被保険者及び被扶養者に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
健康保険法 令和4年第2問 A
被保険者の数が5人以上である適用事業所に使用される法人の役員としての業務(当該法人における従業員が従事する業務と同一であると認められるものに限る。)に起因する疾病、負傷又は死亡に関しては、傷病手当金を含めて健康保険から保険給付が行われる。
健康保険法の第1条(目的規定)等の改正に関するQ&Aについて(平成25年8月14日事務連絡)
根拠となる通達を確認します。
【質問3】
健康保険法第53条の2において、「法人の役員としての業務」のうち、「被保険者の数が5人未満である適用事業所に使用される法人の役員としての業務で厚生労働省令で定めるもの」が除外されているが、その趣旨はどのようなものか。また「厚生労働省令で定めるもの」とは具体的に何か。(回答)
健康保険法の第1条(目的規定)等の改正に関するQ&Aについて(平成25年8月14日事務連絡)
(趣旨について)
○ 平成15年7月1日以降、厚生労働省保険局通知(略)において、「被保険者が5人未満である適用事業所に所属する法人の代表者等であって、一般の従業員と著しく異ならないような労務に従事している者」については、その者の業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病に関しても、健康保険の保険給付の対象(傷病手当金を除く)としてきたところである。
今回の改正においても、その趣旨を踏まえ、被保険者が5人未満である適用事業所に使用される法人の役員については、その事業の実態を踏まえ、傷病手当金を含めて健康保険の保険給付の対象としたものである。
本肢は、「法人の役員」に関する問題です。
上記根拠通達のとおり、被保険者が5人未満である適用事業所に使用される法人の役員については、その事業の実態を踏まえ、健康保険給付の対象とする、とされています。
裏を返せば、「被保険者が5人以上の適用事業所の法人の役員」については、健康保険給付の対象外となるわけですね。
本肢は×となり、本問の正解となります。
健康保険法 令和4年第2問 B
適用事業所に新たに使用されることになったが、使用されるに至った日から自宅待機とされた場合は、雇用契約が成立しており、かつ、休業手当が支払われるときには、その休業手当の支払いの対象となった日の初日に被保険者の資格を取得する。また、当該資格取得時における標準報酬月額の決定については、現に支払われる休業手当等に基づき決定し、その後、自宅待機が解消したときは、標準報酬月額の随時改定の対象とする。
一時帰休等の措置がとられた場合における健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格及び標準報酬の取扱いについて(昭和50年3月29日保険発25号)
根拠となる通達を確認します。
1 被保険者資格の取扱い
(2) 自宅待機の場合
新たに使用されることとなつた者が、当初から自宅待機とされた場合の被保険者資格については、雇用契約が成立しており、かつ、休業手当等が支払われるときは、その休業手当等の支払の対象となつた日の初日に被保険者の資格を取得するものとすること。2 標準報酬の取扱い
一時帰休等の措置がとられた場合における健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格及び標準報酬の取扱いについて(昭和50年3月29日保険発25号)
(3) 自宅待機の場合
自宅待機に係る者の被保険者資格取得時における標準報酬の決定については、現に支払われる休業手当等に基づき報酬月額を算定し、標準報酬を決定すること。
本肢は、「自宅待機」に関する問題です。
まず前段部分の被保険者資格について。
上記根拠通達のとおり、新規採用者が入社日から自宅待機とされた場合で、休業手当が支払われるときは、現に働いていなくても、休業手当の支払いの対象となった日の初日に被保険者資格を取得する、とされています。
したがって、前段部分は正しいです。
次に後半部分です。
こちらも上記根拠通達のとおり、自宅待機者の標準報酬の決定は、休業手当等に基づき決定する、とされていますので、後段も正しいです。
以前、コロナが流行した際に、入社時点で自宅待機を命ずる機会が多かったと聞いております。
そのような場合の、被保険者資格取得や標準報酬報酬決定のルールとなります。
本肢は○です。
健康保険法 令和4年第2問 C
出産手当金の支給要件を満たす者が、その支給を受ける期間において、同時に傷病手当金の支給要件を満たした場合は、出産手当金の支給が優先され、支給を受けることのできる出産手当金の額が傷病手当金の額を上回っている場合は、当該期間中の傷病手当金は支給されない。
法第103条第1項
根拠条文を確認します。
(出産手当金と傷病手当金との調整)
健康保険法
第百三条 出産手当金を支給する場合(第百八条第三項又は第四項に該当するときを除く。)においては、その期間、傷病手当金は、支給しない。ただし、その受けることができる出産手当金の額(同条第二項ただし書の場合においては、同項ただし書に規定する報酬の額と同項ただし書の規定により算定される出産手当金の額との合算額)が、第九十九条第二項の規定により算定される額より少ないときは、その差額を支給する。
本肢は、「出産手当金と傷病手当金との調整」に関する問題です。
健康保険法以外にも併給調整のテーマがありますが、共通しているのは「原則として1人1給付」
今回の出産手当金と傷病手当金の調整も同じく、出産手当金が支給されている間は傷病手当金は支給されません。
但し書きにある「差額が生じた場合は、その差額を支給する」という点も含めて、おさえておきましょう。
本肢は○です。
健康保険法 令和4年第2問 D
任意継続被保険者となるためには、被保険者の資格喪失の日の前日まで継続して2か月以上被保険者(日雇特例被保険者、任意継続被保険者、特例退職被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)でなければならず、任意継続被保険者に関する保険料は、任意継続被保険者となった月から算定する。
法第3条第4項 / 法第157条第1項
根拠条文を確認します。
(定義)
第三条
4 この法律において「任意継続被保険者」とは、適用事業所に使用されなくなったため、又は第一項ただし書に該当するに至ったため被保険者(日雇特例被保険者を除く。)の資格を喪失した者であって、喪失の日の前日まで継続して二月以上被保険者(日雇特例被保険者、任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であったもののうち、保険者に申し出て、継続して当該保険者の被保険者となった者をいう。ただし、船員保険の被保険者又は後期高齢者医療の被保険者等である者は、この限りでない。(任意継続被保険者の保険料)
健康保険法
第百五十七条 任意継続被保険者に関する保険料は、任意継続被保険者となった月から算定する。
本肢は、「任意継続被保険者」に関する問題です。
まず前段の「任意継続被保険者となる要件」については、上記根拠条文のとおり、
・資格喪失日の前日まで継続して2か月以上被保険者であること
・本人からの申し出
となりますので、問題文のとおり、となります。
次に後段の「任意継続被保険者の保険料」ですが、こちらも上記根拠条文のとおり「任意継続被保険者となった月から算定する」とありますので、こちらも問題文のとおりとなります。
本肢は○です。
健康保険法 令和4年第2問 E
保険者は、被保険者(任意継続被保険者を除く。)に被保険者証を交付しようとするときは、これを事業主に送付しなければならないとされているが、保険者が支障がないと認めるときは、これを被保険者に送付することができる。
則第47条第3項
根拠条文を確認します。
(被保険者証の交付)
健康保険法施行規則
第四十七条
3 保険者は、第一項又は前項の規定により被保険者(任意継続被保険者を除く。以下この項及び次項において同じ。)に被保険者証を交付しようとするときは、これを事業主に送付しなければならない。ただし、保険者が支障がないと認めるときは、これを被保険者に送付することができる。
本肢は「被保険者証の交付」に関する問題です。
本問は条文そのままの問題です。
任意継続被保険者は当該事業主の企業を退職しているケースとなりますので、被保険者証の被保険者への直送を認めているわけですね。
本肢は○です。