社会保険労務士試験【厚生年金保険法】<令和5年第1問>

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厚生年金保険法第26条に規定する3歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例(以下本問において「本特例」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

厚生年金保険法 令和5年第1問 A

本特例についての実施機関に対する申出は、第1号厚生年金被保険者又は第4号厚生年金被保険者はその使用される事業所の事業主を経由して行い、第2号厚生年金被保険者又は第3号厚生年金被保険者は事業主を経由せずに行う。

解答の根拠

法第26条第1項・第4項

根拠条文を確認します。

(三歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例)
第二十六条 三歳に満たない子を養育し、又は養育していた被保険者又は被保険者であつた者が、主務省令で定めるところにより実施機関に申出(被保険者にあつては、その使用される事業所の事業主を経由して行うものとする。)をしたときは、当該子を養育することとなつた日(厚生労働省令で定める事実が生じた日にあつては、その日)の属する月から次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日の属する月の前月までの各月のうち、その標準報酬月額が当該子を養育することとなつた日の属する月の前月(当該月において被保険者でない場合にあつては、当該月前一年以内における被保険者であつた月のうち直近の月。以下この条において「基準月」という。)の標準報酬月額(この項の規定により当該子以外の子に係る基準月の標準報酬月額が標準報酬月額とみなされている場合にあつては、当該みなされた基準月の標準報酬月額。以下この項において「従前標準報酬月額」という。)を下回る月(当該申出が行われた日の属する月前の月にあつては、当該申出が行われた日の属する月の前月までの二年間のうちにあるものに限る。)については、従前標準報酬月額を当該下回る月の第四十三条第一項に規定する平均標準報酬額の計算の基礎となる標準報酬月額とみなす。
一~六(略)
2・3(略)
4 第二号厚生年金被保険者であり、若しくはあつた者又は第三号厚生年金被保険者であり、若しくはあつた者について、第一項の規定を適用する場合においては、同項中「申出(被保険者にあつては、その使用される事業所の事業主を経由して行うものとする。)」とあるのは、「申出」とする。

厚生年金保険法

本肢は、「三歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例」に関する問題です。

当該特例の申し出に関しては、下記のように整理することができます。

●第1号・第4号被保険者…事業主経由で申出
●第2号・第3号被保険者…事業主経由しないで申出

2号は国家公務員共済、3号は地方公務員共済の被保険者なので、事業主という概念がありません。

本肢は○となり、本問の正解となります。

厚生年金保険法 令和5年第1問 B

本特例が適用される場合には、老齢厚生年金の額の計算のみならず、保険料額の計算に当たっても、実際の標準報酬月額ではなく、従前標準報酬月額が用いられる。

解答の根拠

法第26条第1項

根拠条文を確認します。

(三歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例)
第二十六条 三歳に満たない子を養育し、又は養育していた被保険者又は被保険者であつた者が、主務省令で定めるところにより実施機関に申出(被保険者にあつては、その使用される事業所の事業主を経由して行うものとする。)をしたときは、当該子を養育することとなつた日(厚生労働省令で定める事実が生じた日にあつては、その日)の属する月から次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日の属する月の前月までの各月のうち、その標準報酬月額が当該子を養育することとなつた日の属する月の前月(当該月において被保険者でない場合にあつては、当該月前一年以内における被保険者であつた月のうち直近の月。以下この条において「基準月」という。)の標準報酬月額(この項の規定により当該子以外の子に係る基準月の標準報酬月額が標準報酬月額とみなされている場合にあつては、当該みなされた基準月の標準報酬月額。以下この項において「従前標準報酬月額」という。)を下回る月(当該申出が行われた日の属する月前の月にあつては、当該申出が行われた日の属する月の前月までの二年間のうちにあるものに限る。)については、従前標準報酬月額を当該下回る月の第四十三条第一項に規定する平均標準報酬額の計算の基礎となる標準報酬月額とみなす。

本肢は、「三歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例」に関する問題です。

そもそものこの特例の趣旨を再度確認しておきましょう。

本特例は、3歳に満たない子を養育している期間、報酬が低下していまうことが多いので、それが将来の年金額に影響しないようにするものです。

特例対応として、老齢厚生年金の額の計算には実際の(低下したあとの)標準報酬月額ではなく、従前の(低下する前の)標準報酬月額を用います。

問題文では、「保険料額の計算に当たっても」としていますが、保険料も従前の(低下する前の高い)標準報酬月額をベースに計算されてしまったら、特例の意味がありません。

・保険料…(低下したあとの)標準報酬月額
・老齢厚生年金…(低下する前の)標準報酬月額

をベースにするため「特例対応」であるわけですね。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和5年第1問 C

甲は、第1号厚生年金被保険者であったが、令和4年5月1日に被保険者資格を喪失した。その後、令和5年6月15日に3歳に満たない子の養育を開始した。更に、令和5年7月1日に再び第1号厚生年金被保険者の被保険者資格を取得した。この場合、本特例は適用される。

