健康保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
健康保険法 令和4年第5問 A
健康保険法第7条の14によると、厚生労働大臣又は全国健康保険協会理事長は、それぞれその任命に係る全国健康保険協会の役員が、心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認められるとき、又は職務上の義務違反があるときのいずれかに該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。また、全国健康保険協会理事長は、当該規定により全国健康保険協会理事を解任したときは、遅滞なく、厚生労働大臣に届け出るとともに、これを公表しなければならない。
法第7条の14
根拠条文を確認します。
(役員の解任)
健康保険法
第七条の十四 厚生労働大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至ったときは、その役員を解任しなければならない。
2 厚生労働大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号のいずれかに該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 理事長は、前項の規定により理事を解任したときは、遅滞なく、厚生労働大臣に届け出るとともに、これを公表しなければならない。
本肢は、「役員の解任」に関する問題です。
全国健康保険協会の役員が、上記根拠条文に規定されている事項(心身の故障・職務上の義務違反)に該当するときは、厚生労働大臣・理事長は当該役員を解任できる、とされています。
職務・職責を担えない状況なので、致し方ないですね。
さらに、ただ解任されて終わり…ではなく、
・厚生労働大臣への届出
・公表
が求められています。
本肢は○です。
健康保険法 令和4年第5問 B
適用事業所の事業主は、健康保険組合を設立しようとするときは、健康保険組合を設立しようとする適用事業所に使用される被保険者の2分の1以上の同意を得て、規約を作り、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。また、2以上の適用事業所について健康保険組合を設立しようとする場合においては、被保険者の同意は、各適用事業所について得なければならない。
法第12条
根拠条文を確認します。
第十二条 適用事業所の事業主は、健康保険組合を設立しようとするときは、健康保険組合を設立しようとする適用事業所に使用される被保険者の二分の一以上の同意を得て、規約を作り、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
健康保険法
2 二以上の適用事業所について健康保険組合を設立しようとする場合においては、前項の同意は、各適用事業所について得なければならない。
本肢は、「健康保険組合の設立」に関する問題です。
新たに健康保険組合を設立する場合は
①適用事業所の被保険者の1/2以上の同意
②規約の作成
③厚生労働大臣の認可を受ける
上記の手続きが必要です。
また、適用事業所が2つ以上ある場合は、上記①の同意は、各適用事業所において得る必要があります。
本肢は○です。
健康保険法 令和4年第5問 C
健康保険組合の監事は、組合会において、健康保険組合が設立された適用事業所(設立事業所)の事業主の選定した組合会議員及び被保険者である組合員の互選した組合会議員のうちから、それぞれ1人を選挙で選出する。なお、監事は、健康保険組合の理事又は健康保険組合の職員と兼ねることができない。
法第21条第4項・第5項
根拠条文を確認します。
(役員)
健康保険法
第二十一条
4 監事は、組合会において、設立事業所の事業主の選定した組合会議員及び被保険者である組合員の互選した組合会議員のうちから、それぞれ一人を選挙する。
5 監事は、理事又は健康保険組合の職員と兼ねることができない。
本肢は、「健康保険組合の監事」に関する問題です。
健康保険組合には、一般企業の「監査役」に相当する「監事」という役員が設置されます。
この監事については、上記根拠条文のとおり、
・設立事業所の事業主の選定した組合会議員+被保険者である組合員の互選した組合会議員
⇒それぞれ1人選出
・理事、健保組合の職員と兼務できない
とされています。
後者の方は、「監事の職務」…つまり「組合の業務の執行及び財産の状況を監査する」ことを考慮すると、兼務することは妥当ではないことがわかりますね。
チェックする人と、チェックされる人が同じ人では意味がないので。
本肢は○です。
健康保険法 令和4年第5問 D
被保険者の資格を喪失した日の前日まで引き続き1年以上被保険者(任意継続被保険者、特定退職被保険者又は共済組合の組合員である被保険者ではないものとする。)であった者が、被保険者の資格を喪失した日より6か月後に出産したときに、被保険者が当該出産に伴う出産手当金の支給の申請をした場合は、被保険者として受けることができるはずであった出産手当金の支給を最後の保険者から受けることができる。
法第106条 / 法第104条
根拠条文を確認します。
(資格喪失後の出産育児一時金の給付)
第百六条 一年以上被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後六月以内に出産したときは、被保険者として受けることができるはずであった出産育児一時金の支給を最後の保険者から受けることができる。(傷病手当金又は出産手当金の継続給付)
健康保険法
第百四条 被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き一年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者(第百六条において「一年以上被保険者であった者」という。)であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。
本肢は、「資格喪失後の出産手当金」に関する問題です。
本肢は平成19年の法改正事項になります。
それまでは、資格喪失後にも一定の条件を満たした場合は出産手当金が支給されていました。
しかし、法改正後は、資格喪失後の出産に関する保険給付は、上記根拠条文の第106条に規定されている「出産育児一時金」のみとなりました。
「資格喪失後の出産手当金」と混同しやすいのが、上記根拠条文の第104条に規定されている「出産手当金の継続給付」です。
・法改正により廃止…資格喪失「後」に出産手当金の支給条件を満たし給付を受ける
・現在も継続…資格喪失「時」に出産手当金の給付を受けており、資格喪失後も継続して給付を受ける
ごっちゃにならないようにしましょう。
本肢は×となり、本問の正解となります。
健康保険法 令和4年第5問 E
傷病手当金の支給を受けようとする者は、健康保険法施行規則第84条に掲げる事項を記載した申請書を保険者に提出しなければならないが、これらに加え、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病について、労災保険法(昭和22年法律第50号)、国家公務員災害補償法(昭和26年法律第191号。他の法律において準用し、又は例による場合を含む。)又は地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)若しくは同法に基づく条例の規定により、傷病手当金に相当する給付を受け、又は受けようとする場合は、その旨を記載した申請書を保険者に提出しなければならない。
則第84条第1項第10号
根拠条文を確認します。
(傷病手当金の支給の申請)
健康保険法施行規則
第八十四条
法第九十九条第一項の規定により傷病手当金の支給を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を保険者に提出しなければならない。
十 同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病について、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)、国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号。他の法律において準用し、又は例による場合を含む。)又は地方公務員災害補償法(昭和四十二年法律第百二十一号)若しくは同法に基づく条例の規定により、傷病手当金に相当する給付を受け、又は受けようとする場合は、その旨
本肢は「傷病手当金の支給の申請」に関する問題です。
こちらは条文そのままの問題です。
原則として、労災と健康保険は支給事由が異なる(業務上か業務外か)ため、併給されることはありません。
そのため、そのような状況になった場合は、しっかりと申請をしてくださいね、という規定になります。
本肢は○です。