健康保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
健康保険法 令和5年第7問 A
現に海外にいる被保険者からの療養費の支給申請は、原則として、事業主等を経由して行わせ、その受領は事業主等が代理して行うものとし、国外への送金は行わない。
昭和56年2月25日庁保険発2号保険発10号
根拠通達を確認します。
第四 海外において療養を受けた場合の療養費等の支給に関する事項
(4) 現に海外にある被保険者からの療養費等の支給申請は、原則として、事業主等を経由して行わせ、その受領は事業主等が代理して行うものとし、国外への送金は行わないこと。健康保険法等の一部を改正する法律等の施行に係る事務取扱いについて(昭和56年2月25日庁保険発2号保険発10号)
本肢は、「海外において療養を受けた場合の療養費」に関する問題です。
海外で療養を受けた場合でも療養費の対象となりますが、その手続き(申請や給付金の支給)は、国内にいる事業主を経由して行う、とされています。
海外とのやり取りを協会けんぽや各健康保険組合が行っていたら、余計な手間やコストがかかってしまいますからね…。
本肢は○です。
健康保険法 令和5年第7問 B
健康保険組合は、毎年度終了後6か月以内に、厚生労働省令で定めるところにより、事業及び決算に関する報告書を作成し、厚生労働大臣に提出しなければならず、当該報告書は健康保険組合の主たる事務所に備え付けて置かなければならない。
令第24条第1項・第2項
根拠条文を確認します。
(報告書の提出)
第二十四条 健康保険組合は、毎年度終了後六月以内に、厚生労働省令で定めるところにより、事業及び決算に関する報告書を作成し、厚生労働大臣に提出しなければならない。
2 健康保険組合は、前項の書類を健康保険組合の主たる事務所に備え付けて置かなければならない。健康保険法施行令
本肢は、「報告書の提出」に関する問題です。
健康保険組合の事業・決算に関する報告書は…
・毎年度終了後6か月以内に厚生労働大臣に提出
・主たる事務所に備え付けておく
となります。
本肢は○です。
健康保険法 令和5年第7問 C
単に保険医の診療が不評だからとの理由によって、保険診療を回避して保険医以外の医師の診療を受けた場合には、療養費の支給は認められない。
昭和24年6月6日保文発1017号
根拠通達を確認します。
一 郡部等の地域において、その地方に保険医がいない場合又は保険医はいても、その者が傷病等のために、診療に従事することができない場合等には、勿論療養費の支給は認められるが、単に保険診療が不評の理由によつて保険診療を回避した場合には、療養費の支給は認められない
療養費の支給条件について(昭和24年6月6日保文発1017号)
本肢は、「療養費」に関する問題です。
治療に関する給付は、原則は「療養の給付(現物給付)」であり、それがなんらかの事情で給付できない場合に、金銭的な保障である「療養費」の対象となります。
今回の問題文のケースは、「郡部等の地域」…ということで、あまり医療的なインフラが整っていない地域を想定してください。
この場合、そもそも医者がいない、医者がいてもその医者が傷病等で診療ができない場合は、現物給付ができない…となります。
しかし、医者がいて、しかも普通に診療できるのに、「あの医者はヤブ医者だから診てもらいたくない」と患者本人が診療を拒否した場合は、現物給付ができない状態とは認められないため、療養費の対象外とされています。
本肢は○です。
健康保険法 令和5年第7問 D
一般労働者派遣事業の事業所に雇用される登録型派遣労働者は、派遣就業に係る1つの雇用契約の終了後、1か月以内に同一の派遣元事業主のもとでの派遣就業に係る次回の雇用契約(1か月以上のものに限る。)が確実に見込まれる場合であっても、前回の雇用契約を終了した日の翌日に被保険者資格を喪失する。
平成27年9月30日保保発0930第9号年管管発0930第11号
根拠通達を確認します。
1.被保険者資格の取扱い
一般労働者派遣事業(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条に規定する一般労働者派遣事業をいう。)の事業所に雇用される派遣労働者のうち常時雇用される労働者以外の者(以下「登録型派遣労働者」という。)の適用については、派遣就業に係る一の雇用契約の終了後、最大1月以内に、同一の派遣元事業主のもとでの派遣就業に係る次回の雇用契約(1月以上のものに限る。)が確実に見込まれるときは、使用関係が継続しているものとして取り扱い、被保険者資格は喪失させないこととして差し支えないこと。「派遣労働者に対する社会保険適用の取扱いについて」の一部改正について(平成27年9月30日保保発0930第9号年管管発0930第11号)
本肢は、「派遣労働者に対する社会保険適用の取扱い」に関する問題です。
派遣労働の種類は…
・登録型…派遣会社に登録をしておいて、仕事が発生するごとに雇用される
・常用型…派遣会社に常に雇用されている
と2つに分かれます。
本肢では、前者の「登録型」の社会保険資格に関して問われています。
上記のとおり、登録型は「仕事が発生するたびに雇用される」ため、原則的にその仕事が無くなればいったん雇用関係がなくなり、次の仕事の待機状態になります。
そのため、原則的には「資格喪失」となります。
しかし、現在の仕事が終わった後、比較的短期間(1か月以内)に、同一の派遣会社にて次の仕事に従事する見込みがある場合は、わざわざ資格喪失をするよりも、そのまま資格を継続した方が手間もかかりません。
本肢は×となり、本問の正解となります。
健康保険法 令和5年第7問 E
適用事業所に臨時に使用される者で、当初の雇用期間が2か月以内の期間を定めて使用される者であっても、就業規則や雇用契約書その他の書面において、その雇用契約が更新される旨又は更新される場合がある旨が明示されていることなどから、2か月以内の雇用契約が更新されることが見込まれる場合には、最初の雇用契約期間の開始時から被保険者となる。
令和4年9月9日保保発0909第1号・年管管発0909第4号
根拠通達を確認します。
問1 なぜ健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の勤務期間要件(2月要件)を見直すのか。
(答) 今般の見直し前において、「2月以内の期間を定めて使用される者」は、臨時に使用される者として適用除外とされており、その後「所定の期間を超え、引き続き使用されるに至った場合」には、その時点から被保険者資格を取得することとし、最初の雇用契約の期間は適用除外とする取扱いとされていました。そのため、より雇用の実態に即した健康保険・厚生年金保険の適切な適用を図る観点から、「2月以内の期間を定めて使用される者」について、「当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの」との要件を追加し、契約の更新等により実際には最初の雇用契約の期間を超えて継続して使用されることが見込まれる場合は、最初の雇用契約の期間から被保険者資格を取得するよう規定しました。
年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の施行(令和4年10月施行分)に伴う事務の取扱いに関するQ&A集の送付について(令和4年9月9日保保発0909第1号・年管管発0909第4号)
本肢は「被保険者資格の勤務期間要件(2月要件)」に関する問題です。
原則として、「2月以内の期間を定めて使用される者」は、臨時に使用される者として社会保険の適用除外とされており、2月が経過して継続雇用した場合には、その時点から資格を取得することとなります。
しかし、おそらく実務的には継続雇用される方が大半なのだと思います。
さらに要件を「当初から2月を超えて継続雇用する見込みがないもの」と、対象外とするケースを絞りこみ、当初から2月以上継続する見込みがある場合には、最初から資格取得をする運用ルールとなりました。
本肢は○です。