社会保険労務士試験【労働者災害補償保険法/徴収法】<令和4年第8問>

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労働保険の保険料の徴収等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和4年第8問 A

労災保険の適用事業場のすべての事業主は、労働保険の確定保険料の申告に併せて一般拠出金(石綿による健康被害の救済に関する法律第35条第1項の規定により徴収する一般拠出金をいう。以下同じ。)を申告・納付することとなっており、一般拠出金の額の算定に当たって用いる料率は、労災保険のいわゆるメリット制の対象事業場であってもメリット料率(割増・割引)の適用はない。

解答の根拠

石綿による健康被害の救済に関する法律第35条

根拠条文を確認します。

三十五条 厚生労働大臣は、救済給付の支給に要する費用に充てるため、労災保険の保険関係が成立している事業の事業主(徴収法第八条第一項又は第二項の規定により元請負人が事業主とされる場合にあっては、当該元請負人。以下「労災保険適用事業主」という。)から、毎年度、一般拠出金を徴収する。
 労災保険適用事業主は、一般拠出金を納付する義務を負う。

石綿による健康被害の救済に関する法律第35条

本肢は、「一般拠出金のメリット料率適用有無」に関する問題です。

まず、本問の前段ですが、上記根拠条文のとおり「労災適用事業主すべてから、石綿による健康被害救済給付の支給費用に充てるために、一般拠出金を納付する義務を負う」とされています。

そのため、前段の記載は正しいです。

次に、本問の後段について。

一般拠出金については、いわゆる「メリット制」の適用はありませんので、後段も正しい、となります。

これは大切な知識として、ぜひおさえておきましょう。

本肢は○です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和4年第8問 B

概算保険料を納付した事業主が、所定の納期限までに確定保険料申告書を提出しなかったとき、所轄都道府県労働局歳入徴収官は当該事業主が申告すべき正しい確定保険料の額を決定し、これを事業主に通知することとされているが、既に納付した概算保険料の額が所轄都道府県労働局歳入徴収官によって決定された確定保険料の額を超えるとき、当該事業主はその通知を受けた日の翌日から起算して10日以内に労働保険料還付請求書を提出することによって、その超える額の還付を請求することができる。

解答の根拠

法第19条第4項 / 則第36条

根拠条文を確認します。

(確定保険料)
第十九条
 政府は、事業主が第一項又は第二項の申告書を提出しないとき、又はその申告書の記載に誤りがあると認めるときは、労働保険料の額を決定し、これを事業主に通知する

労働保険の保険料の徴収等に関する法律

(労働保険料の還付)
第三十六条 事業主が、法第十九条第一項及び第二項の申告書(第三十八条において「確定保険料申告書」という。)を提出する際に、又は法第十九条第四項の規定による通知を受けた日の翌日から起算して十日以内に、それぞれ、既に納付した概算保険料の額のうち、確定保険料の額を超える額(以下「超過額」という。)の還付を請求したときは、官署支出官又は事業場の所在地を管轄する都道府県労働局労働保険特別会計資金前渡官吏(以下「所轄都道府県労働局資金前渡官吏」という。)は、その超過額を還付するものとする。(以下略)

労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則

本肢は、「確定保険料」に関する問題です。

上記根拠条文、法第19条の規定にあるとおり、「事業主が確定保険料申告書を提出しないとき、又はその申告書の記載に誤りがあると認めるときは、所轄都道府県労働局歳入徴収官は、労働保険料の額を決定し、これを事業主に通知する」こととなります。

基本的には自己申告制なのですが、歳入徴収官のチェックで誤りがあった場合や、そもそもその自己申告をしない場合は、「あなたの確定保険料はこれこれですよ」と決定して通知するわけですね。

では、その歳入徴官により決定・通知された確定保険料でも、還付請求はできるのでしょうか

結論としては、上記根拠条文の則第36条の規定のとおり、「できる」となります。

本肢は○です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和4年第8問 C

二以上の有期事業が一括されて一の事業として労働保険徴収法の規定が適用される事業の事業主は、確定保険料申告書を提出する際に、前年度中又は保険関係が消滅した日までに終了又は廃止したそれぞれの事業の明細を記した一括有期事業報告書を所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出しなければならない。

解答の根拠

法第19条第1項 / 則第34条

根拠条文を確認します。

(確定保険料)
第十九条 事業主は、保険年度ごとに、次に掲げる労働保険料の額その他厚生労働省令で定める事項を記載した申告書を、次の保険年度の六月一日から四十日以内(保険年度の中途に保険関係が消滅したものについては、当該保険関係が消滅した日(保険年度の中途に労災保険法第三十四条第一項の承認が取り消された事業に係る第一種特別加入保険料及び保険年度の中途に労災保険法第三十六条第一項の承認が取り消された事業に係る第三種特別加入保険料に関しては、それぞれ当該承認が取り消された日。第三項において同じ。)から五十日以内)に提出しなければならない。

労働保険の保険料の徴収等に関する法律

(一括有期事業についての報告)
第三十四条 法第七条の規定により一の事業とみなされる事業についての事業主は、次の保険年度の六月一日から起算して四十日以内又は保険関係が消滅した日から起算して五十日以内に、次に掲げる事項を記載した報告書を所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出しなければならない。
(以下略)

