社会保険制度の保険給付等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和4年第10問 A
児童手当の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。
児童手当法第15条
根拠条文を確認します。
(受給権の保護)
児童手当法
第十五条 児童手当の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。
本肢は、「受給権の保護」に関する問題です。
こちらは条文そのままの問題です。
もともと困っている人を救うのが保険の役割だとすると、受給権を譲渡したり、担保にして取り上げられてしまったり、差し押さえられてしまったら、保護につながらない…そのように考えていただければと思います。
本肢は○です。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和4年第10問 B
国民健康保険組合の被保険者が、業務上の事故により負傷し、労災保険法の規定による療養補償給付を受けることができるときは、国民健康保険法による療養の給付は行われない。
国民健康保険法第56条第1項
根拠条文を確認します。
(他の法令による医療に関する給付との調整)
国民健康保険法
第五十六条 療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、訪問看護療養費、特別療養費若しくは移送費の支給は、被保険者の当該疾病又は負傷につき、健康保険法、船員保険法、国家公務員共済組合法(他の法律において準用し、又は例による場合を含む。)、地方公務員等共済組合法若しくは高齢者の医療の確保に関する法律の規定によつて、医療に関する給付を受けることができる場合又は介護保険法の規定によつて、それぞれの給付に相当する給付を受けることができる場合には、行わない。労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)の規定による療養補償、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)の規定による療養補償給付、複数事業労働者療養給付若しくは療養給付、国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号。他の法律において準用する場合を含む。)の規定による療養補償、地方公務員災害補償法(昭和四十二年法律第百二十一号)若しくは同法に基づく条例の規定による療養補償その他政令で定める法令による医療に関する給付を受けることができるとき、又はこれらの法令以外の法令により国若しくは地方公共団体の負担において医療に関する給付が行われたときも、同様とする。
本肢は、「他の法令による医療に関する給付との調整」に関する問題です。
他の科目でも「併給調整」というテーマがありますが、原則的な考え方は共通です。
皆が保険料を出し合って財源に限りがある社会保険、同じ事由に対して重複して手当をしてあげる余裕はない…という感じでしょうか。
本肢は○です。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和4年第10問 C
児童手当の受給資格者が、次代の社会を担う児童の健やかな成長を支援するため、当該受給資格者に児童手当を支給する市町村(特別区を含む。以下本問において同じ。)に対し、当該児童手当の支払を受ける前に、内閣府令で定めるところにより、当該児童手当の額の全部又は一部を当該市町村に寄附する旨を申し出たときは、当該市町村は、内閣府令で定めるところにより、当該寄附を受けるため、当該受給資格者が支払を受けるべき児童手当の額のうち当該寄附に係る部分を、当該受給資格者に代わって受けることができる。
児童手当法第20条第1項
根拠条文を確認します。
(児童手当に係る寄附)
児童手当法
第二十条 受給資格者が、次代の社会を担う児童の健やかな成長を支援するため、当該受給資格者に児童手当を支給する市町村に対し、当該児童手当の支払を受ける前に、内閣府令で定めるところにより、当該児童手当の額の全部又は一部を当該市町村に寄附する旨を申し出たときは、当該市町村は、内閣府令で定めるところにより、当該寄附を受けるため、当該受給資格者が支払を受けるべき児童手当の額のうち当該寄附に係る部分を、当該受給資格者に代わつて受けることができる。
本肢は、「児童手当に係る寄附」に関する問題です。
自身の児童手当の全部・一部をそれを支給する立場の市町村に寄付する、という仕組みが児童手当法にあります。
他の社会保険関連法と異なる部分の一つに、児童手当には「所得制限」があります。(この記事を書いている2024年2月時点では、10月からの所得制限撤廃が予定されています)
つまり、これも限りある財源を有効に使う・真に必要な方へ手当をする、という観点から、所得が高い方への支給制限や、自身で寄付すると申し出るような仕組みがあるわけですね。
