社会保険労務士試験【健康保険法】<令和3年第10問>

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健康保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

健康保険法 令和3年第10問 A

賃金が時間給で支給されている被保険者について、時間給の単価に変動はないが、労働契約上の1日の所定労働時間が8時間から6時間に変更になった場合、標準報酬月額の随時改定の要件の1つである固定的賃金の変動に該当する。

解答の根拠

標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集(令和3年4月1日事務連絡)

根拠となる事務連絡を確認します。

問1-3 基本給(時間給)に変更は無いが、勤務体系(契約時間)が変更になる場合、随時改定の対象となるか。

(答) 時給単価の変動はないが、契約時間が変わった場合、固定的賃金の変動に該当するため、随時改定の対象となる。

標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集(令和3年4月1日事務連絡)

時給制の方にとって、時給単価それ自体に変更がなくても、契約時間に変更が生じたことが原因でに月給が変動したら、それはしっかりと標準報酬月額に反映させてあげる必要がありますよね。

本肢は○です。

健康保険法 令和3年第10問 B

7月から9月までのいずれかの月から標準報酬月額が改定され、又は改定されるべき被保険者については、その年における標準報酬月額の定時決定を行わないが、7月から9月までのいずれかの月に育児休業等を終了した際の標準報酬月額の改定若しくは産前産後休業を終了した際の標準報酬月額の改定が行われた場合は、その年の標準報酬月額の定時決定を行わなければならない。

解答の根拠

法第41条第3項

根拠条文を確認します。

(定時決定)
第四十一条
 第一項の規定は、六月一日から七月一日までの間に被保険者の資格を取得した者及び第四十三条、第四十三条の二又は第四十三条の三の規定により七月から九月までのいずれかの月から標準報酬月額を改定され、又は改定されるべき被保険者については、その年に限り適用しない。

健康保険法

上記で引用した第41条によると、定時決定の適用除外は以下のように整理できます。

1.毎年6月1日から7月1日に被保険者資格を取得した者
2.随時改定・育児休業等終了時の改定・産前産後休業終了時の改定で、7月~9月のいずれかの月に標準報酬月額を改定され、又は改定されるべき被保険者

問題文では、後段で、上記整理の2についての事由について「定時決定を行わなければならない」としていますが、条文の通り「定時決定の対象外」となります。

結局改定されるタイミングが同じになるので、重ねて同じことをやる必要がない…ということですね。

本肢は×となり、本問の正解となります。

健康保険法 令和3年第10問 C

事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料を報酬から控除することができる。ただし、被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料を報酬から控除することができる。

解答の根拠

法第167条第1項

根拠条文を確認します。

(保険料の源泉控除)
第百六十七条 事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。

健康保険法

こちらは条文通りですね。

ご存じのとおり社会保険料は「後払い」であり、当月分の給料から控除される社会保険料は、前月分のものとなります。

では、退職した月の分の社会保険料はどの給料から控除するのか。

もちろんその翌月にはその会社には在籍していないので、給料支払いはありません。

そのため、退職した月の給料から前月分と当月分の2か月分の社会保険料を控除する…ということになるわけですね。

本肢は○です。

健康保険法 令和3年第10問 D

倒産、解雇などにより離職した者及び雇止めなどにより離職された者が任意継続被保険者となり、保険料を前納したが、その後に国民健康保険法施行令第29条の7の2に規定する国民健康保険料(税)の軽減制度について知った場合、当該任意継続被保険者が保険者に申し出ることにより、当該前納を初めからなかったものとすることができる。

解答の根拠

平成22年3月24日保保発0324第4号

根拠通達を確認します。

現在、任意継続被保険者が保険料を前納した場合、当該前納に係る期間の経過前においては、その資格を喪失したとき(他の健康保険の被保険者となったとき、死亡したとき等)以外は、前納された保険料を還付する取扱いとはされていない。

このため、特定受給資格者等である任意継続被保険者のうち保険料を前納した後になって軽減制度について知った者については、当該任意継続被保険者の申出により、当該前納を初めからなかったものとして取り扱っていただくようお願いするとともに、前納された保険料の精算等の事務の取扱いについては、下記の事項に留意の上、遺漏なきを期されたい。

特定受給資格者等である任意継続被保険者の前納の取扱いについて(平成22年3月24日保保発0324第4号)

本肢は、「特定受給資格者等である任意継続被保険者」がテーマの問題です。

特定受給資格者と言うのは、雇用保険で出てきたように「会社が倒産したなどやむを得ない事由で退職を余儀なくされた者」ですが、この方たち向けに過去(平成22年4月)に、国民健康保険料(税)を軽減する措置が導入されました。

そのため、良かれと思って任意継続被保険者として保険料を前納した方が、「そういう措置が取られるなら前納しなかったよ!」と不公平になってしまうので、そういうケースの場合は「前納をはじめからしなかったものとして精算等を行う」とされています。

本肢は○です。

健康保険法 令和3年第10問 E

療養費の額は、当該療養(食事療養及び生活療養を除く。)について算定した費用の額から、その額に一部負担金の割合を乗じて得た額を控除した額及び当該食事療養又は生活療養について算定した費用の額から食事療養標準負担額又は生活療養標準負担額を控除した額を基準として、保険者が定める。

解答の根拠

法第87条第2項

根拠条文を確認します。

(療養費)
第八十七条
 療養費の額は、当該療養(食事療養及び生活療養を除く。)について算定した費用の額から、その額に第七十四条第一項各号に掲げる場合の区分に応じ、同項各号に定める割合を乗じて得た額を控除した額及び当該食事療養又は生活療養について算定した費用の額から食事療養標準負担額又は生活療養標準負担額を控除した額を基準として、保険者が定める。

健康保険法

本肢は、療養費の算出方法に関する問題です。

上記根拠条文である第87条のポイントをまとめると、以下のようになります。

療養費 
= 療養の費用 ー 一部負担金の割合を乗じた額・食事療養標準負担額・生活療養標準負担額

一定の被保険者分が負担すべき費用を控除した部分が療養費となるわけですね。

条文通りの問題でした。

本肢は○です。

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