介護保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和3年第8問 A
市町村(特別区を含む。)は、第2号被保険者から保険料を普通徴収の方法によって徴収する。
第129条第4項
本問は、介護保険法からの出題になります。
実務でもあまり論点でなるところではないですが、一人の日本人、そして社会保険の専門家としては、試験勉強を通じた最低限の知識は押さえておく必要があるでしょう。
それでは、各肢を見ていきます。
本肢の根拠条文を確認します。
(保険料)
介護保険法
第百二十九条
4 市町村は、第一項の規定にかかわらず、第二号被保険者からは保険料を徴収しない。
まず、前提知識として、介護保険法上の被保険者の種類を確認しておきましょう。
●介護保険の被保険者
・第1号被保険者…65歳以上の住民
・第2号被保険者…40歳以上65歳未満の医療保険加入者
そして、今回問題となっているのは、第2号被保険者の保険料の取り扱いです。
私はこのブログ執筆時に第2号被保険者となっていますが、所属会社で健康保険料に含めて給与天引きされています。
つまり、自身で市町村に納付書等で納付はしておりません。
したがって、「市町村は第2号被保険者から普通徴収では保険料を徴収していない」となります。
本肢は×です。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和3年第8問 B
介護認定審査会は、市町村(特別区を含む。)に置かれ、介護認定審査会の委員は、介護保険法第7条第5項に規定する介護支援専門員から任命される。
第14条 / 第15条第2項
本肢の根拠条文を確認します。
(介護認定審査会)
第十四条 第三十八条第二項に規定する審査判定業務を行わせるため、市町村に介護認定審査会(以下「認定審査会」という。)を置く。(委員)
介護保険法
第十五条 認定審査会の委員の定数は、政令で定める基準に従い条例で定める数とする。
2 委員は、要介護者等の保健、医療又は福祉に関する学識経験を有する者のうちから、市町村長(特別区にあっては、区長。以下同じ。)が任命する。
本肢のテーマは「介護認定審査会」という少しマニアックなテーマです。
第14条にあるとおり、主なミッションは「第38条第2項に規定する審査判定業務」を行わせるために、市町村に置かれる、とされています。
38条を引用しようと思いましたが、さらに「●条に規定されている…」とブラックホール状態だったために、いったんここまでにしておきたいと思います。
問題の本質は、その「介護認定審査会」の委員がどのようなメンツで構成されているか、ということです。
問題文には、「介護保険法第7条第5項に規定する介護支援専門員から任命される」となっていますが、上記第15条第2項には「要介護者等の保健、医療又は福祉に関する学識経験を有する者のうちから、市町村長(特別区にあたっては、区長。以下同じ。)が任命する」とされており、「介護支援専門員」という言葉はどこにもでてきません。
本肢は×です。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和3年第8問 C
配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の一方は、市町村(特別区を含む。)が第1号被保険者である他方の保険料を普通徴収の方法によって徴収しようとする場合において、当該保険料を連帯して納付する義務を負うものではない。
第132条第3項
本肢の根拠条文を確認します。
(普通徴収に係る保険料の納付義務)
介護保険法
第百三十二条 第一号被保険者は、市町村がその者の保険料を普通徴収の方法によって徴収しようとする場合においては、当該保険料を納付しなければならない。
2 世帯主は、市町村が当該世帯に属する第一号被保険者の保険料を普通徴収の方法によって徴収しようとする場合において、当該保険料を連帯して納付する義務を負う。
3 配偶者の一方は、市町村が第一号被保険者たる他方の保険料を普通徴収の方法によって徴収しようとする場合において、当該保険料を連帯して納付する義務を負う。
第132条は、普通徴収による介護保険料に関するルールが規定されています。
まとめると以下のようになります。
①第1号被保険者は普通徴収によって保険料を納付する
②世帯主は、世帯に属する第1号被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負う
③配偶者の一方は、他方の第1号被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負う
重要なのは②・③で、簡単に言ってしまえば、「世帯主は家族の、結婚している二人は相方の保険料納付義務を負っていますよ」となります。
国民健康保険もそうですが、市町村が保険者となる制度は、世帯や家族という考えを大切にしています。
問題文には「義務は負わない」となっているので、誤りです。
本肢は×です。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和3年第8問 D
介護保険審査会は、各都道府県に置かれ、保険給付に関する処分に対する審査請求は、当該処分をした市町村(特別区を含む。)をその区域に含む都道府県の介護保険審査会に対してしなければならない。
第191条1項
本肢の根拠条文を確認します。
(管轄保険審査会)
介護保険法
第百九十一条 審査請求は、当該処分をした市町村をその区域に含む都道府県の保険審査会に対してしなければならない。
ややこしいですが、肢Bで登場した「介護認定審査会」ではなく、本肢は「介護保険審査会」になりますので、まずはその違いをしっかりと確認しましょう。
さて、問題文を落ち着いて読んでみると、
●審査請求先 → 処分をした市町村 → その市町村が属する都道府県の保険審査会
ということが書いてありますが、当然と言えば当然ですね。
例えば、札幌市がした処分に対して審査請求をしたいのであれば、東京都ではなく北海道の保険審査会にする…とイメージすれば「そりゃそうだよな」となるでしょう。
本肢は○となり、本問の正解になります。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和3年第8問 E
介護保険法第28条第2項の規定による要介護更新認定の申請をすることができる被保険者が、災害その他やむを得ない理由により当該申請に係る要介護認定の有効期間の満了前に当該申請をすることができなかったときは、当該被保険者は、その理由のやんだ日から14日以内に限り、要介護更新認定の申請をすることができる。
介護保険法第28条第3項
本肢の根拠条文を確認します。
(要介護認定の更新)
第二十八条
介護保険法
3 前項の申請をすることができる被保険者が、災害その他やむを得ない理由により当該申請に係る要介護認定の有効期間の満了前に当該申請をすることができなかったときは、当該被保険者は、その理由のやんだ日から一月以内に限り、要介護更新認定の申請をすることができる。
オーソドックスな期限問題ですね。
市町村が主体の申請は「14日以内」であることが多いですが、災害ややむを得ない理由の場合は、少し長めに期間を設定してあげた方が、申請者ファーストな感じがしますね。
上記の通り「一月以内」となっているので、本肢は誤りになります。
本肢は×です。