雇用保険法第 22 条第 3 項に規定する算定基礎期間に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
雇用保険法/徴収法 令和3年第3問 A
育児休業給付金の支給に係る休業の期間は、算定基礎期間に含まれない。
法22条3項、法61条の7第9項、行政手引50302
本問は全般的に「算定基礎期間」に関する問題です。
どの期間が算定基礎期間に含まれる/含まれない、というのは、実務上も重要なテーマです。
誤った解釈をすると、受け取れる給付金が受け取れなかったり…と思わぬ落とし穴がありますので、そのような意味でもしっかりと正しい知識を身に付けていきましょう。
まずは肢Aです。
本肢は「育児休業給付金の支給にかかる休業の期間」が算定基礎期間に含まれるか否か、が問われています。
根拠となる行政手引(雇用保険に関する業務取扱要領)を確認します。
50302(2)算定基礎期間
雇用保険に関する業務取扱要領
算定基礎期間は、受給資格者が受給資格に係る離職の日まで引き続いて同一の事業主の適用事
業に被保険者として雇用された期間(当該雇用された期間に係る被保険者となった日前に被保険者であったことがある者については、当該雇用された期間と当該被保険者であった期間を通算した期間)から次に掲げる期間を除いて算定した期間である(後略)。
(イ)~(ハ)略
(ニ)当該雇用された期間又は当該被保険者であった期間に育児休業給付の支給を受けた期間がある場合はその期間
以上から、「育児休業給付金の支給にかかる休業の期間」は算定基礎期間に含まれない、となります。
なお、上記には「介護休業給付金」については触れられていません。
つまり、介護休業給付を受けた期間は、上記育児休業給付とはことなり、算定基礎期間に「含む」となるわけですね。
最初は、「給付金をもらった、ということで、その期間はお金に変わったのだから、算定基礎期間には含めないのかな」と思っていたのですが、介護は含める…ということで、注意が必要ですね。
本肢は○です。
雇用保険法/徴収法 令和3年第3問 B
雇用保険法第9条の規定による被保険者となったことの確認があった日の2年前の日より前であって、被保険者が負担すべき保険料が賃金から控除されていたことが明らかでない期間は、算定基礎期間に含まれない。
行政手引50103
根拠となる行政手引を確認します。
50103(3)被保険者期間
雇用保険に関する業務取扱要領
給与明細、賃金台帳又は所得税源泉徴収票(以下「給与明細等の確認書類」という。)に基づき、被保険者資格の取得の確認が行われた日の2年前の日より前に、労働保険の保険料の
徴収等に関する法律(昭和 44 年法律第 84 号)第 32 条第 1 項の規定により被保険者の負担すべき額に相当する額がその者に支払われた賃金から控除されていた(雇用保険料が給与から天引きされていた)ことが明らかである時期がある場合には、給与明細等の確認書類により雇用保険料の天引きがあったことが確認できる時期のうち最も古い日(当該日を確認できないときは、給与明細等の確認書類により雇用保険料の天引きがあったことを確認できる最も古い月の初日。当該最も古い日又は当該最も古い月の初日が当該者の直前の被保険者でなくなった日よりも前にあるときは、当該直前の被保険者でなくなった日。)より前の期間は、被保険者であった期間に算入されない。
いろいろと細かく書かれていますが、要は「被保険者資格の取得の確認が行われた日の2年前以前に、『ここから雇用保険料払っていますよ!』と確認できるところまでは算定基礎期間に含めるが、それより前(つまり、雇用保険料払っているかどうか確認できない期間)は含めない」ということです。
冷静に考えれば、「雇用保険料払っているかどうかわからない期間」ですから、算定基礎期間に含めないのはある意味当然ですね…、
本肢は○です。
雇用保険法/徴収法 令和3年第3問 C
労働者が長期欠勤している場合であっても、雇用関係が存続する限り、賃金の支払を受けているか否かにかかわらず、当該期間は算定基礎期間に含まれる。
法22条3項、行政手引20352
