社会保険労務士試験【厚生年金保険法】<令和3年第9問>

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厚生年金保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

厚生年金保険法 令和3年第9問 A

昭和35年4月10日生まれの女性は、第1号厚生年金被保険者として5年、第2号厚生年金被保険者として35年加入してきた(これらの期間以外被保険者期間は有していないものとする。)。当該女性は、62歳から第1号厚生年金被保険者期間としての報酬比例部分の特別支給の老齢厚生年金が支給され、64歳からは、第2号厚生年金被保険者期間としての報酬比例部分の特別支給の老齢厚生年金についても支給される。

解答の根拠

法附則第8条の2第1項・第2項

根拠条文を確認します。

(特例による老齢厚生年金の支給開始年齢の特例)
第八条の二 男子又は女子(第二号厚生年金被保険者であり、若しくは第二号厚生年金被保険者期間を有する者、第三号厚生年金被保険者であり、若しくは第三号厚生年金被保険者期間を有する者又は第四号厚生年金被保険者であり、若しくは第四号厚生年金被保険者期間を有する者に限る。)であつて次の表の上欄に掲げる者(第三項及び第四項に規定する者を除く。)について前条の規定を適用する場合においては、同条第一号中「六十歳」とあるのは、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。
昭和28年4月2日から昭和30年4月1日までの間に生まれた者  61歳
昭和30年4月2日から昭和32年4月1日までの間に生まれた者  62歳
昭和32年4月2日から昭和34年4月1日までの間に生まれた者  63歳
昭和34年4月2日から昭和36年4月1日までの間に生まれた者  64歳

 女子(第一号厚生年金被保険者であり、又は第一号厚生年金被保険者期間を有する者に限る。)であつて次の表の上欄に掲げる者(次項及び第四項に規定する者を除く。)について前条の規定を適用する場合においては、同条第一号中「六十歳」とあるのは、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。
昭和33年4月2日から昭和35年4月1日までの間に生まれた者  61歳
昭和35年4月2日から昭和37年4月1日までの間に生まれた者  62歳
昭和37年4月2日から昭和39年4月1日までの間に生まれた者  63歳
昭和39年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれた者  64歳

厚生年金保険法附則

本肢は、「特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢」に関する問題です。

私も、このテーマについては受験生時代に念仏のように唱えて丸暗記しました。

このようにドンピシャで狙われると、覚えていれば確実に回答できますが、覚えていなければ…なので、頑張って覚えるようにしましょう。

回答の根拠は、上記根拠条文内の黄色マーカー部分です。

本肢は○です。

厚生年金保険法 令和3年第9問 B

昭和33年4月10日生まれの男性は、第1号厚生年金被保険者として4年、第2号厚生年金被保険者として40年加入してきた(これらの期間以外被保険者期間は有していないものとする。)。当該男性は、厚生年金保険の被保険者でなければ、63歳から定額部分と報酬比例部分の特別支給の老齢厚生年金が支給される。

解答の根拠

法附則第9条の3第1項 / 法附則第20条第2項

根拠条文を確認します。

第九条の三 附則第八条の規定による老齢厚生年金の受給権者が、その権利を取得した当時、被保険者でなく、かつ、その者の被保険者期間が四十四年以上であるとき(次条第一項の規定が適用される場合を除く。)は、当該老齢厚生年金の額は、第四十三条第一項の規定にかかわらず、前条第二項の規定の例により計算する。

(二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者に係る特例による老齢厚生年金の特例)
第二十条
 前項に規定する者であつて、附則第八条の規定による老齢厚生年金の受給権者であるものについては、各号の厚生年金被保険者期間ごとに附則第九条の二から第九条の四まで及び第十一条から第十一条の六までの規定を適用する。この場合において、附則第十一条第一項中「附則第八条の規定による老齢厚生年金」とあるのは「各号の厚生年金被保険者期間のうち一の期間に基づく附則第八条の規定による老齢厚生年金」と、「老齢厚生年金の額を」とあるのは「各号の厚生年金被保険者期間に基づく老齢厚生年金の額を合算して得た額を」と、「当該老齢厚生年金」とあるのは「当該一の期間に基づく老齢厚生年金」と、「控除して得た額」とあるのは「控除して得た額に当該一の期間に基づく老齢厚生年金の額を十二で除して得た額を基本月額で除して得た数を乗じて得た額」と、「老齢厚生年金の額以上」とあるのは「当該一の期間に基づく老齢厚生年金の額以上」と、「老齢厚生年金の全部」とあるのは「当該一の期間に基づく老齢厚生年金の全部」とするほか、当該受給権者に係る保険給付の額の計算及びその支給停止に関するこの法律その他政令で定める規定の適用に関し必要な読替えその他必要な事項は、政令で定める。

厚生年金保険法附則

本肢は「特別支給の老齢厚生年金の長期加入者の特例」に関する問題です。

上記根拠条文の後者「附則第20条第2項」の黄色マーカー部分をご確認いただくと、「各号の厚生年金被保険者期間のうち一の期間に基づく…」とあります。

したがって、一つの被保険者期間で、附則第9条の3にある「44年以上」を満たす必要があります

ここで問題文を確認すると、第1号・第2号を合算してようやく44年となりますので、長期加入者の特例には該当しないこととなり、63歳からは報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金の支給、となります。

本肢は×となり、本問の正解となります。

厚生年金保険法 令和3年第9問 C

ある日本国籍を有しない者について、最後に厚生年金保険の被保険者資格を喪失した日から起算して2年が経過しており、かつ、最後に国民年金の被保険者資格を喪失した日(同日において日本国内に住所を有していた者にあっては、同日後初めて、日本国内に住所を有しなくなった日)から起算して1年が経過した。この時点で、この者が、厚生年金保険の被保険者期間を6か月以上有しており、かつ、障害厚生年金等の受給権を有したことがない場合、厚生年金保険法に定める脱退一時金の請求が可能である。

