社会保険労務士試験【雇用保険法/徴収法】<令和4年第8問>

スポンサーリンク

労働保険の保険料の徴収等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

雇用保険法/徴収法 令和4年第8問 A

労働保険徴収法第39条第1項に規定する事業以外の事業(いわゆる一元適用事業)であっても、雇用保険法の適用を受けない者を使用するものについては、二元適用事業に準じ、当該事業を労災保険に係る保険関係及び雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなして一般保険料の額を算定するが、一般保険料の納付(還付、充当、督促及び滞納処分を含む。)については、一元適用事業と全く同様である。

解答の根拠

法第39条第1項 / 整備省令第17条第1項

根拠条文を確認します。

(適用の特例)
第三十九条 都道府県及び市町村の行う事業その他厚生労働省令で定める事業については、当該事業を労災保険に係る保険関係及び雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなしてこの法律を適用する。

労働保険の保険料の徴収等に関する法律

(一般保険料の額の算定等に関する特例)
第十七条 徴収法第三十九条第一項に規定する事業以外の事業であつて、雇用保険法の適用を受けない者を使用するものについては、当該事業を労災保険に係る保険関係及び雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなして一般保険料の額を算定するものとする。

失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う労働省令の整備等に関する省令

本肢は、「一般保険料の額の算定等に関する特例」に関する問題です。

まず、問題文の前半部分について検討します。

上記根拠条文の2つめ、通称整備省令の規定にあるとおり、「徴収法第39条第1項に規定する事業以外の事業であって、雇用保険法の適用を受けない者を使用するものについては、当該事業を労災保険に係る保険関係及び雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなして一般保険料の額を算定するものとする」とされてます。

通常は労災保険と雇用保険はセットで適用されるので、一般保険料の算定もセットで行いますが、上記のように「雇用保険法の適用を受けない者」が存在する場合は、セットで算定ができないので、別個に算定する…ということになります。

ただし、根拠条文にあるとおり「算定」だけを別個に行うだけであり、問題文の後半にある「一般保険料の納付」については、別に分ける必要はありませんので、一元適用事業と同じように対応します。

本肢は○となり、本問の正解となります。

雇用保険法/徴収法 令和4年第8問 B

労働者派遣事業により派遣される者は派遣元事業主の適用事業の「労働者」とされるが、在籍出向による出向者は、出向先事業における出向者の労働の実態及び出向元による賃金支払の有無にかかわらず、出向元の適用事業の「労働者」とされ、出向元は、出向者に支払われた賃金の総額を出向元の賃金総額の算定に含めて保険料を納付する。

解答の根拠

昭和35年11月2日基発932号 / 昭和61年6月30日基発383号

根拠通達を確認します。

第二 労働者派遣事業に対する労働保険の適用について
一 総論的事項
労働者派遣事業に対する労働保険の適用については、労働者災害補償保険・雇用保険双方とも派遣元事業主の事業が適用事業とされる。

労働者派遣事業に対する労働保険の適用及び派遣労働者に係る労働者災害補償保険の給付に関する留意事項等について(昭和61年6月30日基発383号)

一 出向労働者に係る保険関係について
出向労働者に係る保険関係が、出向元事業と出向先事業とのいずれにあるかは、出向の目的及び出向元事業主と出向先事業主とが当該出向労働者の出向につき行なつた契約ならびに出向先事業における出向労働者の労働の実態等に基づき、当該労働者の労働関係の所在を判断して、決定すること。

出向労働者に対する労働者災害補償保険法の適用について(昭和35年11月2日基発932号)

本肢は、「派遣労働者・出向者の賃金総額の算定」に関する問題です。

派遣労働者や出向者など、通常の社員とは異なる形態で働く方たちの賃金総額計算方法について問われています。

まず、前半は派遣労働者に関する記述です。

上記根拠通達のとおり、「労働者派遣事業に対する労働保険の適用については、労働者災害補償保険・雇用保険双方とも派遣元事業主の事業が適用事業とされる」とされています。

つまり、派遣労働者については派遣先ではなく、派遣元を適用事業として賃金総額計算等、諸手続きを行うことになります。

次に、後半は出向者に関する記述です。

上記根拠通達のとおり、「出向労働者に係る保険関係が、出向元事業と出向先事業とのいずれにあるかは、出向の目的及び出向元事業主と出向先事業主とが当該出向労働者の出向につき行なった契約ならびに出向先事業における出向労働者の労働の実態等に基づき、当該労働者の労働関係の所在を判断して、決定すること」とされています。

問題文にある「出向先事業における出向者の労働の実態及び出向元による賃金支払の有無」に基づいて、出向元か出向先、どちらで取り扱うかを決める…となっていますので、「有無にかかわらず」としているのは誤りになります。

