労働基準法に定める労働時間に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
A 一つ
B 二つ
C 三つ
D 四つ
E 五つ
労働基準法 令和6年第5問 A
労働基準法第32条の2に定めるいわゆる1か月単位の変形労働時間制を適用するに当たっては、常時10人未満の労働者を使用する使用者であっても必ず就業規則を作成し、1か月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない定めをしなければならない。
法第32条の2第1項
根拠条文を確認します。
第三十二条の二 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間を平均し一週間当たりの労働時間が前条第一項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
労働基準法
本肢は、「1か月単位の変形労働時間制」に関する問題です。
常時10人未満の労働者を使用する使用者は、労使協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、1か月単位の変形労働時間制で労働させることができる、とされています。
もともと10人未満の労働者を使用する使用者には、就業規則の作成・届出義務が課されていないので、「必ず就業規則を作成」しなければならないわけではなく、労使協定や就業規則に準ずるものでもよいとされています。
本肢は×です。
労働基準法 令和6年第5問 B
使用者は、労働基準法第33条の「災害その他避けることのできない事由」に該当する場合であっても、同法第34条の休憩時間を与えなければならない。
法第33条第1項
根拠条文を確認します。
(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)
第三十三条 災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。労働基準法
本肢は、「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等」に関する問題です。
上記根拠条文のとおり、災害等による臨時の必要がある場合に例外的な取扱いが許されるのは「時間外労働」と「休日労働」です。
そのため、問題文にある「休憩時間」は例外とされていないため、使用者は、法33条の「災害その他避けることのできない事由」に該当する場合であっても、法34条の休憩時間を与えなければなりません。
本肢は○です。
労働基準法 令和6年第5問 C
労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務(テレワーク)においては、「情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと」さえ満たせば、労働基準法第38条の2に定めるいわゆる事業場外みなし労働時間制を適用することができる。
テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン
根拠となるガイドラインを確認します。
6 様々な労働時間制度の活用
(2) 労働時間の柔軟な取扱い
ウ 事業場外みなし労働時間制
テレワークにおいて、次の①②をいずれも満たす場合には、制度を適用することができる。①①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないことテレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン
本肢は、「テレワークにおける事業場外みなし労働時間制」に関する問題です。
上記ガイドラインにあるとおり、テレワークにおいて、次の①②をいずれも満たす場合には、「事業場外みなし労働時間制」を適用することができるとされています。
① 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
② 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
通常の「事業場外みなし労働時間制」と同じく、会社や使用者(上司)の監視下に置かれていない、フリーな状況であれば適用できる、ということになります。
本肢は×です。
労働基準法 令和6年第5問 D
使用者は、労働基準法第38条の3に定めるいわゆる専門業務型裁量労働制を適用するに当たっては、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、専門業務型裁量労働制を適用することについて「当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかつた当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。」を定めなければならない。
則第24条の2の2第3項1号
根拠条文を確認します。
第二十四条の二の二
③法第三十八条の三第一項第六号の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一使用者は、法第三十八条の三第一項の規定により労働者を同項第一号に掲げる業務に就かせたときは同項第二号に掲げる時間労働したものとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかつた当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。労働基準法施行規則
本肢は、「専門業務型裁量労働制」に関する問題です。
上記根拠条文のとおり、専門業務型裁量労働制において
①適用について労働者の同意を得なければならない
②同意をしなかった労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない
旨を、労使協定にさだめたうえで適用するとされています。
本肢は○です。
労働基準法 令和6年第5問 E
労働基準法第41条の2に定めるいわゆる高度プロフェッショナル制度は、同条に定める委員会の決議が単に行われただけでは足りず、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を所轄労働基準監督署長に届け出ることによって、この制度を導入することができる。
法第41条の2第1項
根拠条文を確認します。
第四十一条の二 賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下この項において「対象労働者」という。)であつて書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを当該事業場における第一号に掲げる業務に就かせたときは、この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。ただし、第三号から第五号までに規定する措置のいずれかを使用者が講じていない場合は、この限りでない。
本肢は「高度プロフェッショナル制度」に関する問題です。
上記根拠条文のとおり、高度プロフェッショナル制度にかかる労使委員会の決議は、所轄の労働基準監督署⻑に届け出る必要があります。
本肢は○です。
以上から、正しい選択肢はB・D・Eとなるため「C 三つ」が正解となります。