社会保険労務士試験【国民年金法】<令和3年第9問>

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併給調整に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

国民年金法 令和3年第9問 A

障害等級2級の障害基礎年金の受給権者が、その障害の状態が軽減し障害等級に該当しなくなったことにより障害基礎年金が支給停止となっている期間中に、更に別の傷病により障害基礎年金を支給すべき事由が生じたときは、前後の障害を併合した障害の程度による障害基礎年金を支給し、従前の障害基礎年金の受給権は消滅する。

解答の根拠

法第31条 / 法第36条第2項

根拠条文を確認します。

(併給の調整)
第三十一条 障害基礎年金の受給権者に対して更に障害基礎年金を支給すべき事由が生じたときは、前後の障害を併合した障害の程度による障害基礎年金を支給する。
 障害基礎年金の受給権者が前項の規定により前後の障害を併合した障害の程度による障害基礎年金の受給権を取得したときは、従前の障害基礎年金の受給権は、消滅する。

(支給停止)
第三十六条
 障害基礎年金は、受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなつたときは、その障害の状態に該当しない間、その支給を停止する。ただし、その支給を停止された障害基礎年金の受給権者が疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病に係る初診日において第三十条第一項各号のいずれかに該当した場合であつて、当該傷病によりその他障害の状態にあり、かつ、当該傷病に係る障害認定日以後六十五歳に達する日の前日までの間において、当該障害基礎年金の支給事由となつた障害とその他障害(その他障害が二以上ある場合は、すべてのその他障害を併合した障害)とを併合した障害の程度が障害等級に該当するに至つたときは、この限りでない。

国民年金法

本肢は、「支給停止時の併給調整」に関する問題です。

まず、障害基礎年金の併給調整の原則は、上記根拠条文(第31条)のとおり「併合➡従前消滅」となります。

本問では、その従前の障害基礎年金が障害状態に該当しなくなり支給停止となっている際に、追加の障害基礎年金を支給すべき事由が生じた場合にどうなるのか、という点が論点となります。

この点は、上記根拠条文(第36条)のただし書きにある通り、「併給調整が生じる場合はこの限りではない(つまり、支給停止状態でなくなり、ちゃんと併給調整する)」と規定されています。

ということで、結論としては、支給停止となっている場合はでも併給調整は行うこととなります。

本肢は○です。

国民年金法 令和3年第9問 B

旧国民年金法による障害年金の受給権者には、第2号被保険者の配偶者がいたが、当該受給権者が66歳の時に当該配偶者が死亡したことにより、当該受給権者に遺族厚生年金の受給権が発生した。この場合、当該受給権者は旧国民年金法による障害年金と遺族厚生年金の両方を受給できる。

解答の根拠

昭60法附則第11条第3項

根拠条文を確認します。

(国民年金の年金たる給付に係る併給調整の経過措置)
第十一条
 旧国民年金法による年金たる給付(老齢年金及び通算老齢年金(その受給権者が六十五歳に達しているものに限る。)並びに障害年金(その受給権者が六十五歳に達しているものに限る。)を除く。)は、その受給権者が国民年金法による年金たる給付(付加年金及び附則第二十八条の規定により支給される遺族基礎年金を除く。以下この項において同じ。)又は厚生年金保険法による年金たる保険給付若しくは平成二十四年改正前共済各法による年金たる給付(略)のうち附則第三十一条第一項に規定する者に支給される退職共済年金以外のもの(以下この項において「厚生年金保険法による年金たる保険給付等」という。)を受けることができるときは、その間、その支給を停止する。(以下略)

国民年金法昭和60年附則

本肢は、「旧国民年金法の障害年金と新法の遺族厚生年金との併給」に関する問題です。

「旧国民年金法の障害年金の受給者に、遺族厚生年金の受給権が生じたらどうなるか」が論点となります。

上記根拠条文には。「旧国民年金法による年金給付(障害年金(65歳に達しているものに限る)を除く)は、新法の国民年金法・厚生年金保険法の年金給付を受けることができる時は、その支給を停止する」とあります。

ということで、原則としては、旧法+新法の同時受給はできませんが、「65歳に達しているものに限る➡を、除く保険給付➡は、支給停止する」ということは、結局は「65歳に達している保険給付は支給停止しない」となります。

ということで、結論としては、「旧国民年金法の障害年金は、65歳に達している場合に限り、新法の遺族厚生年金と併給できる」となります。

本肢は○です。

国民年金法 令和3年第9問 C

老齢厚生年金と老齢基礎年金を受給中の67歳の厚生年金保険の被保険者が、障害等級2級の障害厚生年金の受給権者(障害基礎年金の受給権は発生しない。)となった。老齢厚生年金の額より障害厚生年金の額の方が高い場合、この者は、障害厚生年金と老齢基礎年金の両方を受給できる。

解答の根拠

法第20条第1項 / 法附則第9条の2の4

根拠条文を確認します。

(併給の調整)
第二十条 遺族基礎年金又は寡婦年金は、その受給権者が他の年金給付(付加年金を除く。)又は厚生年金保険法による年金たる保険給付(当該年金給付と同一の支給事由に基づいて支給されるものを除く。以下この条において同じ。)を受けることができるときは、その間、その支給を停止する。老齢基礎年金の受給権者が他の年金給付(付加年金を除く。)又は同法による年金たる保険給付(遺族厚生年金を除く。)を受けることができる場合における当該老齢基礎年金及び障害基礎年金の受給権者が他の年金給付(付加年金を除く。)を受けることができる場合における当該障害基礎年金についても、同様とする。

