社会保険労務士試験【労働基準法】<令和6年第3問>

スポンサーリンク

労働基準法に定める労働契約等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

労働基準法 令和6年第3問 A

使用者は、労働基準法第14条第2項に基づき厚生労働大臣が定めた基準により、有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。

解答の根拠

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について

根拠通達を確認します。

2 使用者は、有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について

本肢は、「有期労働契約の更新」に関する問題です。

本肢は上記根拠通達の通りの問題です。

無期契約には「解雇予告」という概念がありますが、有期契約にも同じ趣旨の考え方を適用し、当該契約の期間の満了する日の30日前までに、更新をしない旨の予告をしなければならない、とされています、

本肢は○です。

労働基準法 令和6年第3問 B

使用者は、労働基準法第15条第1項の規定により、労働者に対して労働契約の締結と有期労働契約(期間の定めのある労働契約)の更新のタイミングごとに、「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」に加え、「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲」についても明示しなければならない。

解答の根拠

則第5条第1項第1号の3

根拠条文を確認します。

第五条 使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。ただし、第一号の二に掲げる事項については期間の定めのある労働契約(以下この条において「有期労働契約」という。)であつて当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限り、第四号の二から第十一号までに掲げる事項については使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。
一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)

労働基準法施行規則

本肢は、「労働契約の明示事項」に関する問題です。

本肢は上記根拠条文通りの問題です。

労働条件で明示すべき事項については、就業規則の明示事項と比較しながらぜひ覚えておきましょう。

また、上記根拠条文のかっこ内の記載(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)は、令和6年の法改正事項ですので、併せておさえておきましょう。

本肢は○です。

労働基準法 令和6年第3問 C

使用者が労働者に対して損害賠償の金額をあらかじめ約定せず、現実に生じた損害について賠償を請求することは、労働基準法第16条が禁止するところではないから、労働契約の締結に当たり、債務不履行によって使用者が損害を被った場合はその実損害額に応じて賠償を請求する旨の約定をしても、労働基準法第16条に抵触するものではない。

解答の根拠

労働基準法の施行に関する件(昭和22年9月13日発基17号)

根拠条文を確認します。

法第一六条関係
(一) 本条は、金額を予定することを禁止するのであつて、現実に生じた損害について賠償を請求することを禁止する趣旨ではないこと

労働基準法の施行に関する件(昭和22年9月13日発基17号)

本肢は、「賠償予定の禁止」に関する問題です。

労働基準法第16条で禁止されているのは「賠償予定の禁止」です。

つまり、仕事上で会社の物品を破損するなどした場合は、全額損害賠償してもらうよ!と予め約束しておくことは禁止されています。

趣旨としては「損害賠償額が定まっていない状態で、全額損害賠償することを約束させることが、労働者にとって思わぬ足かせとなってしまうことを防ぐ」ことにあります。

したがって、そのような約束をせずに、実際に本人が会社の備品を破損してしまった場合などに、現実に生じた損害について賠償を会社が請求することまでは禁止されていません。

もしこれまでも禁止してしまうと、労働者は会社の備品等を壊しまくっても会社は何も請求できない…となってしまいます。

本肢は○です。

労働基準法 令和6年第3問 D

使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、貯蓄金の管理が労働者の預金の受入であるときは、利子をつけなければならない。

解答の根拠

法第18条第4項

根拠条文を確認します。

(強制貯金)
第十八条
④使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、貯蓄金の管理が労働者の預金の受入であるときは、利子をつけなければならない。この場合において、その利子が、金融機関の受け入れる預金の利率を考慮して厚生労働省令で定める利率による利子を下るときは、その厚生労働省令で定める利率による利子をつけたものとみなす。

労働基準法

本肢は、「強制貯金」に関する問題です。

本肢は上記根拠条文通りの問題です。

本肢は○です。

労働基準法 令和6年第3問 E

労働基準法第23条は、労働の対価が完全かつ確実に退職労働者又は死亡労働者の遺族の手に渡るように配慮したものであるが、就業規則において労働者の退職又は死亡の場合の賃金支払期日を通常の賃金と同一日に支払うことを規定しているときには、権利者からの請求があっても、7日以内に賃金を支払う必要はない。

解答の根拠

法第23条第1項

根拠条文を確認します。

(金品の返還)
第二十三条 使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。

労働基準法

本肢は「金品の返還」に関する問題です。

上記根拠条文のとおり、金品の返還について「使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない」と規定されています。

本条は強行法規のため、就業規則において会社独自の定めとして、問題文のように「労働者の退職又は死亡の場合の賃金支払期日を通常の賃金と同一日に支払う」というように規定しているときでも、権利者からの請求があれば、その就業規則の定めとは関係なく、法の定めに従い7日以内に賃金を支払う必要があります。

本肢は×となり、本問の正解となります。

タイトルとURLをコピーしました