本肢は×です。

雇用保険法/徴収法 令和4年第8問 C

A及びBの2つの適用事業主に雇用される者XがAとの間で主たる賃金を受ける雇用関係にあるときは、XはAとの雇用関係においてのみ労働保険の被保険者資格が認められることになり、労働保険料の算定は、AにおいてXに支払われる賃金のみをAの賃金総額に含めて行い、BにおいてXに支払われる賃金はBの労働保険料の算定における賃金総額に含めない。

解答の根拠

雇用保険に関する業務取扱要領 20352

根拠要領を確認します。

20352(2)労働者の特性・状況を考慮して判断する場合
イ 2 以上の事業主の適用事業に雇用される者
(イ) 2 以上の事業主の適用事業に雇用される者の被保険者資格
a 同時に 2 以上の雇用関係にある労働者については、当該 2 以上の雇用関係のうち一の雇用
関係(原則として、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係とする)に
ついてのみ被保険者となる。

雇用保険に関する業務取扱要領

本肢は、「 2 以上の事業主の適用事業に雇用される者」に関する問題です。

最近は副業を許容する企業も増えてきたので、本肢のようなケースが多く見られるようになっていると思います。

まず、被保険者の取り扱いについて、メインの就労先であるA社のほかに、副業先であるB社でも就労している場合、どのように取り扱うのでしょうか。

この点について、上記根拠要領では、メイン(その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係)のA社についてのみ被保険者となる、とされています。

B社とダブルで被保険者となるわけではないので、注意が必要です。

次に、当該労働者の「賃金総額」については、2社就労している場合にどのように取り扱うのでしょうか。

この点については、①労災保険と②雇用保険で取り扱いが分かれます。

①労災保険については、メイン・副業先に関わらず、労働災害発生の可能性がありますので、両方とも適用されますので、メイン・副業先の賃金を合算することが必要です。

一方、②雇用保険については、上記の通りメインのA社のみ被保険者となることから、A社の賃金のみをベースに保険料を算出することになります。

本肢は×です。

雇用保険法/徴収法 令和4年第8問 D

適用事業に雇用される労働者が事業主の命により日本国の領域外にある適用事業主の支店、出張所等に転勤した場合において当該労働者に支払われる賃金は、労働保険料の算定における賃金総額に含めない。

解答の根拠

雇用保険に関する業務取扱要領 20352

根拠通達を確認します。

20352(2)労働者の特性・状況を考慮して判断する場合
ニ 国外で就労する者
(イ) 適用事業に雇用される労働者が事業主の命により日本国の領域外において就労する場合の被
保険者資格は、次のとおりである。
a その者が日本国の領域外に出張して就労する場合は、被保険者となる。
その者が日本国の領域外にある適用事業主の支店、出張所等に転勤した場合には、被保険者
となる。
現地で採用される者は、国籍のいかんにかかわらず被保険者とならない。
c その者が日本国の領域外にある他の事業主の事業に出向し、雇用された場合でも、国内の出
向元事業主との雇用関係が継続している限り被保険者となる。なお、雇用関係が継続してい
るかどうかは、その契約内容による。

雇用保険に関する業務取扱要領

本肢は、「国外で就労する者」に関する問題です。

日本国外で就労している場合、雇用保険の適用はどうなるのでしょうか。

この点について、上記根拠通達では「日本国の領域外にある適用事業主の支店、出張所等に転勤した場合には、被保険者となる」と記載があります。

となると、問題文のケースでは、「雇用保険にかかる労働保険料の算定における賃金総額に含める」必要があります。

本肢は×です。

雇用保険法/徴収法 令和4年第8問 E

労働日の全部又はその大部分について事業所への出勤を免除され、かつ、自己の住所又は居所において勤務することを常とする者は、原則として労働保険の被保険者にならないので、当該労働者に支払われる賃金は、労働保険料の算定における賃金総額に含めない。

解答の根拠

雇用保険に関する業務取扱要領 20351

根拠通達を確認します。

20351(1)労働者性の判断を要する場合
ル 在宅勤務者
在宅勤務者(労働日の全部又はその大部分について事業所への出勤を免除され、かつ、自己の
住所又は居所において勤務することを常とする者をいう。)については、事業所勤務労働者との同一性が確認できれば原則として被保険者となりうる

雇用保険に関する業務取扱要領

本肢は「在宅勤務者」に関する問題です。

在宅勤務も、先ほどの副業のように、最近の働き方のトレンドとなっていますね。

まず、「在宅勤務者は雇用保険の被保険者となるかどうか」について。

この点について、上記根拠通達では「在宅勤務者(労働日の全部又はその大部分について事業所への出勤を免除され、かつ、自己の住所又は居所において勤務することを常とする者をいう。)については、事業所勤務労働者との同一性が確認できれば原則として被保険者となりうる」と記載があります。

在宅勤務者でも雇用保険の被保険者となります。

では、問題文後半にある「在宅勤務者に支払われる賃金を労働保険料の算定における賃金総額にふくめるか否か」についてはどうでしょうか。

もちろん、被保険者となるのであれば、賃金総額に含めることが必要となります。

本肢は×です。

タイトルとURLをコピーしました