社会保険労務士試験【雇用保険法】<令和5年第3問>

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雇用保険法における賃金に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

雇用保険法 令和5年第3問 A

退職金相当額の全部又は一部を労働者の在職中に給与に上乗せする等により支払う、いわゆる「前払い退職金」は、臨時に支払われる賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金に該当する場合を除き、原則として、賃金日額の算定の基礎となる賃金の範囲に含まれる。

解答の根拠

雇用保険に関する業務取扱要領 50503

根拠要領を確認します。

50503 (3)賃金日額の算定の基礎に算入されないものの例
イ 退職金
…ただし、退職金相当額の全部又は一部を労働者の在職中に給与に上乗せする等により支払う、いわゆる「前払い退職金」は、臨時に支払われる賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金に該当する場合を除き、原則として、賃金日額の算定の基礎となる賃金の範囲に含まれるものである。

雇用保険に関する業務取扱要領

本肢は、「賃金日額の算定」に関する問題です。

退職金は、退職後に支払われるので「退職」金ですが、近年、その原資を在職中に支給する仕組みである「前払い退職金」を設ける企業も増えてきています。

この「前払い退職金」は「退職金」と名前がついているものの、実質的には「給与」と変わりありませんので、上記根拠要領のとおり「賃金日額の算定の基礎となる賃金の範囲に含まれる」となります。

本肢は○です。

雇用保険法 令和5年第3問 B

支給額の計算の基礎が月に対応する住宅手当の支払が便宜上年3回以内にまとめて支払われる場合、当該手当は賃金日額の算定の基礎に含まれない。

解答の根拠

雇用保険に関する業務取扱要領 50453

根拠要領を確認します。

50453 (3) 「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」の意義
ロ 単に支払い事務の便宜等のために年間の給与回数が3回以内となるものは「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」に該当しない。
 したがって、例えば通勤手当、住宅手当等その支給額の計算の基礎が月に対応する手当が支払の便宜上年3回以内にまとめて支払われた場合には、当該手当は賃金日額の算定の基礎に含まれることとなる。

雇用保険に関する業務取扱要領

本肢は、「賃金日額の算定」に関する問題です。

原則として「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」は、賃金日額の算定の基礎に含まれません。

しかし、もともとは毎月支給している・月額で設定されている通勤手当や住宅手当等が、何かしらの理由で年3回以内にまとめて支払われた場合は、その原則に該当せずに、賃金日額の算定の基礎に含めます。

もしこれを含めなくてよい…としてしまいますと、なんでもかんでも数か月分をまとめて支給して賃金日額の算定の基礎となる賃金を低くして、保険料を抑えようとする脱法的な対応を許すことになってしまいますので…。

本肢は×となり、本問の正解となります。

雇用保険法 令和5年第3問 C

基本手当の受給資格者が、失業の認定を受けた期間中に自己の労働によって収入を得た場合であって、当該収入を得るに至った日の後における最初の失業の認定日にその旨の届出をしないとき、公共職業安定所長は、当該失業の認定日において失業の認定をした日分の基本手当の支給の決定を次の基本手当を支給すべき日まで延期することができる。

解答の根拠

則第29条第2項

根拠条文を確認します。

(自己の労働による収入の届出)
第二十九条 
2 管轄公共職業安定所の長は、前項の届出をしない受給資格者について、法第十九条に規定する労働による収入があつたかどうかを確認するために調査を行う必要があると認めるときは、同項の失業の認定日において失業の認定をした日分の基本手当の支給の決定を次の基本手当を支給すべき日(以下この節において「支給日」という。)まで延期することができる。

雇用保険法施行規則

本肢は、「自己の労働による収入の届出」に関する問題です。

基本手当は、失業中に賃金がない不安定な状態をサポートするための仕組みですので、失業期間中に何かしらの収入があった場合は、管轄の公共職業安定所長に届け出る必要があります。

もし、その必要な申請を行っていない場合は、上記根拠要領のとおり、「当該失業の認定日において失業の認定をした日分の基本手当の支給の決定を次の基本手当を支給すべき日まで延期することができる」とされています。

本肢は○です。

雇用保険法 令和5年第3問 D

雇用保険法第18条第3項に規定する最低賃金日額は、同条第1項及び第2項の規定により変更された自動変更対象額が適用される年度の4月1日に効力を有する地域別最低賃金の額について、一定の地域ごとの額を労働者の人数により加重平均して算定した額に20を乗じて得た額を7で除して得た額とされる。

解答の根拠

則第28条の5

根拠条文を確認します。

(最低賃金日額の算定方法)
第二十八条の五 法第十八条第三項に規定する最低賃金日額は、同条第一項及び第二項の規定により変更された自動変更対象額が適用される年度の四月一日に効力を有する最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第九条第一項に規定する地域別最低賃金の額について、一定の地域ごとの額を労働者の人数により加重平均して算定した額に二十を乗じて得た額を七で除して得た額とする。

雇用保険法施行規則

本肢は、「最低賃金日額の算定方法」に関する問題です。

本肢は上記根拠要領のとおりです。

【最低賃金日額の算定方法】地域別最低賃金の全国加重平均 × 20 / 7

本肢は○です。

雇用保険法 令和5年第3問 E

介護休業に伴う勤務時間短縮措置により賃金が低下している期間に倒産、解雇等の理由により離職し、受給資格を取得し一定の要件を満たした場合であって、離職時に算定される賃金日額が当該短縮措置開始時に離職したとみなした場合に算定される賃金日額に比べて低い場合は、当該短縮措置開始時に離職したとみなした場合に算定される賃金日額により基本手当の日額が算定される。

解答の根拠

雇用保険に関する業務取扱要領 50661

根拠条文を確認します。

50661 (1) 原則
…このうち、育児休業、介護休業又は育児・介護に伴う勤務時間短縮措置(略)により賃金が喪失、低下している期間中又はその直後に倒産・解雇等の理由等により離職し、受給資格を取得し一定の要件を満たした場合については、離職時に算定される賃金日額が、短縮措置等開始時に離職したとみなした場合に算定される賃金日額に比べて低い場合は、短縮措置等開始時に離職したとみなした場合に算定される賃金日額により基本手当の日額を算定することとする。

雇用保険に関する業務取扱要領

本肢は「賃金日額の算定」に関する問題です。

育児・介護を理由とする「勤務時間短縮措置」…一般的には「時短勤務」と呼ばれることが多いですが、多くの企業が「ノーワーク・ノーペイ」の原則から、時短勤務者の賃金は時短時間に応じて低下させています。

しかし、当該社員が離職した場合、その低下した賃金の水準で基本手当の日額を算定すると不利になりますので、時短の制度の利用を控える…ということにもつながりかねません。

そのため実務上では、上記根拠要領のとおり、時短勤務する前の(フルで働いていた時の)賃金をベースとして、基本手当の日額を算定します。

本肢は○です。

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