労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則

本肢は、「一括有期事業報告書」に関する問題です。

確定保険料申告書と、一括有期事業報告書の提出期限は…
・次の保険年度の6/1から起算して40日以内
・保険関係消滅日から起算して50日以内

とされており、提出期限が同じです。

したがって、実務上は、両書類は一緒に提出することとなります。

本肢は○です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和4年第8問 D

事業主が所定の納期限までに確定保険料申告書を提出したが、当該事業主が法令の改正を知らなかったことによりその申告書の記載に誤りが生じていると認められるとき、所轄都道府県労働局歳入徴収官が正しい確定保険料の額を決定し、その不足額が1,000円以上である場合には、労働保険徴収法第21条に規定する追徴金が徴収される。

解答の根拠

法第19条第4項 / 法第21条

根拠条文を確認します。

(確定保険料)
第十九条
 政府は、事業主が第一項又は第二項の申告書を提出しないとき、又はその申告書の記載に誤りがあると認めるときは、労働保険料の額を決定し、これを事業主に通知する。

(追徴金)
第二十一条 政府は、事業主が第十九条第五項の規定による労働保険料又はその不足額を納付しなければならない場合には、その納付すべき額(その額に千円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。)に百分の十を乗じて得た額の追徴金を徴収する。ただし、事業主が天災その他やむを得ない理由により、同項の規定による労働保険料又はその不足額を納付しなければならなくなつた場合は、この限りでない。

労働保険の保険料の徴収等に関する法律

本肢は、「追徴金」に関する問題です。

肢Bでも触れたように、確定保険料申告の内容に誤りがある場合は、歳入徴収官が正しい内容を決定・通知します。

この場合、上記根拠条文のとおり追徴金が課せられますが、かっこ書きにあるとおり、1000円未満の端数は切り捨て(=追徴金自体が1000円未満であれば追徴金自体が発生しない)となります。

ということは、問題文にある通り「その不足額が1,000円以上である場合には、労働保険徴収法第21条に規定する追徴金が徴収される」となるわけですね。

本肢は○です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和4年第8問 E

労働保険料の納付を口座振替により金融機関に委託して行っている社会保険適用事業所(厚生年金保険又は健康保険法による健康保険の適用事業所)の事業主は、労働保険徴収法第19条第3項の規定により納付すべき労働保険料がある場合、有期事業以外の事業についての一般保険料に係る確定保険料申告書を提出するとき、年金事務所を経由して所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出することができる。

解答の根拠

則第38条第2項

根拠条文を確認します。

(労働保険料等の申告及び納付)
第三十八条
法第十五条第一項及び第二項の申告書(次項において「概算保険料申告書」という。)、法第十六条の申告書(次項において「増加概算保険料申告書」という。)並びに確定保険料申告書は、所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出しなければならない。
 前項の規定による申告書の提出は、次の区分に従い、日本銀行(本店、支店、代理店及び歳入代理店をいう。以下同じ。)、年金事務所(日本年金機構法(平成十九年法律第百九号)第二十九条の年金事務所をいう。以下同じ。)、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長を経由して行うことができる。
 概算保険料申告書(法第二十一条の二第一項の承認を受けて労働保険料の納付を金融機関に委託して行う場合に提出するものを除く。次号、第五号及び第六号において同じ。)及び法第十九条第三項の規定により納付すべき労働保険料がある場合における確定保険料申告書法第二十一条の二第一項の承認を受けて労働保険料の納付を金融機関に委託して行う場合に提出するものを除く。次号、第五号及び第六号において同じ。)であつて、有期事業以外の事業(労働保険事務組合に労働保険事務の処理が委託されているものを除く。次号、第四号及び第七十八条第二項において同じ。)についての第一条第三項第一号の一般保険料に係るもの(厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)による厚生年金保険又は健康保険法(大正十一年法律第七十号)による健康保険の適用事業所(以下「社会保険適用事業所」という。)の事業主が法第十五条第一項又は法第十九条第一項の規定により六月一日から四十日以内に提出するものに限る。) 日本銀行、年金事務所又は所轄労働基準監督署長

労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則

本肢は「確定保険料申告書の提出先」に関する問題です。

まず、原則としては、上記根拠条文第38条第1項にあるとおり「確定保険料申告書は、所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出しなければならない」とされています。

そして、続く2項で例外的に「日本銀行・年金事務所・所轄労基署長・所轄職安長」を経由して提出できる、とされています。

条件により、例外のうちどのルートを選択できるかが決まります。

本肢のケースである「労働保険徴収法第19条第3項の規定により納付すべき労働保険料がある場合」については、上記根拠条文第38条第2項第2号に規定があり、その場合は「日本銀行・年金事務所・所轄労基署長」を経由できるとされています。

しかし、その規定に続く括弧書きにおいて「法第21条の2第1項の承認を受けて労働保険料の納付を金融機関に委託して行う場合に提出するものを除く」と規定されています。

この「法第21条の2第1項」というのは「口座振替による納付」の定めになりますので、本肢の冒頭にある「労働保険料の納付を口座振替により金融機関に委託して行っている社会保険適用事業所の事業主」は、年金事務所を経由して提出することはできません。

本肢は×となり、本問の正解となります。

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