通勤災害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
労働者災害補償保険法 令和6年第2問 A
マイカー通勤をしている労働者が、勤務先会社から市道を挟んだところにある同社の駐車場に車を停車し、徒歩で職場に到着しタイムカードを打刻した後、フォグライトの消し忘れに気づき、徒歩で駐車場へ引き返すべく市道を横断する途中、市道を走ってきた軽自動車にはねられ負傷した場合、通勤災害とは認められない。
昭和49年6月19日基収1739号
根拠通達を確認します。
(問)
被災労働者は、出勤のためマイカーで自宅を出発し、会社の北側にある駐車場に車を置き、徒歩で100メートル先にある会社に出勤し、所属職場で備え付けのカードラックにより出勤の表示をした後で、出勤してきた同僚から、車のフォグライト(前照灯)が点灯したままになっているのを知らされたので、直ちに同僚の自転車を借り駐車場に引き返す途中、門を出て市道を横断する際、左側から走行して来た軽自動車にはねられ負傷したものである。(答)
通勤災害と認められる。(理 由)
通勤は、一般には労働者が事業主の支配管理下にあると認められる事業場構内(会社の門など)に到達した時点で終了するものであるが、本件のようにマイカー通勤者が車のライト消し忘れなどに気づき駐車場に引き返すことは一般にあり得ることであって、通勤とかけ離れた行為でなく、この場合、いったん事業場構内に入った後であっても、まだ、時間の経過もほとんどないことなどから通勤による災害として取扱うことが妥当である。昭和49年6月19日基収1739号
本肢は、「通勤災害」に関する問題です。
上記根拠通達にあるとおり、ライトの消し忘れや、車に何か忘れ物をして取りに返るようなときは、まだ職場での労働が始まる前=通勤途中、と考えて、通勤災害として取り扱う、とされています。
本肢は×です。
労働者災害補償保険法 令和6年第2問 B
マイカー通勤をしている労働者が、同一方向にある配偶者の勤務先を経由するため、通常通り自分の勤務先を通り越して通常の通勤経路を450メートル走行し、配偶者の勤務先で配偶者を下車させて自分の勤務先に向かって走行中、踏切で鉄道車両と衝突して負傷した場合、通勤災害とは認められない。
昭和49年3月4日基収289号
本肢は、「通勤災害」に関する問題です。
類似のケースで「マイカー通勤の共稼ぎの労働者で、勤務先が同一方向にあって、しかも夫の通勤経路から、さほど離れていなければ、2人の通勤をマイカーの相乗りで行い、妻の勤務先を経由することは、通常行われることであり、このような場合は、合理的な経路として取扱う」とされているようです。
本人以外(今回は配偶者)のための通勤ルートが入っていても、それが社会通念上「普通はそういうこともあるだろうし、特におかしい点はない」という場合は、本人の通勤の一環としてとらえられることになります。
本肢は×です。
労働者災害補償保険法 令和6年第2問 C
頸椎を手術した配偶者の看護のため、手術後1か月ほど姑と交替で1日おきに病院に寝泊まりしていた労働者が、当該病院から徒歩で出勤する途中、横断歩道で軽自動車にはねられ負傷した場合、当該病院から勤務先に向かうとすれば合理的である経路・方法をとり逸脱・中断することなく出勤していたとしても、通勤災害とは認められない。
昭和48年11月22日基発644号
本肢は、「通勤災害」に関する問題です。
本ケースのような場合、「病院」は「住居」として判断されます。
そのため、当該病院から勤務先に向かうとすれば合理的である経路・方法をとり逸脱・中断することなく出勤していれば、「通勤災害」とされます。
本肢は×です。
労働者災害補償保険法 令和6年第2問 D
労働者が、退勤時にタイムカードを打刻し、更衣室で着替えをして事業場施設内の階段を降りる途中、ズボンの裾が靴に絡んだために足を滑らせ、階段を5段ほど落ちて腰部を強打し負傷した場合、通勤災害とは認められない。
昭和49年4月9日基収314号
本肢は、「通勤災害」に関する問題です。
本ケースのように、退勤のタイムカードを打刻して帰宅をする…という業務と通勤の切り替えのタイミングに生じた事故について、業務災害・通勤災害いずれと考えるかは悩ましいところです。
通達では「事業場施設内における業務に就くための出勤又は業務を終えた後の退勤で「業務」と接続しているものは、業務行為そのものではないが、業務に通常付随する準備後始末行為と認められる」とされています。
したがって、本ケースの場合は通勤災害ではなく「業務災害」としてとらえられることになります。
本肢は○となり、本問の正解となります。
労働者災害補償保険法 令和6年第2問 E
長年営業に従事している労働者が、通常通りの時刻に通常通りの経路を徒歩で勤務先に向かっている途中に突然倒れ、急性心不全で死亡した場合、通勤災害と認められる。
昭和50年6月9日基収4039号
本肢は、「通勤災害」に関する問題です。
設問と同様の事例について、「通勤による疾病とは、通勤による負傷又は通勤に関連ある諸種の状態(突発的又は異常なできごと等)が原因となって発病したことが医学的に明らかに認められるものをいうが、本件労働者の通勤途中に発生した急性心不全による死亡については、特に発病の原因となるような通勤による負傷又は通勤に関連する突発的なできごと等が認められないことから「通勤に通常伴う危険が具体化したもの」とは認められない」とされています。
今回のケースでは、特段通勤時に異常な事態は発生しておらず、通常通り徒歩で出勤していた、ということになりますので、「通勤が原因で急性心不全となった」とは考えられません。
本肢は×です。