厚生年金保険法に関する次のアからオの記述のうち、正しいものの組み合わせは、後記AからEまでのうちどれか。
A(アとイ)
B(アとウ)
C(イとエ)
D(ウとオ)
E(エとオ)
厚生年金保険法 令和6年第10問 ア
厚生年金保険の被保険者であった18歳のときに初診日のある傷病について、その障害認定日において障害等級3級の障害の状態にある場合にその者が20歳未満のときは、障害厚生年金の受給権は20歳に達したときに発生する。
法第47条第1項
根拠条文を確認します。
(障害厚生年金の受給権者)
第四十七条 障害厚生年金は、疾病にかかり、又は負傷し、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)につき初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において被保険者であつた者が、当該初診日から起算して一年六月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む。以下同じ。)があるときは、その日とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にある場合に、その障害の程度に応じて、その者に支給する。ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。厚生年金保険法
本肢は、「障害厚生年金の受給権者」に関する問題です。
上記根拠条文のとおり、障害厚生年金の受給要件の一つとして、「初診日に被保険者であった者」とありますが、特段年齢要件はありません。
そのため、問題文のケースでは、20歳になるまで待つことなく、その他の要件を満たすことで障害認定日に受給権を取得することとなります。
本肢は×です。
厚生年金保険法 令和6年第10問 イ
障害手当金は、疾病にかかり又は負傷し、その傷病に係る初診日において被保険者であった者が、保険料納付要件を満たし、当該初診日から起算して5年を経過する日までの間にまだその傷病が治っておらず治療中の場合でも、5年を経過した日に政令で定める程度の障害の状態にあるときは支給される。
法第55条第1項
根拠条文を確認します。
(障害手当金の受給権者)
第五十五条 障害手当金は、疾病にかかり、又は負傷し、その傷病に係る初診日において被保険者であつた者が、当該初診日から起算して五年を経過する日までの間におけるその傷病の治つた日において、その傷病により政令で定める程度の障害の状態にある場合に、その者に支給する。厚生年金保険法
本肢は、「障害手当金の受給権者」に関する問題です。
上記根拠条文のとおり、障害手当金の受給要件として「当該初診日から起算して五年を経過する日までの間におけるその傷病の治つた日において」とあります。
つまり、「治っている」ことが条件ですが、問題文のケースは「まだその傷病が治っておらず治療中」とありますので、障害手当金の支給対象外となります。
本肢は×です。
厚生年金保険法 令和6年第10問 ウ
年金たる保険給付(厚生年金保険法の他の規定又は他の法令の規定によりその全額につき支給を停止されている年金たる保険給付を除く。)は、その受給権者の申出により、その全額の支給を停止することとされている。ただし、厚生年金保険法の他の規定又は他の法令の規定によりその額の一部につき支給を停止されているときは、停止されていない部分の額の支給を停止する。
法第38条の2第1項
根拠条文を確認します。
(受給権者の申出による支給停止)
第三十八条の二 年金たる保険給付(この法律の他の規定又は他の法令の規定によりその全額につき支給を停止されている年金たる保険給付を除く。)は、その受給権者の申出により、その全額の支給を停止する。ただし、この法律の他の規定又は他の法令の規定によりその額の一部につき支給を停止されているときは、停止されていない部分の額の支給を停止する。厚生年金保険法
本肢は、「受給権者の申出による支給停止」に関する問題です。
本問は、上記根拠条文そのままの問題です。
●年金たる保険給付
・原則…受給権者の申出によりその全額の支給を停止
・例外…その額の一部につき支給を停止されているときは、停止されていない部分の額の支給を停止。
本肢は○です。
厚生年金保険法 令和6年第10問 エ
現在55歳の自営業者の甲は、20歳から5年間会社に勤めていたので、厚生年金保険の被保険者期間が5年あり、この他の期間はすべて国民年金の第1号被保険者期間で保険料はすべて納付済みとなっている。もし、甲が現時点で死亡した場合、一定要件を満たす遺族に支給される遺族厚生年金の額は、厚生年金保険の被保険者期間を300月として計算した額となる。
法第3条第1項第1号
根拠条文を確認します。
(用語の定義)
第三条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 保険料納付済期間 国民年金法第五条第一項に規定する保険料納付済期間をいう。厚生年金保険法
本肢は、「保険料納付済期間」に関する問題です。
遺族厚生年金の受給要件である「保険料納付済期間」の定義は、上記根拠条文のとおり、「国民年金法第五条第一項に規定する保険料納付済期間」とされています。
そのため、問題文のケースにある「厚生年金保険の被保険者期間が5年」というのは関係なく、「この他の期間はすべて国民年金の第1号被保険者期間で保険料はすべて納付済み」ということであれば、長期要件に該当するため「300月」のみなし規定は適用されません。
本肢は×です。
厚生年金保険法 令和6年第10 オ
2以上の種別の被保険者であった期間を有する者に係る脱退一時金については、その者の2以上の被保険者の種別に係る被保険者であった期間に係る被保険者期間を合算し、一の期間に係る被保険者期間のみを有する者に係るものとみなして支給要件を判定する。
法附則第30条
根拠条文を確認します。
(二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者に係る脱退一時金の支給要件等)
第三十条 二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者に係る脱退一時金については、その者の二以上の被保険者の種別に係る被保険者であつた期間に係る被保険者期間を合算し、一の期間に係る被保険者期間のみを有する者に係るものとみなして前条第一項の規定を適用する。ただし、当該脱退一時金の額は、各号の厚生年金被保険者期間に係る被保険者期間ごとに、同条第三項及び第四項の規定の例により計算した額とする。この場合において、同条の規定の適用に関し必要な読替えその他必要な事項は、政令で定める。厚生年金保険法附則
本肢は、「二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者に係る脱退一時金の支給要件」に関する問題です。
上記根拠条文のとおり、二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者に係る脱退一時金については、「その者の二以上の被保険者の種別に係る被保険者であつた期間に係る被保険者期間を合算し、一の期間に係る被保険者期間のみを有する者に係るものとみなして前条第一項の規定を適用する」とされています。
本肢は○です。
以上から、正しい選択肢はウとオとなり、D(ウとオ)が本問の正解となります。