根拠となる行政手引を確認します。
20352(2)労働者の特性・状況を考慮して判断する場合
雇用保険に関する業務取扱要領
ロ 引き続き長期にわたり欠勤している者
労働者が長期欠勤している場合であっても、雇用関係が存続する限り賃金の支払を受けている
と否とを問わず被保険者となる。なお、この期間は、基本手当の所定給付日数等を決定するための基礎となる算定基礎期間(法第22 条第 3 項)に算入される。
たとえ当該労働者が長期欠勤していたとしても、賃金支払いの有無を問わず
・被保険者であり続ける
・算定基礎期間に算入される
となります。
被保険者であり続けることはなんとなくイメージつきますが、例えば欠勤中で給料が支給されていないときも算定基礎期間に算入される…というのは、人によっては「そうなの!?!?」となりそうなので、しっかりと確認しておきましょう。
本肢は○です。
雇用保険法/徴収法 令和3年第3問 D
かつて被保険者であった者が、離職後1年以内に被保険者資格を再取得しなかった場合には、その期間内に基本手当又は特例一時金の支給を受けていなかったとしても、当該離職に係る被保険者であった期間は算定基礎期間に含まれない。
法22条3項1号、行政手引50302
根拠となる行政手引を確認します。
50302(2)算定基礎期間
雇用保険に関する業務取扱要領
算定基礎期間は、受給資格者が受給資格に係る離職の日まで引き続いて同一の事業主の適用事
業に被保険者として雇用された期間(当該雇用された期間に係る被保険者となった日前に被保険者であったことがある者については、当該雇用された期間と当該被保険者であった期間を通算した期間)から次に掲げる期間を除いて算定した期間である(後略)。
(イ)当該雇用された期間又は当該被保険者であった期間に係る被保険者となった日の直前の被保険者でなくなった日が当該被保険者となった日前 1 年の期間内にないときは、当該直前の被保険者でなくなった日前の被保険者であった期間
上記(イ)は複雑に書いていますが、分解整理すると…
①「当該雇用された期間又は当該被保険者であった期間に係る被保険者となった日」=イメージとしては現在の勤め先に入社した日
②上記①の直前の被保険者でなくなった日=現在の勤め先の前に勤めていた会社を退職した日の翌日
③上記②→①の期間が1年以上の場合は、②の期間は算定基礎期間に含めない
となります。
もっとシンプルに言うと、「前職を退職して1年以上経ってから再就職した場合は、前職以前の期間はリセットされる」ということですね。
当然でしょう…と思うか、それは厳しいな…と思うかは、人それぞれでしょうか…。
本肢は○です。
雇用保険法/徴収法 令和3年第3問 E
特例一時金の支給を受け、その特例受給資格に係る離職の日以前の被保険者であった期間は、当該支給を受けた日後に離職して基本手当又は特例一時金の支給を受けようとする際に、算定基礎期間に含まれる。
法22条3項2号、行政手引50302
根拠となる行政手引を確認します。
50302(2)算定基礎期間
雇用保険に関する業務取扱要領
算定基礎期間は、受給資格者が受給資格に係る離職の日まで引き続いて同一の事業主の適用事
業に被保険者として雇用された期間(当該雇用された期間に係る被保険者となった日前に被保険者であったことがある者については、当該雇用された期間と当該被保険者であった期間を通算した期間)から次に掲げる期間を除いて算定した期間である(後略)
(ロ)当該雇用された期間に係る被保険者となった日前に基本手当又は特例一時金の支給を受けたことがある者については、これらの給付の受給資格又は特例受給資格に係る離職の日以前の被保険者であった期間
上記を整理すると
・基本手当
・特例一時金
を受給したら、その受給のベースとなった期間は算定基礎期間に含まない(リセットされる)となります。
権利を使ってしまったイメージですね。
先ほどの、肢Aとセットで考えると、
・原則として、何かしら受給した場合のベースとなった期間は算定基礎期間に含まない(リセットさせる)
・例外として、介護休業給付は別
とざっくり覚えておきましょう。
本肢は×となり、本問の正解となります。