の規定により高年齢被保険者となつた者は、同項各号の要件を満たさなくなつたときは、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に申し出なければならない。」とされていますので、原則として、被保険者から厚生労働大臣に申し出ることとなります。
次に、問題文中に「1の適用事業を離職」とありますので、「マルチ高齢被保険者」のケースを考えます。
こちらは、上記根拠要領の中に、「マルチ高年齢被保険者は、二の事業主に雇用されなくなった場合や二の事業主における合計した1週間の所定労働時間が20時間未満になる等、法第37条の5第1項各号の要件を満たさなくなったときは、被保険者資格を喪失し、その旨を自身の住居所を管轄する安定所長に申し出なければならない」と記載されています。
申出先が、「自身の住居所を管轄する安定所長」となっておりますので、おさえておきましょう。
本肢は○です。
雇用保険法 令和4年第1問 D
特例高年齢被保険者の賃金日額の算定に当たっては、賃金日額の下限の規定は適用されない。
マルチジョブホルダー業務取扱要領2140
根拠要領を確認します。
2140 賃金日額の算定方法
マルチジョブホルダー業務取扱要領
(中略)
また、マルチ高年齢被保険者には賃金日額の下限の規定は適用されない。
本肢は、「特例高年齢被保険者の賃金日額の算定」に関する問題です。
上記根拠要領の通り「マルチ高年齢被保険者には賃金日額の下限の規定は適用されない」とされています。
単発の知識ですが、ぜひおさえておきましょう。
本肢は○です。
雇用保険法 令和4年第1問 E
2の事業所に雇用される65歳以上の者は、各々の事業における1週間の所定労働時間が20時間未満であり、かつ、1週間の所定労働時間の合計が20時間以上である場合、事業所が別であっても同一の事業主であるときは、特例高年齢被保険者となることができない。
マルチジョブホルダー業務取扱要領1070
根拠要領を確認します。
1070 被保険者資格を取得する日
マルチジョブホルダー業務取扱要領
(中略)
さらに、マルチ高年齢被保険者に係る適用事業については、二の事業主は異なる事業主である必要があるため、事業所が別であっても同一の事業主である場合は、適用要件を満たさないことに留意すること。
本肢は「特例高年齢被保険者の被保険者資格」に関する問題です。
原則の「特例高年齢被保険者」の要件としては、肢Cの根拠条文として取り上げた、法第37条の5第1項1号に「二以上の事業主の適用事業に雇用される六十五歳以上の者であること」と規定されています。
次に、「マルチ高齢被保険者」の場合を考えると、上記根拠要領のとおり、「マルチ高年齢被保険者に係る適用事業については、二の事業主は異なる事業主である必要があるため、事業所が別であっても同一の事業主である場合は、適用要件を満たさない」とされています。
したがって、問題文にある「事業所が別であっても同一の事業主であるとき」には、所定労働時間の合計が被保険者適用要件を満たしていても、被保険者とならないわけですね。
本肢は○です。