本肢は○です。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和4年第10問 D
船員保険の被保険者であった者が、令和3年10月5日にその資格を喪失したが、同日、疾病任意継続被保険者の資格を取得した。その後、令和4年4月11日に発した職務外の事由による疾病若しくは負傷又はこれにより発した疾病につき療養のため職務に服することができない状況となった場合は、船員保険の傷病手当金の支給を受けることはできない。
船員保険法第69条第4項
根拠条文を確認します。
(傷病手当金)
船員保険法
第六十九条
4 疾病任意継続被保険者又は疾病任意継続被保険者であった者に係る第一項の規定による傷病手当金の支給は、当該被保険者の資格を取得した日から起算して一年以上経過したときに発した疾病若しくは負傷又はこれにより発した疾病については、行わない
本肢は、「船員保険法の傷病手当金」に関する問題です。
健康保険と同様に、船員保険法にも「任意継続被保険者」という仕組みがあります。
資格喪失事由に該当したあとでも、自身が希望して(任意に)被保険者資格を継続させることができる仕組みが船員保険法にもあります。
ただし、通常の被保険者とは異なるルールが適用され、本肢のテーマである「傷病手当金」もそれに当たります。
上記根拠条文のとおり、「資格取得日から1年以上経過後の傷病に対しては傷病手当金は支給しない」となっています。
これをもとに問題文を読んでみると
・令和3年10月5日…資格取得
・令和4年4月11日…傷病
となっており、資格取得日から「1年以内」の傷病であることがわかります。
したがって、傷病手当金は支給されます。
本肢は×となり、本問の正解となります。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和4年第10問 E
介護保険法における特定施設は、有料老人ホームその他厚生労働省令で定める施設であって、地域密着型特定施設ではないものをいい、介護保険の被保険者が自身の居宅からこれら特定施設に入居することとなり、当該特定施設の所在する場所に住民票を移した場合は、住所地特例により、当該特定施設に入居する前に住所を有していた自身の居宅が所在する市町村(特別区を含む。)が引き続き保険者となる。
介護保険法第8条第1項第11号、第13条第1項
根拠条文を確認します。
第八条
11 この法律において「特定施設」とは、有料老人ホームその他厚生労働省令で定める施設であって、第二十一項に規定する地域密着型特定施設でないものをいい、「特定施設入居者生活介護」とは、特定施設に入居している要介護者について、当該特定施設が提供するサービスの内容、これを担当する者その他厚生労働省令で定める事項を定めた計画に基づき行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって厚生労働省令で定めるもの、機能訓練及び療養上の世話をいう。(住所地特例対象施設に入所又は入居中の被保険者の特例)
介護保険法
第十三条 次に掲げる施設(以下「住所地特例対象施設」という。)に入所又は入居(以下「入所等」という。)をすることにより当該住所地特例対象施設の所在する場所に住所を変更したと認められる被保険者(第三号に掲げる施設に入所することにより当該施設の所在する場所に住所を変更したと認められる被保険者にあっては、老人福祉法第十一条第一項第一号の規定による入所措置がとられた者に限る。以下この項及び次項において「住所地特例対象被保険者」という。)であって、当該住所地特例対象施設に入所等をした際他の市町村(当該住所地特例対象施設が所在する市町村以外の市町村をいう。)の区域内に住所を有していたと認められるものは、第九条の規定にかかわらず、当該他の市町村が行う介護保険の被保険者とする。ただし、二以上の住所地特例対象施設に継続して入所等をしている住所地特例対象被保険者であって、現に入所等をしている住所地特例対象施設(以下この項及び次項において「現入所施設」という。)に入所等をする直前に入所等をしていた住所地特例対象施設(以下この項において「直前入所施設」という。)及び現入所施設のそれぞれに入所等をすることにより直前入所施設及び現入所施設のそれぞれの所在する場所に順次住所を変更したと認められるもの(次項において「特定継続入所被保険者」という。)については、この限りでない。
一 介護保険施設
二 特定施設
三 老人福祉法第二十条の四に規定する養護老人ホーム
本肢は「住所地特例対象施設に入所又は入居中の被保険者の特例」に関する問題です。
問題文の前段は「特定施設」という言葉の定義に関してですが、上記根拠条文(第8条)のとおり、正しい内容です。
後段については、その特定施設に入居した際に市町村をまたいだ場合、どの市町村が保険者となるか、がポイントです。
入所した特定施設の市町村が保険者となると、そのような施設をたくさん抱える市町村の負担が大きくなってしまいます。
したがって、施設入所の際に市町村が変わったとしても、保険者は元の自分の住所の市町村が引き続き保険者となることが必要なわけですね。
本肢は○です。