社会保険労務士試験【厚生年金保険法】<令和6年第5問>

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遺族厚生年金に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせは、後記AからEまでのうちどれか。なお、本問では、遺族厚生年金に係る保険料納付要件は満たされているものとする。
A (アとイ)
B (アとウ)
C (イとエ)
D (ウとオ)
E (エとオ)

厚生年金保険法 令和6年第5問 A

死亡した者が短期要件に該当する場合は、遺族厚生年金の年金額を算定する際に、死亡した者の生年月日に応じた給付乗率の引上げが行われる。

解答の根拠

法第60条第1項

根拠条文を確認します。

(年金額)
第六十条 遺族厚生年金の額は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額とする。ただし、遺族厚生年金の受給権者が当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による遺族基礎年金の支給を受けるときは、第一号に定める額とする。
一 第五十九条第一項に規定する遺族(次号に掲げる遺族を除く。)が遺族厚生年金の受給権を取得したとき 死亡した被保険者又は被保険者であつた者の被保険者期間を基礎として第四十三条第一項の規定の例により計算した額の四分の三に相当する額。ただし、第五十八条第一項第一号から第三号までのいずれかに該当することにより支給される遺族厚生年金については、その額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が三百に満たないときは、これを三百として計算した額とする。
二 第五十九条第一項に規定する遺族のうち、老齢厚生年金の受給権を有する配偶者が遺族厚生年金の受給権を取得したとき 前号に定める額又は次のイ及びロに掲げる額を合算した額のうちいずれか多い額
イ 前号に定める額に三分の二を乗じて得た額
ロ 当該遺族厚生年金の受給権者の老齢厚生年金の額(第四十四条第一項の規定により加給年金額が加算された老齢厚生年金にあつては、同項の規定を適用しない額とする。次条第三項及び第六十四条の二において同じ。)に二分の一を乗じて得た額

厚生年金保険法

本肢は、「遺族厚生年金の額」に関する問題です。

遺族厚生年金の「生年月日に応じた給付乗率」は…
・短期要件…なし
・長期要件…あり
となります。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和6年第5問 B

厚生年金保険の被保険者である甲は令和2年1月1日に死亡した。甲の死亡時に甲によって生計を維持されていた遺族は、妻である乙(当時40歳)と子である丙(当時10歳)であり、乙が甲の死亡に基づく遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給していた。しかし、令和6年8月1日に、乙も死亡した。乙は死亡時に厚生年金保険の被保険者であった。また、乙によって生計を維持されていた遺族は丙だけである。この場合、丙が受給権を有する遺族厚生年金は、甲の死亡に基づく遺族厚生年金と乙の死亡に基づく遺族厚生年金である。丙は、そのどちらかを選択して受給することができる。

解答の根拠

法第38条第1項

根拠条文を確認します。

(併給の調整)
第三十八条 障害厚生年金は、その受給権者が他の年金たる保険給付又は国民年金法による年金たる給付(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給される障害基礎年金を除く。)を受けることができるときは、その間、その支給を停止する。老齢厚生年金の受給権者が他の年金たる保険給付(遺族厚生年金を除く。)又は同法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金並びに障害基礎年金を除く。)を受けることができる場合における当該老齢厚生年金及び遺族厚生年金の受給権者が他の年金たる保険給付(老齢厚生年金を除く。)又は同法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金、障害基礎年金並びに当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給される遺族基礎年金を除く。)を受けることができる場合における当該遺族厚生年金についても、同様とする。

厚生年金保険法

本肢は、「併給の調整」に関する問題です。

上記根拠条文のとおり、「1人1年金」の原則により、問題文のケースでは丙はどちらかを選択して受給することになります。

本肢は○です。

厚生年金保険法 令和6年第5問 C

厚生年金保険の被保険者が死亡したときに、被保険者によって生計を維持されていた遺族が50歳の父と54歳の母だけであった場合、父には遺族厚生年金の受給権は発生せず、母にのみ遺族厚生年金の受給権が発生する。

解答の根拠

法第59条第1項第1号

根拠条文を確認します。

(遺族)
第五十九条 遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母(以下単に「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」又は「祖父母」という。)であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(失踪そうの宣告を受けた被保険者であつた者にあつては、行方不明となつた当時。以下この条において同じ。)その者によつて生計を維持したものとする。ただし、妻以外の者にあつては、次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
一 夫、父母又は祖父母については、五十五歳以上であること。
二 子又は孫については、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあるか、又は二十歳未満で障害等級の一級若しくは二級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。