解答の根拠

法附則第29条第1項

根拠条文を確認します。

(日本国籍を有しない者に対する脱退一時金の支給)
第二十九条 当分の間、被保険者期間が六月以上である日本国籍を有しない者(国民年金の被保険者でないものに限る。)であつて、第四十二条第二号に該当しないものその他これに準ずるものとして政令で定めるものは、脱退一時金の支給を請求することができる。ただし、その者が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
 日本国内に住所を有するとき。
 障害厚生年金その他政令で定める保険給付の受給権を有したことがあるとき。
三 最後に国民年金の被保険者の資格を喪失した日(同日において日本国内に住所を有していた者にあつては、同日後初めて、日本国内に住所を有しなくなつた日)から起算して二年を経過しているとき。

厚生年金保険法附則

本肢は「脱退一時金」に関する問題です。

上記根拠条文には、脱退一時金の不支給事由が列挙されています。

今回はその中の「 最後に国民年金の被保険者の資格を喪失した日(同日において日本国内に住所を有していた者にあつては、同日後初めて、日本国内に住所を有しなくなつた日)から起算して二年を経過しているとき。」が論点となっています。

問題文を確認すると、「最後に国民年金の被保険者資格を喪失した日(同日において日本国内に住所を有していた者にあっては、同日後初めて、日本国内に住所を有しなくなった日)から起算して1年が経過した。」とあり、2年は経っていないので、不支給事由に該当しません。

また、もう一つ、「最後に厚生年金保険の被保険者資格を喪失した日から起算して2年が経過しており」とありますが、上記根拠条文を見ても、厚生年金保険の被保険者資格喪失については、特段の規定はありません。

そのため、厚生年金保険法に定める脱退一時金の請求が可能な状態であると言えます。

本肢は○です。

厚生年金保険法 令和3年第9問 D

脱退一時金の額の計算における平均標準報酬額の算出に当たっては、被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額に再評価率を乗じることはない。

解答の根拠

法附則第29条第3項

根拠条文を確認します。

(日本国籍を有しない者に対する脱退一時金の支給)
第二十九条 
 脱退一時金の額は、被保険者であつた期間に応じて、その期間の平均標準報酬額(被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、当該被保険者期間の月数で除して得た額をいう。)に支給率を乗じて得た額とする

厚生年金保険法附則

本肢は「脱退一時金の支給額」に関する問題です。

上記根拠条文の通り、脱退一時金の計算式は…
「平均標準報酬額×支給率」
となっています。

問題文にあるような「再評価率」という言葉はどこにも出てきません。

本肢は○です。

厚生年金保険法 令和3年第9問 E

昭和28年4月10日生まれの女性は、65歳から老齢基礎年金を受給し、老齢厚生年金は繰下げし70歳から受給する予定でいたが、配偶者が死亡したことにより、女性が68歳の時に遺族厚生年金の受給権を取得した。この場合、68歳で老齢厚生年金の繰下げの申出をせずに、65歳に老齢厚生年金を請求したものとして遡って老齢厚生年金を受給することができる。また、遺族厚生年金の受給権を取得してからは、その老齢厚生年金の年金額と遺族厚生年金の年金額を比較して遺族厚生年金の年金額が高ければ、その差額分を遺族厚生年金として受給することができる。

解答の根拠

法第44条の3第2項 / 法第64条の2

根拠条文を確認します。

(支給の繰下げ)
第四十四条の三
 一年を経過した日後に次の各号に掲げる者が前項の申出(第五項の規定により前項の申出があつたものとみなされた場合における当該申出を除く。以下この項において同じ。)をしたときは、当該各号に定める日において、前項の申出があつたものとみなす。
 老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して十年を経過した日(次号において「十年を経過した日」という。)前に他の年金たる給付の受給権者となつた者 他の年金たる給付を支給すべき事由が生じた日
 十年を経過した日後にある者(前号に該当する者を除く。) 十年を経過した日

第六十四条の二 遺族厚生年金(その受給権者が六十五歳に達しているものに限る。)は、その受給権者が老齢厚生年金の受給権を有するときは、当該老齢厚生年金の額に相当する部分の支給を停止する。

厚生年金保険法

本肢は「老齢厚生年金の支給繰り下げと遺族厚生年金との関係」に関する問題です。

本肢は前半と後半に分けることができるので、それぞれ確認したいと思います。

まず、前半部分について。

問題のポイントを確認すると、
・老齢厚生年金については70歳から受給しようと繰り下げていた
・配偶者が死亡し、68歳で遺族厚生年金の受給権を得た

この場合は、下記の2つの選択肢があります。
①65歳に老齢厚生年金を請求したものとして遡って本来の老齢厚生年金を受給する
②遺族厚生年金が発生時の繰下げ支給の老齢厚生年金を請求できる

したがって、問題文の内容は正しいです。

次に後半部分についてです。

上記根拠条文「法第64条の2」には、「遺族厚生年金と老齢厚生年金とが重複支給となる場合は、ダブルで支給するのではなく、遺族厚生年金のうちの老齢厚生年金相当額を支給停止する」とあります。

わかりづらいですが、例えば遺族厚生年金が100・老齢厚生年金が80だとすると、100のうち80を支給停止して、遺族厚生年金20+老齢厚生年金80とする、ということになります。

したがって、後半部分も正しいです。

本肢は○です。

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