社会保険労務士試験【労働者災害補償保険法】<令和5年第7問>

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新卒で甲会社に正社員として入社した労働者Pは、入社1年目の終了時に、脳血管疾患を発症しその日のうちに死亡した。Pは死亡前の1年間、毎週月曜から金曜に1日8時間甲会社で働くと同時に、学生時代からパートタイム労働者として勤務していた乙会社との労働契約も継続し、日曜に乙会社で働いていた。また、死亡6か月前から4か月前は丙会社において、死亡3か月前から死亡時までは丁会社において、それぞれ3か月の期間の定めのある労働契約でパートタイム労働者として、毎週月曜から金曜まで甲会社の勤務を終えた後に働いていた。Pの遺族は、Pの死亡は業務災害又は複数業務要因災害によるものであるとして所轄労働基準監督署長に対し遺族補償給付又は複数事業労働者遺族給付の支給を求めた。当該署長は、甲会社の労働時間のみでは業務上の過重負荷があったとはいえず、Pの死亡は業務災害によるものとは認められず、また甲会社と乙会社の労働時間を合計しても業務上の過重負荷があったとはいえないが、甲会社と丙会社・丁会社の労働時間を合計した場合には業務上の過重負荷があったと評価でき、個体側要因や業務以外の過重負荷により発症したとはいえないことから、Pの死亡は複数業務要因災害によるものと認められると判断した。Pの遺族への複数事業労働者遺族給付を行う場合における給付基礎日額の算定に当たって基礎とする額に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

A.甲会社につき算定した給付基礎日額である。
B.甲会社・乙会社それぞれにつき算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額である。
C.甲会社・丁会社それぞれにつき算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額である。
D、甲会社・丙会社・丁会社それぞれにつき算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額である。
E.甲会社・乙会社・丁会社それぞれにつき算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額である。

解答の根拠

則第9条の2の2第1項第1号

根拠条文を確認します。

(複数事業労働者に係る給付基礎日額の算定)
第九条の二の二 法第八条第三項の規定による複数事業労働者の給付基礎日額の算定は、所轄労働基準監督署長が、次に定めるところによつて行う。
 当該複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額とする。ただし、第九条第一項第五号の規定は、適用しない。

労働者災害補償保険法施行規則

本肢は、「複数事業労働者に係る給付基礎日額の算定」に関する問題です。

複数の事業で働く労働者について、給付基礎日額の算定はどのように行われるかが問われています。

まず、原則として、上記根拠条文のとおり、「当該複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額とする」と定められていますので、甲・乙・丙・丁それぞれで算定した給付基礎日額を合算するとなりそうです。

しかし、問題文をよく見ると、当該労働者は丙において「死亡6か月前から4か月前」は働いていたようですが、脳血管疾患を発症した日、つまり給付基礎日額の算定事由発生日においては働いていないことがわかります。また、算定事由発生日から前3か月間に就業期間がないことからも、丙は合算の対象とはなりません。

したがって、給付基礎日額の合算となるのは「甲・乙・丙」の3社となります。

正解は「E.甲会社・乙会社・丁会社それぞれにつき算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額である。」となります。

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