社会保険労務士試験【厚生年金保険法】<令和4年第10問>

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厚生年金保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

厚生年金保険法 令和4年第10問 A

常時5人の従業員を使用する個人経営の美容業の事業所については、法人化した場合であっても適用事業所とはならず、当該法人化した事業所が適用事業所となるためには、厚生労働大臣から任意適用事業所の認可を受けなければならない。

解答の根拠

法第6条第1項第2号

根拠条文を確認します。

(適用事業所)
第六条 次の各号のいずれかに該当する事業所若しくは事務所(以下単に「事業所」という。)又は船舶を適用事業所とする。
 次に掲げる事業の事業所又は事務所であつて、常時五人以上の従業員を使用するもの
(略)
 前号に掲げるもののほか、国、地方公共団体又は法人の事業所又は事務所であつて、常時従業員を使用するもの

厚生年金保険法

本肢は、「適用事業所」に関する問題です。

厚生年金保険の適用事業所の要件は、上記根拠条文に定義されています。

その第2項において、「国、地方公共団体又は法人の事業所又は事務所であって、常時従業員を使用するもの」に該当する事業所又は事務所は、強制適用事業所となるとされています。

設問の「美容業」は、「法人化した場合であっても」とありますので、常時従業員を使用するものに該当する場合、強制適用事業所になります。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和4年第10問 B

適用事業所に使用される70歳未満の者であって、2か月以内の期間を定めて臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)は、厚生年金保険法第12条第1号に規定する適用除外に該当せず、使用される当初から厚生年金保険の被保険者となる。

解答の根拠

法12条第1条第1号ロ

根拠条文を確認します。

(適用除外)
第十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、第九条及び第十条第一項の規定にかかわらず、厚生年金保険の被保険者としない。
 臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)であつて、次に掲げるもの。ただし、イに掲げる者にあつては一月を超え、ロに掲げる者にあつては定めた期間を超え、引き続き使用されるに至つた場合を除く。
 日々雇い入れられる者
ロ 二月以内の期間を定めて使用される者であつて、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの

厚生年金保険法

本肢は、「適用除外」に関する問題です。

上記根拠条文には「臨時に使用される者の適用除外」について規定されています。

イ 日々雇い入れられる者
ロ 2月以内の期間を定めて使用される者であって、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの

したがって、問題文のケースは上記ロに該当し、「適用除外」となります。

なお、上記根拠条文のロは、令和5年に法改正があり、「であって、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの」という部分が追加となっています。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和4年第10問 C

被保険者であった45歳の夫が死亡した当時、当該夫により生計を維持していた子のいない38歳の妻は遺族厚生年金を受けることができる遺族となり中高齢寡婦加算も支給されるが、一方で、被保険者であった45歳の妻が死亡した当時、当該妻により生計を維持していた子のいない38歳の夫は遺族厚生年金を受けることができる遺族とはならない。

解答の根拠

法第62条第1項 / 法第59条第1項

根拠条文を確認します。

第六十二条 遺族厚生年金(略)の受給権者である妻であつてその権利を取得した当時四十歳以上六十五歳未満であつたもの又は四十歳に達した当時当該被保険者若しくは被保険者であつた者の子で国民年金法第三十七条の二第一項に規定する要件に該当するもの(略)と生計を同じくしていたものが六十五歳未満であるときは、第六十条第一項第一号の遺族厚生年金の額に同法第三十八条に規定する遺族基礎年金の額に四分の三を乗じて得た額(その額に五十円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、五十円以上百円未満の端数が生じたときは、これを百円に切り上げるものとする。)を加算する。

(遺族)
第五十九条 遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母(以下単に「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」又は「祖父母」という。)であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(失そうの宣告を受けた被保険者であつた者にあつては、行方不明となつた当時。以下この条において同じ。)その者によつて生計を維持したものとする。ただし、妻以外の者にあつては、次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
 夫、父母又は祖父母については、五十五歳以上であること。
 子又は孫については、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあるか、又は二十歳未満で障害等級の一級若しくは二級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。

厚生年金保険法

本肢は、「遺族厚生年金・中高齢の寡婦加算」に関する問題です。

まず前段のケースを確認します。

中高年の寡婦加算について、妻の要件を整理しておきましょう。

●中高齢の寡婦加算にかかる妻の要件
① 所定の遺族厚生年金の権利を取得した当時40歳以上65歳未満であったもの
② 40歳に達した当時当該被保険者若しくは被保険者であった者の子で遺族基礎年金に規定する要件に該当するものと生計を同じくしていたもの

問題文の前段のケースは「子のいない38歳の妻」とありますので、①の年齢要件も満たしておらず、②の子の条件も満たしていないことから、中高齢の寡婦加算の支給対象外となります。

次に後段のケースを確認します。

問題文の後段のケースは「子のいない38歳の夫」とありますので、上記根拠条文にあるとおり「夫:55歳」という年齢要件を満たしておりませんので、支給対象外となります。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和4年第10問 D

障害等級2級の障害厚生年金の額は、老齢厚生年金の例により計算した額となるが、被保険者期間については、障害認定日の属する月の前月までの被保険者期間を基礎とし、計算の基礎となる月数が300に満たないときは、これを300とする。

解答の根拠

法第50条第1項 / 法第51条

根拠条文を確認します。

(障害厚生年金の額)
第五十条 障害厚生年金の額は、第四十三条第一項の規定の例により計算した額とする。この場合において、当該障害厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が三百に満たないときは、これを三百とする。

第五十一条 第五十条第一項に定める障害厚生年金の額については、当該障害厚生年金の支給事由となつた障害に係る障害認定日(略)の属する月後における被保険者であつた期間は、その計算の基礎としない。

厚生年金保険法

本肢は、「障害厚生年金」に関する問題です。

まず前段の、障害厚生年金の計算の基礎となる期間について確認します。

上記根拠条文(第51条)のとおり、「障害認定日の属する月後における被保険者期間は計算の基礎としない」とされています。

「月後」は「月後」でないことから、「障害認定日が属する月」が含みませんので、計算の基礎となる期間は「障害認定日が属する月まで」となります。

問題文には「障害認定日が属する月の前月まで」とありますので、誤りです。

次に後段の、「300月みなし」について確認します。

上記根拠条文(第50条)のとおり、「当該障害厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が300に満たないときは、これを300とする」とされていますので、後段は正しい内容となります。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和4年第10問 E

保険給付の受給権者が死亡し、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときにおいて、未支給の保険給付を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その1人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その1人に対しての支給は、全員に対してしたものとみなされる。

解答の根拠

法第37条第5項

根拠条文を確認します。

(未支給の保険給付)
第三十七条
 未支給の保険給付を受けるべき同順位者が二人以上あるときは、その一人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。

厚生年金保険法

本肢は「未支給の保険給付」に関する問題です。

本問は上記根拠条文のとおりの内容となります。

本肢は○となり、本問の正解となります。

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