解答の根拠

法第26条第1項

根拠条文は肢Bと同じです。

本肢は、「三歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例」に関する問題です。

肢Bでも解説したように、本特例では「従前の(低下する前の)標準報酬月額」をベースに老齢厚生年金の計算をします。

しかし、今回の問題文のケースのように、
・令和4年5月1日…資格喪失
・令和5年6月15日…3歳に満たない子の養育を開始
という状況では、「従前の標準報酬月額」がない状態です。

このような場合は…「その月前1年以内の直近の被保険者であった月の標準報酬月額」が
・あり…それを用いる
・なし…特例の適用対象外

となります。

特例を適用したくても、「従前の標準報酬月額」が1年さかのぼってもないので、致し方なし…ですね。

問題文のケースも、資格喪失から1年以上空いてしまっていますので、特例の適用はありません。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和5年第1問 D

第1子の育児休業終了による職場復帰後に本特例が適用された被保険者乙の従前標準報酬月額は30万円であったが、育児休業等終了時改定に該当し標準報酬月額は24万円に改定された。その後、乙は第2子の出産のため厚生年金保険法第81条の2の2第1項の適用を受ける産前産後休業を取得し、第2子を出産し産後休業終了後に職場復帰したため第2子の養育に係る本特例の申出を行った。第2子の養育に係る本特例が適用された場合、被保険者乙の従前標準報酬月額は24万円である。

解答の根拠

法第26条第3項

根拠条文を確認します。

(三歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例)
第二十六条
3 第一項第六号の規定に該当した者(同項の規定により当該子以外の子に係る基準月の標準報酬月額が基準月の標準報酬月額とみなされている場合を除く。)に対する同項の規定の適用については、同項中「この項の規定により当該子以外の子に係る基準月の標準報酬月額が標準報酬月額とみなされている場合にあつては、当該みなされた基準月の標準報酬月額」とあるのは、「第六号の規定の適用がなかつたとしたならば、この項の規定により当該子以外の子に係る基準月の標準報酬月額が標準報酬月額とみなされる場合にあつては、当該みなされることとなる基準月の標準報酬月額」とする。

厚生年金保険法

本肢は、「三歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例」に関する問題です。

本特例には、上記根拠条文のとおり、「第2子に係る保険料免除の対象となる産前産後休業開始によって、第1子に係る本特例の終了がなかったとしたならば、第2子の基準月において、第1子の従前標準報酬月額のみなし規定が適用される場合、その額を第2子の従前標準報酬月額とすることができる」というルールがあります。

そのため、問題文のケースでは、従前の標準報酬月額として、24万円ではなく30万円を維持してあげる対応をとるわけですね。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和5年第1問 E

本特例の適用を受けている被保険者の養育する第1子が満3歳に達する前に第2子の養育が始まり、この第2子の養育にも本特例の適用を受ける場合は、第1子の養育に係る本特例の適用期間は、第2子が3歳に達した日の翌日の属する月の前月までとなる。

解答の根拠

法第26条第1項第3号

根拠条文を確認します。

(三歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例)
第二十六条 三歳に満たない子を養育し、又は養育していた被保険者又は被保険者であつた者が、主務省令で定めるところにより実施機関に申出(被保険者にあつては、その使用される事業所の事業主を経由して行うものとする。)をしたときは、当該子を養育することとなつた日(厚生労働省令で定める事実が生じた日にあつては、その日)の属する月から次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日の属する月の前月までの各月のうち、その標準報酬月額が当該子を養育することとなつた日の属する月の前月(当該月において被保険者でない場合にあつては、当該月前一年以内における被保険者であつた月のうち直近の月。以下この条において「基準月」という。)の標準報酬月額(この項の規定により当該子以外の子に係る基準月の標準報酬月額が標準報酬月額とみなされている場合にあつては、当該みなされた基準月の標準報酬月額。以下この項において「従前標準報酬月額」という。)を下回る月(当該申出が行われた日の属する月前の月にあつては、当該申出が行われた日の属する月の前月までの二年間のうちにあるものに限る。)については、従前標準報酬月額を当該下回る月の第四十三条第一項に規定する平均標準報酬額の計算の基礎となる標準報酬月額とみなす。
一~二(略)
三 当該子以外の子についてこの条の規定の適用を受ける場合における当該子以外の子を養育することとなつたときその他これに準ずる事実として厚生労働省令で定めるものが生じたとき。
四~六(略)

厚生年金保険法

本肢は「三歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例」に関する問題です。

問題文のケースは、上記根拠条文のとおり、「第1子の養育に係る本特例の適用期間は、第2子を養育することとなるに至った日の翌日の属する月の前月まで」となります。

問題文では「第2子が3歳に達した日の翌日の属する月の前月まで」となっており、基準となる日が異なっているので注意しましょう。

本肢は×です。

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