労災保険のいわゆるメリット制に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
労働者災害補償保険法/徴収法 令和4年第9問 A
継続事業の一括(一括されている継続事業の一括を含む。)を行った場合には、労働保険徴収法第12条第3項に規定する労災保険のいわゆるメリット制に関して、労災保険に係る保険関係の成立期間は、一括の認可の時期に関係なく、当該指定事業の労災保険に係る保険関係成立の日から起算し、当該指定事業以外の事業に係る一括前の保険料及び一括前の災害に係る給付は当該指定事業のいわゆるメリット収支率の算定基礎に算入しない。
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本肢は、「継続事業の一括のメリット制」に関する問題です。
継続事業の一括を行った場合、メリット制の適用はどのようになるのでしょうか。
一括されるそれぞれの継続事業の保険関係は、それぞれの保険関係成立日からスタートしていますので、もちろん一括前にそれぞれの継続事業において災害が起きる場合もあるでしょう。
その後、一括されたあとに、その一括前の災害がメリット制に影響するのでしょうか。
結論としては「影響しない」となります。
理由としては、一括することで一括前の「個性が消える(保険関係が消滅する)」からです。
その「消える個性」の中に、一括前の災害も含まれている…と思ってください。
そうすると、一括後のメリット制には影響しないことがわかりますよね。
本肢は○となり、本問の正解となります。
労働者災害補償保険法/徴収法 令和4年第9問 B
有期事業の一括の適用を受けている建築物の解体の事業であって、その事業の当該保険年度の確定保険料の額が40万円未満のとき、その事業の請負金額(消費税等相当額を除く。)が1億1,000万円以上であれば、労災保険のいわゆるメリット制の適用対象となる場合がある。
法第12条第3項 / 則第17条第3項
根拠条文を確認します。
(法第十二条第三項の規定の適用を受ける事業)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則
第十七条
3 法第十二条第三項第三号の厚生労働省令で定める規模は、建設の事業及び立木の伐採の事業について当該保険年度の確定保険料の額が四十万円以上であることとする。
本肢は、「有期事業の一括のメリット制」に関する問題です。
メリット制に関する一括有期事業の条件は、上記根拠条文のとおり「建設の事業及び立木の伐採の事業について当該保険年度の確定保険料の額が四十万円以上であること」とされています。
ここで混同しやすいのが、「そもそもの一括有期事業の要件」
●有期事業の一括の要件
(1) 事業主が同一人であること。
(2) それぞれの事業が建設の事業または立木の伐採の事業であること。
(3) それぞれの事業の規模の概算保険料額が160万円未満であって、かつ、建設の事業においては、請負金額(税抜)が1億8,000万円未満、立木の伐採の事業においては、素材の見込生産量が1,000立方メートル未満であること。
上記のとおり、
・「概算保険料」と「確定保険料」
・建設業では「請負金額」/立木の伐採の事業では「素材の見込生産量」の条件の有無
に違いがあります。
メリット制の要件には、問題文にあるような「請負金額」の要件はありません。
本肢は×です。
労働者災害補償保険法/徴収法 令和4年第9問 C
有期事業の一括の適用を受けていない立木の伐採の有期事業であって、その事業の素材の見込生産量が1,000立方メートル以上のとき、労災保険のいわゆるメリット制の適用対象となるものとされている。
則第35条第1項
根拠条文を確認します。
(確定保険料の特例)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則
第三十五条 法第二十条第一項の厚生労働省令で定める事業は、建設の事業又は立木の伐採の事業であつて、その規模が次の各号のいずれかに該当するものとする。
一 確定保険料の額が四十万円以上であること。
二 建設の事業にあつては請負金額が一億一千万円以上、立木の伐採の事業にあつては素材の生産量が千立方メートル以上であること。
本肢は、「有期事業のメリット制の要件」に関する問題です。
本肢は、基本事項直球の確認問題なので、落とさないようにしましょう。
上記根拠条文のとおり、有期事業のメリット制の要件は
1. 確定保険料の額が40万円以上であること。
2. 建設の事業にあっては請負金額が1億1000万円以上、立木の伐採の事業にあっては素材の生産量が1,000立方メートル以上であること。
とされています。
間違い探しのような問題ですが、「素材の見込生産量」ではなく「素材の生産量」となります。
「これから事業を始めるぞ!」という段階の話の「一括の要件」は、「これから」の話なので「見込」となりますが、「メリット制」は「事業終わって労災事故ありませんでした!だから優遇して!」という結果の話なので、「見込」ではなく「生産量」の結果そのものが基準となるわけですね。
本肢は×です。
労働者災害補償保険法/徴収法 令和4年第9問 D
労働保険徴収法第20条に規定する確定保険料の特例の適用により、確定保険料の額が引き下げられた場合、その引き下げられた額と当該確定保険料の額との差額について事業主から所定の期限内に還付の請求があった場合においても、当該事業主から徴収すべき未納の労働保険料その他の徴収金(石綿による健康被害の救済に関する法律第35条第1項の規定により徴収する一般拠出金を含む。)があるときには、所轄都道府県労働局歳入徴収官は当該差額をこの未納の労働保険料等に充当するものとされている。
則第37条第1項
根拠条文を確認します。
(労働保険料の充当)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則
第三十七条 前条第二項の請求がない場合には、所轄都道府県労働局歳入徴収官は、前条第一項の超過額又は法第二十条第三項の差額を次の保険年度の概算保険料若しくは未納の労働保険料その他法の規定による徴収金又は未納の一般拠出金(石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号)第三十五条第一項の規定により労災保険適用事業主(同項の労災保険適用事業主をいう。)から徴収する一般拠出金をいう。以下同じ。)その他同法第三十八条第一項の規定により準用する法の規定による徴収金に充当するものとする。
本肢は、「労働保険料の充当」に関する問題です。
メリット制によって確定保険料の額が安くなり、還付金が発生したときに、当該事業主に未納の労働保険料がある場合は、
A:還付金が未納の労働保険料に充当される
B:未納の労働保険料があっても、請求があればいったんは還付する
のどのようになるのでしょうか。
結論としては、「B:未納の労働保険料があっても、請求があればいったんは還付する」になります。
労働保険料の未納があっても、勝手に充当はされずに、請求があればまずは還付する…というわけですね。
本肢は×です。
労働者災害補償保険法/徴収法 令和4年第9問 E
労働保険徴収法第20条第1項に規定する確定保険料の特例は、第一種特別加入保険料に係る確定保険料の額及び第二種特別加入保険料に係る確定保険料の額について準用するものとされている。
法第20条第2項
根拠条文を確認します。
(確定保険料の特例)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
第二十条
2 前項の規定は、第一種特別加入保険料に係る確定保険料の額について準用する。この場合において、同項各号列記以外の部分中「第十一条第一項」とあるのは「第十三条」と、「非業務災害率」とあるのは「特別加入非業務災害率」と読み替えるものとする。
本肢は「メリット制の準用」に関する問題です。
上記根拠条文のとおり、確定保険料の特例は「第一種特別加入保険料に係る確定保険料の額」について準用されます。
問題文にある「第二種特別加入保険料」は準用の対象外です。
ちなみに、「特別加入」について復習をしておきましょう。
●特別加入
・第一種…中小企業主等
・第二種…一人親方その他の自営業者・特定作業従事者
・第三種…海外派遣者
本肢は×です。