社会保険労務士試験【労働基準法】<令和4年第1問>

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労働基準法の労働者に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

労働基準法 令和4年第1問 A

労働基準法の労働者であった者は、失業しても、その後継続して求職活動をしている間は、労働基準法の労働者である。

解答の根拠

法第9条

根拠条文を確認します。

第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

労働基準法

本肢は、「労働者の定義」に関する問題です。

労働者の定義は、上記の通り労基法第9条に規定があります。

確認をすると…
①職業の種類を問わず
②事業に使用される者で
③賃金を支払われる者

と3つのポイントがあります。

この中で、今回の問題に関係するのは、「③賃金を支払われる者」であり、失業中ということはこの③の要件を満たしませんので、問題文のケースは、「労基法の労働者ではない」となります。

本肢は×です。

労働基準法 令和4年第1問 B

労働基準法の労働者は、民法第623条に定める雇用契約により労働に従事する者がこれに該当し、形式上といえども請負契約の形式を採るものは、その実体において使用従属関係が認められる場合であっても、労働基準法の労働者に該当することはない。

解答の根拠

法第9条 / 民法第623条

根拠条文を確認します。

(雇用)
第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

民法

本肢は、「労働者の定義」に関する問題です。

まず、前半の「労働基準法の労働者は、民法第623条に定める雇用契約により労働に従事する者がこれに該当」について考えてみます。

上記根拠条文に引用した民法623条を確認すると「相手方に対して労働に従事することを約し」とあり、「相手方」については特段の定義はありませんので、必ずしも「事業主」や「社長」ではなく、個人である場合もあります。

したがって、前半は「誤り」となります。

この時点で×と判断して次に進んでも良いのですが、念のため後半も確認しておきましょう。

後半の記載は、よく「偽装請負問題」としても論点になる点です。

通常、「請負契約」というのは、請負契約をお願いする側が、お願いされる側にあれこれ口を出してはならず、ましてや問題文にあるような「使用従属関係」なんてはもってのほか…となります。

もし、形式上は請負契約でも、実態として「使用従属関係」があるのであれば、労基法第9条の労働者に該当する(前肢の①~③を満たすことになる)ので、後半も誤りとなります。

本肢は×です。

労働基準法 令和4年第1問 C

同居の親族のみを使用する事業において、一時的に親族以外の者が使用されている場合、この者は、労働基準法の労働者に該当しないこととされている。

解答の根拠

法第116条第2項

根拠条文を確認します。

(適用除外)
第百十六条
 この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。

労働基準法

本肢は、「労基法の適用除外」に関する問題です。

本肢の根拠となるのが上記第116条第2項であり、
①同居の親族のみを使用する事業
②家事使用人

は、労基法の適用除外とされています。

そこで、問題文にあるとおり、①の事業に「一時的に親族以外の者」が加わった場合はどうなるのでしょうか。

たとえ「一時的」であったとしても、親族以外の者が加われば、労基法の適用対象となります。

そもそも「一時的」と言う言葉があいまいですよね…。

私の感覚だと、1ヶ月くらい?かな…と思いますが、私の近くの人に聞いても、1日~1年と幅が広い解釈でした。

ちなみに、「同居の親族のみ」の「のみ」が非常に重要です。

1人でも、同居の親族以外の方が加わった場合は、もともとの同居の親族の方々含めて全員が「労基法適用」となりますので、その点も併せておさえていきましょう。

本肢は×です。

労働基準法 令和4年第1問 D

株式会社の代表取締役は、法人である会社に使用される者であり、原則として労働基準法の労働者になるとされている。

解答の根拠

法第9条

根拠条文は、肢Aと同じ第9条になります。

本肢は、「労働者の定義」に関する問題です。

繰り返しになりますが、もう一度復習を兼ねて第9条のポイントを確認しましょう。
①職業の種類を問わず
②事業に使用される者で
③賃金を支払われる者

ここで、「代表取締役」について考えてみましょう。

一般的的には「社長」をイメージしていただくと良いと思います(正確には異なりますが)

そうすると、「②事業に使用される者」の定義が怪しいですよね。

どちらかというと「使用する側だろ」という感じだと思います。

したがって、本問のケースでは「労働者ではない」という結論になります。

以下は余談です。

私は、ながらく人事を担当していますが、社員であった方が取締役になる際には、
会社を退職 ➡ 取締役の委任契約締結
の手続きを取ります。

したがって、私のような人間は、本肢は見た瞬間に「労働者になるわけないでしょ」と判断できます。

本肢は×です。

労働基準法 令和4年第1問 E

明確な契約関係がなくても、事業に「使用」され、その対償として「賃金」が支払われる者であれば、労働基準法の労働者である。

解答の根拠

法第9条

根拠条文は、肢Aと同じ第9条になります。

本肢は「労働者の定義」に関する問題です。

この第1問で繰り返し引用している第9条の3つのポイントの中には、「契約関係」の定義はありません。

<再掲>
①職業の種類を問わず
②事業に使用される者で
③賃金を支払われる者

契約関係がなくても、問題文にあるように「事業に「使用」され、その対償として「賃金」が支払われる者」であれば、「労基法の労働者」に該当します。

労働基準法で労働者とは、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」をいう。

本肢は○となり、本問の正解となります。

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