国民年金法

(併給調整の特例)
第九条の二の四 第二十条第一項の規定の適用については、当分の間、同項中「遺族基礎年金又は寡婦年金」とあるのは「年金給付(老齢基礎年金及び障害基礎年金(その受給権者が六十五歳に達しているものに限る。)並びに付加年金を除く。)」と、「老齢基礎年金の受給権者」とあるのは「老齢基礎年金の受給権者(六十五歳に達している者に限る。)」と、「障害基礎年金の受給権者」とあるのは「障害基礎年金の受給権者(六十五歳に達している者に限る。)」とする。

国民年金法

本肢は、「老齢基礎年金と障害厚生年金の併給調整」に関する問題です。

まず、併給調整の原則は、いわゆる「1人1年金」です。

そのため、1人の人間に複数の年金受給権が発生した場合は、本人が一つのみを選択して受給するのが原則となります。

ただし、同一の支給事由による国年法の年金」と「厚年法の年金」は併給されます。

【併給可能な組み合わせ①】
・老齢基礎年金+老齢厚生年金
・障害基礎年金+障害厚生年金
・遺族基礎年金+遺族厚生年金

またこれ以外にも、特殊な組み合わせとして、下記2つを覚えておきましょう。

【併給可能な組み合わせ②】
・障害基礎年金+老齢/遺族厚生年金(ただし65歳以上)
・老齢基礎年金+遺族厚生年金(ただし65歳以上)

ということで、問題文にある「老齢基礎年金+障害厚生年金」は、上記の組合せのいずれにも該当しませんので、「併給調整不可」となります。

本肢は×となり、本問の正解となります。

国民年金法 令和3年第9問 D

父が死亡したことにより遺族基礎年金を受給中である10歳の子は、同居中の厚生年金保険の被保険者である66歳の祖父が死亡したことにより遺族厚生年金の受給権を取得した。この場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金のどちらかを選択することとなる。

解答の根拠

法第20条第1項 / 法附則第9条の2の4

根拠条文は、肢Cと同じため割愛します。

本肢は、「遺族基礎年金と遺族厚生年金の併給調整」に関する問題です。

先ほど、肢Cの解説文内で「同一の支給事由による国年法の年金」と「厚年法の年金」は併給」と書きました。

それをベースにして問題文を確認すると、
・父が死亡したことにより遺族基礎年金を受給中
・祖父が死亡したことにより遺族厚生年金の受給権を取得
とありますので、「同一の支給事由」ではないことがわかります。

ということは「併給されない」ことになり、どちらかを選択しなければなりません。

本肢は○です。

国民年金法 令和3年第9問 E

第1号被保険者として30年間保険料を納付していた者が、就職し厚生年金保険の被保険者期間中に死亡したため、遺族である妻は、遺族厚生年金、寡婦年金、死亡一時金の受給権を有することになった。この場合、当該妻は、遺族厚生年金と寡婦年金のどちらかを選択することとなり、寡婦年金を選択した場合は、死亡一時金は支給されないが、遺族厚生年金を選択した場合は、死亡一時金は支給される。

解答の根拠

法第20条第1項 / 法第52条の6

根拠条文を確認します。

(支給の調整)
第五十二条の六 第五十二条の三の規定により死亡一時金の支給を受ける者が、第五十二条の二第一項に規定する者の死亡により寡婦年金を受けることができるときは、その者の選択により、死亡一時金と寡婦年金とのうち、その一を支給し、他は支給しない。

国民年金法

本肢は「死亡一時金・寡婦年金・遺族厚生年金の併給調整」の給付に関する問題です。

死亡一時金の支給を受ける者が、追加で寡婦年金の受けることができる場合は、上記根拠条文の通り「その者の選択により」どちらか一方を選択することになります。

まずは「寡婦年金 × 死亡一時金」の組み合わせについて。

死亡一時金の支給を受ける者が、寡婦年金を受けることができるときは、その者の選択により、どちらかを支給し、他は支給しない(法52条の6)。

一方、「寡婦年金 × 遺族厚生年金」の組み合わせはどうでしょうか。

こちらは、肢Cの根拠条文として紹介した「法第20条第1項」をもう一度確認しましょう。

ポイントの部分のみ抜粋すると「遺族基礎年金又は寡婦年金は、その受給権者が他の年金給付(付加年金を除く。)又は厚生年金保険法による年金たる保険給付(当該年金給付と同一の支給事由に基づいて支給されるものを除く。以下この条において同じ。)を受けることができるときは、その間、その支給を停止する。」となります。

上記は少しわかりづらいですが、「寡婦年金が併給調整しない(支給停止する)のは、同一の支給事由に基づいて支給されるものを除いた厚年の年金」と規定されています。

上記を言い換えれば、肢Eの問題文のように、寡婦年金と「同一の支給事由に基づいて支給される」遺族厚生年金は、併給調整する(支給停止しない)となります。

本肢は○です。

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