社会保険労務士試験【労働者災害補償保険法】<令和4年第5問>

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労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間の往復を、合理的な経路及び方法により行うことによる負傷、疾病、障害又は死亡は、通勤災害に当たるが、この「住居」、「就業の場所」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

労働者災害補償保険法 令和4年第5問 A

同一市内に住む長女が出産するため、15日間、幼児2人を含む家族の世話をするために長女宅に泊まり込んだ労働者にとって、長女宅は、就業のための拠点としての性格を有する住居と認められる。

解答の根拠

昭和52年12月23日基収1027号

本問全体が「通勤災害認定の際の住居・就業場所と認められるケースか否か」の判断を問う内容となっております。

一応、解答の根拠として通達番号を記載はしますが、どれも古い通達ばかりで、ネット上ではヒットしませんでしたので、一部の肢を除いて番号のみの掲載であることをご了承ください。

まず本肢は「長女出産⇒長女宅で家族の世話をする」場合に、「住居」と認められるかどうかが問われています。

通達によれば「住居とされる」となっています。

もちろん、日常的に住んでいる自分の家ではありませんが、一時的にやむを得ず自分の家以外に宿泊するような場合でも、当該場所を「住居」とみなすとされています。

この点は、多少緩やかに解釈されているわけですね。

本肢は○です。

労働者災害補償保険法 令和4年第5問 B

アパートの2階の一部屋に居住する労働者が、いつも会社に向かって自宅を出発する時刻に、出勤するべく靴を履いて自室のドアから出て1階に降りようとした時に、足が滑り転倒して負傷した場合、通勤災害に当たらない。

解答の根拠

昭和49年4月9日基収314号

本肢は「自宅を出て通勤状態が始まるのはどこからか」が問われています。

・家の玄関の中にいるときは、まだ通勤ではない…
・玄関の外に出たときから通勤…

というのは、感覚的に理解できるのではないかと思います。

では、アパートやマンションの場合は、自分の部屋のドアをでて、アパートやマンションの廊下に出たときからが通勤スタートなのか、アパートやマンションの敷地内から出たときから通勤スタートなのか…これは微妙な感じですよね。

この場合は、通達で前者…つまり「労働者が居住するアパートの外戸が住居と通勤経路との境界」とされています。

したがって、自分の部屋のドアを出た後に、アパートの階段で転倒⇒負傷した場合は、「通勤災害」と認められます。

本肢は×となり、本問の正解となります。

労働者災害補償保険法 令和4年第5問 C

一戸建ての家に居住している労働者が、いつも退社する時刻に仕事を終えて自宅に向かってふだんの通勤経路を歩き、自宅の門をくぐって玄関先の石段で転倒し負傷した場合、通勤災害に当たらない。

解答の根拠

昭和49年7月15日基収2110号

本肢は「帰宅時に通勤状態が終わるのはどこからか」が問われています。

肢Bとは逆に、肢Cでは、通勤が終わる境目がどこか、となります。

先ほどは、アパート・マンションのケースでしたが、今回はわざわざ「一戸建て」とされています。

アパート・マンションの廊下は、「共用部」とも言われますが、その名の通りそのアパートやマンションの住民が共用するスペースなので、「外」という感じがします。

一方、一戸建ての庭は、基本的にはその家に住む住民や関係する方(配達の人など)しか通りませんので、「内」という感じがしますよね。

したがって、一戸建ての家の場合は、「自宅の門」等が住居と通勤経路との境界とされ、本肢のケースは通勤災害には当たらない、となります。

本肢は○です。

労働者災害補償保険法 令和4年第5問 D

外回りの営業担当の労働者が、夕方、得意先に物品を届けて直接帰宅する場合、その得意先が就業の場所に当たる。

解答の根拠

平成18年3月31日基発0331042号

こちらは根拠となる通達本文を引用します。

通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。(中略)
2 「就業に関し」の意義
「就業に関し」とは、移動行為が業務に就くため又は業務を終えたことにより行われるものであることを必要とする趣旨を示すものである。つまり、通勤と認められるには、移動行為が業務と密接な関連をもって行われることを要することを示すものである。
① まず、労働者が、業務に従事することになっていたか否か、又は現実に業務に従事したか否かが、問題となる。この場合に所定の就業日に所定の就業場所で所定の作業を行うことが業務であることはいうまでもない。また、事業主の命によって物品を届けに行く場合にも、これが業務となる。

平成18年3月31日基発0331042号

外回りの営業担当の労働者が、得意先に物品を届けて直帰する…。

当該労働者の本来の業務である「営業」と物品を届けることが、「業務と密接な関連」があるかどうかは、問題文からはよくわかりません。

しかし、少なくともプライベートな行為ではなく、「得意先」とあることから会社の関係先であることは明らかですので「業務と密接な関連」があると判断できるでしょう。

したがって、当該行為は「就業に関し」ている行為だと判断できます。

本肢は○です。

労働者災害補償保険法 令和4年第5問 E

労働者が、長期入院中の夫の看護のために病院に1か月間継続して宿泊した場合、当該病院は就業のための拠点としての性格を有する住居と認められる。

解答の根拠

昭和52年12月23日基収981号

本肢は「夫の看護のために病院に1ヶ月宿泊した」場合に、その病院は「住居」と認められるかどうかが問われています。

こちらも、肢Aと同様に、自身が好きで自宅とは異なる病院に1ヶ月も宿泊しているわけではなく、「夫の看病」というやむを得ない事情で病院に宿泊するわけですので、そのような場合は当該場所を「住居」とみなすとされています。

本肢は○です。

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