厚生年金保険法

本肢は、「遺族」に関する問題です。

上記根拠条文のとおり、遺族厚生年金を受けることができる遺族は
夫、父母又は祖父母については、55歳以上であること
とされています。

問題文のケースでは、父母ともに55歳未満であるので、遺族厚生年金を受けることはできません。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和6年第5問 D

夫(70歳)と妻(70歳)は、厚生年金保険の被保険者期間を有しておらず、老齢基礎年金を受給している。また、夫妻と同居していた独身の子は厚生年金保険の被保険者であったが、3年前に死亡しており、夫妻は、それに基づく遺族厚生年金も受給している。この状況で夫が死亡し、遺族厚生年金の受給権者の数に増減が生じたときは、増減が生じた月の翌月から、妻の遺族厚生年金の年金額が改定される。

解答の根拠

法第61条第1項

根拠条文を確認します。

第六十一条 配偶者以外の者に遺族厚生年金を支給する場合において、受給権者の数に増減を生じたときは、増減を生じた月の翌月から、年金の額を改定する。

厚生年金保険法

本肢は、「遺族厚生年金額の改定」に関する問題です。

上記根拠条文のとおり、「受給権者の数に増減を生じたときは、増減を生じた月の翌月から、年金の額を改定する」とされています。

そのため、問題文のケースでは、増減が生じた月の翌月から妻の遺族厚生年金の年金額が改定されることとなります。

本肢は○です。

厚生年金保険法 令和6年第5問 E

繰下げにより増額された老齢厚生年金を受給している夫(厚生年金保険の被保険者ではない。)が死亡した場合、夫によって生計を維持されていた妻には、夫の受給していた老齢厚生年金の額(繰下げによる加算額を含む。)の4分の3が遺族厚生年金として支給される。なお、妻は老齢厚生年金の受給権を有しておらず、老齢基礎年金のみを受給しているものとする。

解答の根拠

法第60条第1項第1号 / 法第43条第1項

根拠条文を確認します。

(年金額)
第六十条 遺族厚生年金の額は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額とする。ただし、遺族厚生年金の受給権者が当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による遺族基礎年金の支給を受けるときは、第一号に定める額とする。
一 第五十九条第一項に規定する遺族(次号に掲げる遺族を除く。)が遺族厚生年金の受給権を取得したとき 死亡した被保険者又は被保険者であつた者の被保険者期間を基礎として第四十三条第一項の規定の例により計算した額の四分の三に相当する額。ただし、第五十八条第一項第一号から第三号までのいずれかに該当することにより支給される遺族厚生年金については、その額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が三百に満たないときは、これを三百として計算した額とする。
二 第五十九条第一項に規定する遺族のうち、老齢厚生年金の受給権を有する配偶者が遺族厚生年金の受給権を取得したとき 前号に定める額又は次のイ及びロに掲げる額を合算した額のうちいずれか多い額
イ 前号に定める額に三分の二を乗じて得た額
ロ 当該遺族厚生年金の受給権者の老齢厚生年金の額(第四十四条第一項の規定により加給年金額が加算された老齢厚生年金にあつては、同項の規定を適用しない額とする。次条第三項及び第六十四条の二において同じ。)に二分の一を乗じて得た額

(年金額)
第四十三条 老齢厚生年金の額は、被保険者であつた全期間の平均標準報酬額(被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額に、別表各号に掲げる受給権者の区分に応じてそれぞれ当該各号に定める率(以下「再評価率」という。)を乗じて得た額の総額を、当該被保険者期間の月数で除して得た額をいう。附則第十七条の六第一項及び第二十九条第三項を除き、以下同じ。)の千分の五・四八一に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて得た額とする。

厚生年金保険法

本肢は、「年金額」に関する問題です。

上記根拠条文のとおり、遺族厚生年金の原則の年金額は「法43条1項の規定の例により計算した額」の4分の3に相当する額である。

その年金額は、原則的な年金額のため、繰下げによる加算額は含まれていません。

そのため問題文にある(繰下げによる加算額を含む。)の部分が誤りとなります。

本肢は×です。

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