健康保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
健康保険法 令和5年第8問 A
令和4年10月1日より、弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業に該当する個人事業所のうち、常時5人以上の従業員を雇用している事業所は、健康保険の適用事業所となったが、外国法事務弁護士はこの適用の対象となる事業に含まれない。
令第1条
根拠条文を確認します。
第一条 健康保険法(大正十一年法律第七十号。以下「法」という。)第三条第三項第一号レの政令で定める者は、次のとおりとする。
一 公証人
二 司法書士
三 土地家屋調査士
四 行政書士
五 海事代理士
六 税理士
七 社会保険労務士
八 沖縄弁護士に関する政令(昭和四十七年政令第百六十九号)第一条に規定する沖縄弁護士
九 外国法事務弁護士
十 弁理士健康保険法施行令
本肢は、「適用事業」に関する問題です。
弁護士や社労士などは、「士業」と呼ばれます。
基本的には、その弁護士や社労士お一人で仕事をするのですが、仕事の規模が大きくなると、人を雇って組織化している事務所も多いです。
その場合は、普通の企業同様に社会保険の対象(適用事業)となりますが、その士業の中には上記の通り問題文で「対象外」とされている「外国法事務弁護士」も含まれています。
本肢は×です。
健康保険法 令和5年第8問 B
強制適用事業所が、健康保険法第3条第3項各号に定める強制適用事業所の要件に該当しなくなった場合において、当該事業所の被保険者の2分の1以上が任意適用事業所となることを希望したときは、当該事業所の事業主は改めて厚生労働大臣に任意適用の認可を申請しなければならない。
法第32条
根拠条文を確認します。
第三十二条 適用事業所が、第三条第三項各号に該当しなくなったときは、その事業所について前条第一項の認可があったものとみなす。
本肢は、「適用事業所」に関する問題です。
適用事業所に勤務する労働者が、例えばどんどん減って要件を満たさなかった場合は、「その瞬間に適用事業所でなくなってしまう」わけでもなく、「適用事業所であり続けるために何か手続きをしなければならない」わけでもなく、「任意適用の認可があったものとみな」してそのまま適用事業所であり続けることができます。
これを「擬制任意適用」といいますので、ぜひ押さえておきましょう。
本肢は×です。
健康保険法 令和5年第8問 C
事業所の休業にかかわらず、事業主が休業手当を健康保険の被保険者に支給する場合、当該被保険者の健康保険の被保険者資格は喪失する。
昭和25年4月14日保発20号
根拠通達を確認します。
被保険者資格は、工場の休業に拘らず事業主が休業手当を支給する期間中は、被保険者資格を継続せしめること。
休業期間中に於ける健康保険及び厚生年金保険の取扱について(昭和25年4月14日保発20号)
本肢は、「被保険者資格」に関する問題です。
事業所がなんらかの事情で休業してしまい、その事業所に雇われている労働者に休業手当を支給している場合、健康保険の被保険者資格の取り扱いはどうなるのでしょうか。
その場合は、上記根拠通達のとおり、「被保険者資格を継続する」としています。
休業中で賃金が支払われていない場合でも、休業手当が支給されていれば、資格を継続させます。
本肢は×です。
健康保険法 令和5年第8問 D
被保険者等からの暴力等を受けた被扶養者の取扱いについて、当該被害者が被扶養者から外れるまでの間の受診については、加害者である被保険者を健康保険法第57条に規定する第三者と解することにより、当該被害者は保険診療による受診が可能であると取り扱う。
令和3年3月29日保保発0329第1号
根拠通達を確認します。
2 第三者行為による傷病についての保険診療による受診の取扱いについて
(前略)したがって、当該被害者が被扶養者から外れるまでの間の受診については、加害者である被保険者を健康保険法第57条に規定する第三者と解して同条の規定を適用し、当該被害者は、保険診療による受診が可能であると取り扱うことが同法の趣旨等に沿うものである。「被保険者等からの暴力等を受けた被扶養者の取扱い等について」の一部改正について(令和3年3月29日保保発0329第1号)
本肢は、「第三者行為による傷病」に関する問題です。
加害者…という言葉が出てくると一瞬考えてしまうかもしれませんが、冷静に考えると、例えば「夫(被保険者)から暴力を受けた妻(被扶養者)が、治療を受ける際には、健康保険を利用して保険診療の受診が可能である」ということで…
「そんなのそうでしょ」という内容です。
本肢は○となり、本問の正解となります。
健康保険法 令和5年第8問 E
保険料の免除期間について、育児休業等の期間と産前産後休業の期間が重複する場合は、産前産後休業期間中の保険料免除が優先されることから、育児休業等から引き続いて産前産後休業を取得した場合は、産前産後休業を開始した日の前日が育児休業等の終了日となる。この場合において、育児休業等の終了時の届出が必要である。
令和4年9月13日保保発0913第2号年管管発0913第1号
根拠通達を確認します。
第二 産休期間中の保険料免除の取扱いについて
2 保険料の免除期間
保険料の免除期間については、産休を開始した日の属する月から産休終了日の翌日が属する月の前月までとすること。育児休業等の期間と産休期間が重複する場合は、産休期間中の保険料免除が優先されることから、育児休業等から引き続いて産休を取得した場合は、産休を開始した日の前日を育児休業等の終了日とすること。この場合において、健康保険法施行規則(大正15年内務省令第36号)第135条第2項、厚生年金保険法施行規則(昭和29年厚生省令第37号)第25条の2第3項及び船員保険法施行規則(昭和15年厚生省令第5号)第161条第2項に規定する育児休業等の終了時の届出は不要であること。健康保険、船員保険及び厚生年金保険の産前産後休業期間中の保険料免除等の取扱いについて(令和4年9月13日保保発0913第2号年管管発0913第1号)
本肢は「産休期間中の保険料免除の取扱い」に関する問題です。
育児休業等の期間と産休期間が重複する場合…例えば、第一子の育児休業をしている間に第二子が生まれるような場合ですが、休業が重複する…ということはありえませんので、産休>育休として、第一子の育休を終了させて、第二子の産休が開始した、という取扱いになります。
法律に優劣・強い弱いがあるわけではありませんが、
・産休…労働基準法
・育休…育児介護休業法
で、やはり労働基準法が労働法のベース/産休は絶対に取得させなければいけない休業、ということで優先度が高い…とおさえておきましょう。
そしてこの場合は、上記根拠通達のとおり、「育児休業等の終了時の届出は不要であること」とされています。
保険者からすれば、第二子の産休開始の届出が、第一子の育休終了の届出と同一視できるからですね。
本肢は×です。