社会保険労務士試験【労働者災害補償保険法/徴収法】<令和3年第1問>

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業務災害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第1問 A

業務上左脛骨横骨折をした労働者が、直ちに入院して加療を受け退院した後に、医師の指示により通院加療を続けていたところ、通院の帰途雪の中ギプスなしで歩行中に道路上で転倒して、ゆ合不完全の状態であった左脛骨を同一の骨折線で再骨折した場合、業務災害と認められる。

解答の根拠

法7条1項 / S34.5.11.基収2212号

まず初めに、こちらの第1問の5つの共通の根拠条文である、法7条1項を確認しておきましょう。

第七条 この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付

労働者災害補償保険法

いわゆる「業務災害」について規定されている条文ですが、この条文だけでは各肢の正誤を判断することはできず、個別の事情を確認して業務災害に該当するかどうかの判断をする必要があります。

各肢にはそれぞれ根拠通達も記載しており、それらの通達の中に事例の状況が業務災害かどうかが書かれているのですが、もちろんすべての通達を確認している受験生はほぼいないでしょう。

過去問や練習問題、予備校の模試などで勉強した通達内容が出題されたらラッキーです。

ということで、通達を知らずにこの問題を解く必要がある方がほとんどだと思いますので、どのような観点で正誤を判断すべきか、だらだら解説していきたいと思います。

まず本肢の事例は、「業務上脛骨(すねの骨です)を骨折→治って退院したあとに、医師の指示で(退院後の状態チェックのためでしょうか)通院していた途中に、雪道で転倒して同じ個所をまた骨折した」という、なんとも不幸な状況です。

さて、この事例に初めて触れたときは、「ん?通院途中だから業務上じゃないし、なんなら通勤でもないから、労災の対象外じゃないか?」と思う方が多いと思います。

ただここで注意すべきは「ゆ合不完全の状態であった」という一文。

この一文に着目すると、「退院はしたが、まだ完全には治っていない → 最初の業務災害の状態がまだ続いている二度目の骨折に一度目の骨折との因果関係がある完全に治っていない状態で雪道を歩いた転倒した、と因果があると考えると、「業務災害として認められる」という結論になります。

本肢は○です。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第1問 B

業務上右大腿骨を骨折し入院手術を受け退院して通院加療を続けていた労働者が、会社施設の浴場に行く途中、弟の社宅に立ち寄り雑談した後に、浴場へ向かうため同社宅の玄関から土間に降りようとして転倒し、前回の骨折部のやや上部を骨折したが、既に手術後は右下肢の短縮と右膝関節の硬直を残していたため、通常の者より転倒しやすく、また骨が幾分細くなっていたため骨折しやすい状態だった場合、業務災害と認められる。

解答の根拠

法7条1項 / S27.6.5.基災収1241号

本肢も、人つ前のAの肢となんとなく状況が似ています。

ここで、「あ、この問題全体は、業務災害にあった人が再びケガをした際に、認められるケースと認められないケースを区別させようとしているのだな」と気づく方も多いと思います。

実際に、このあとのC~Eの肢も、同じテーマが続いています。

さて、今回の事例ですが、個人的にはこの肢単独で「×」と判断するのは難しく、消去法で残して…となるのではないかと思っています。

根拠となっている通達には、「転倒と当初の骨折には因果関係が認められないため」とあるのですが、「手術後に右下肢の短縮と右膝関節の硬直を残していたため通常の者よりも転倒しやすく…」と書いてあると、因果関係があるのでは?と思ってしまう方も多いと思います。

しかし、他の肢が○と判断しやすいので、残った肢Bが×となんとか判断できるかな…というところでしょうか。

本肢は×となり、本問の正解となります。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第1問 C

業務上右腓骨を不完全骨折し、病院で手当を受け、帰宅して用便のため松葉杖を使用して土間を隔てた便所へ行き、用便後便所から土間へ降りる際に松葉杖が滑って転倒し当初の骨折を完全骨折した場合、業務災害と認められる。

解答の根拠

法7条1項 / S34.10.13.基収5040号

さて、2つの肢を解いて、なんとなく「業務災害だから、通常の業務災害と同様に『因果関係』が大事なんだな」と思えてきたらGood!です。

本肢の事例は、「骨折のため松葉杖を使用していた→松葉杖が滑って転倒した」というのは、誰にでも起こりうるオーソドックスな(と言ったら怒られそうですが)転倒のシーンだと思います。

したがって、今回は前後の事象に因果関係が認められるとし、業務災害となります。

余談ですが、不完全骨折よりも完全に骨折した方が治りが早いと、子どものころから信じていますが、本当にそうなんでしょうか…。

幸いにも今までの人生で一度も骨折をしたことがないので…。

本肢は○となります。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第1問 D

業務上脊髄を損傷し入院加療中の労働者が、医師の指示に基づき療養の一環としての手動式自転車に乗車する機能回復訓練中に、第三者の運転する軽四輪貨物自動車に自転車を引っかけられ転倒し負傷した場合、業務災害と認められる。

解答の根拠

法7条1項 / S42.1.24.41基収7808号

この調子でどんどん判断していきましょう。

本肢は「業務上脊髄損傷で加療中→医師の指示で手動式自転車でリハビリ中に車にひかれて転倒負傷」とありますので、因果関係は認められそうです。脊髄損傷していなければリハビリはせず、リハビリしなければ車にもひかれなかったので。

ちなみに、本肢に出てくる「手動式自転車」ですが、ネットで調べてもヒットしませんでした。(手動式自”動”車は出てきましたが)

自動車にひかれてしまうということは、公道を走れるものか…。

本肢は○となります。

労働者災害補償保険法/徴収法 令和3年第1問 E

業務上右大腿骨を骨折し入院治療を続けて骨折部のゆ合がほぼ完全となりマッサージのみを受けていた労働者が、見舞いに来た友人のモーターバイクに乗って運転中に車体と共に転倒し、右大腿部を再度骨折した場合、業務災害と認められない。

解答の根拠

法7条1項 / S32.12.25.基収6636号

こちらの肢のケースですが、病院から帰る肢Aのケースと比較してみると

・肢A:完全に治癒していない ⇔ 肢E:ほぼ完全(ほぼって…という感じですが)
・肢A:雪の中歩いて帰る際に転倒 ⇔ 肢E:友人のモーターバイクで帰る際に転倒

と、「因果関係」を考えた際に弱い感じがしますね。

通達では「事業主の支配下にない労働者の私的行為に基づくもの」となっており、結論としては「業務災害と認められない」となります。

本肢は○となります。

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