社会保険労務士試験【厚生年金保険法】<令和5年第3問>

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厚生年金保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

厚生年金保険法 令和5年第3問 A

任意適用事業所の事業主は、厚生労働大臣の認可を受けることにより当該事業所を適用事業所でなくすることができるが、このためには、当該事業所に使用される者の全員の同意を得ることが必要である。なお、当該事業所には厚生年金保険法第12条各号のいずれかに該当する者又は特定4分の3未満短時間労働者に該当する者はいないものとする。

解答の根拠

法第8条第2項

根拠条文を確認します。

第八条 第六条第三項の適用事業所の事業主は、厚生労働大臣の認可を受けて、当該事業所を適用事業所でなくすることができる。
2 前項の認可を受けようとするときは、当該事業所の事業主は、当該事業所に使用される者(第十二条に規定する者を除く。)の四分の三以上の同意を得て、厚生労働大臣に申請しなければならない。

厚生年金保険法

本肢は、「任意適用事業所」に関する問題です。

任意適用事業所は、その名の通り、社会保険の適用事業所となるかどうかは「任意」です。

そのため、所定の条件・手続きをもって、適用事業所でなくすることができます。

その条件は、問題文にある「全員の同意」ではなく、上記根拠条文のとおり「当該事業所に使用される者の4分の3以上の同意」となります。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和5年第3問 B

死亡した被保険者に死亡の当時生計を維持していた妻と子があった場合、妻が国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有しない場合であって、子が当該遺族基礎年金の受給権を有していても、その間、妻に対する遺族厚生年金は支給される

解答の根拠

法第66条第2項

根拠条文を確認します。

第六十六条 
2 配偶者に対する遺族厚生年金は、当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡について、配偶者が国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有しない場合であつて子が当該遺族基礎年金の受給権を有するときは、その間、その支給を停止する。ただし、子に対する遺族厚生年金が次条の規定によりその支給を停止されている間は、この限りでない。

厚生年金保険法

本肢は、「支給停止」に関する問題です。

配偶者への遺族厚生年金は、上記根拠条文のとおり、「配偶者が国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有しない場合であって子が当該遺族基礎年金の受給権を有するときは、その間、その支給を停止する」と規定されています。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和5年第3問 C

適用事業所に使用される70歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者となるが、船舶所有者に臨時に使用される船員であって日々雇い入れられる者は被保険者とはならない。

解答の根拠

法第12条第1項第1号

根拠条文を確認します。

(適用除外)
第十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、第九条及び第十条第一項の規定にかかわらず、厚生年金保険の被保険者としない。
一 臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)であつて、次に掲げるもの。ただし、イに掲げる者にあつては一月を超え、ロに掲げる者にあつては定めた期間を超え、引き続き使用されるに至つた場合を除く。

厚生年金保険法

本肢は、「適用除外」に関する問題です。

原則として、「臨時に使用される者」は厚生年金保険の適用除外となります。

しかし、かっこ書きで例外として「船員所有者に使用される船員を除く」とあります。

したがって、臨時に使用される者であっても、「船舶所有者に使用される船員」は被保険者となります。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和5年第3問 D

老齢厚生年金における加給年金額の加算対象となる配偶者が、繰上げ支給の老齢基礎年金の支給を受けるときは、当該配偶者に係る加給年金額は支給が停止される。

解答の根拠

法第46条第6項

根拠条文を確認します。

(支給停止)
第四十六条
6 第四十四条第一項の規定によりその額が加算された老齢厚生年金については、同項の規定によりその者について加算が行われている配偶者が、老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が二百四十以上であるものに限る。)、障害厚生年金、国民年金法による障害基礎年金その他の年金たる給付のうち、老齢若しくは退職又は障害を支給事由とする給付であつて政令で定めるものの支給を受けることができるときは、その間、同項の規定により当該配偶者について加算する額に相当する部分の支給を停止する。

厚生年金保険法

本肢は、「支給停止」に関する問題です。

配偶者に関する加給年金額の支給停止要件は、下記のようになります。

●加算が行われている配偶者が次の給付を受けることができるときには、加給年金額は支給停止となる
・ 老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上であるものに限る。)
・ 障害厚生年金
・ 障害基礎年金
・ その他の年金たる給付のうち、老齢若しくは退職又は障害を支給事由とする給付であって政令で定めるもの。

上記の中に、問題文にある「老齢基礎年金」は含まれておりませんので、「繰り上げ支給の老齢基礎年金」を配偶者が受給していたとしても、加給年金は停止されません、

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和5年第3問 E

被保険者であった70歳以上の者で、日々雇い入れられる者として船舶所有者以外の適用事業所に臨時に使用されている場合(1か月を超えて引き続き使用されるに至っていないものとする。)、その者は、厚生年金保険法第27条で規定する「70歳以上の使用される者」には該当しない。

解答の根拠

法第27条第1項

根拠条文を確認します。

(届出)
第二十七条 適用事業所の事業主又は第十条第二項の同意をした事業主(第百条第一項及び第四項、第百二条第二項並びに第百三条を除き、以下単に「事業主」という。)は、厚生労働省令で定めるところにより、被保険者(被保険者であつた七十歳以上の者であつて当該適用事業所に使用されるものとして厚生労働省令で定める要件に該当するもの(以下「七十歳以上の使用される者」という。)を含む。)の資格の取得及び喪失(七十歳以上の使用される者にあつては、厚生労働省令で定める要件に該当するに至つた日及び当該要件に該当しなくなつた日)並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。

厚生年金保険法

本肢は「適用除外」に関する問題です。

本肢は解答に至るまでのプロセスがややこしいので、順を追って整理します。

①「70歳以上の使用される者」の要件は、上記根拠条文のとおり、
(1)法第27条に規定する適用事業所に使用される者
かつ
(2)法第12条各号に定める者(適用除外)に該当する者でないこと
となります。

②問題文にある「日々雇い入れられる者として船舶所有者以外の適用事業所に臨時に使用されている場合(1か月を超えて引き続き使用されるに至っていないものとする。)」に該当する者は、法第12条第1項第1号に定める適用除外に該当します(肢Cの解説を参照)

③以上、①・②から問題文のケースは、法第27条で規定する「70歳以上の使用される者」には該当しない、となります。

本肢は○となり、本問の正解となります。

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